温浴施設の現場では、外から見えない場所で「貯湯槽」「逆洗」「吐き出し口」「換水」といった言葉が毎日飛び交っています。設備の図面にも、保健所の検査にも、日報にも出てくる言葉です。でも、それを一般向けに正しく説明したページは驚くほど少ないです。
このページは、温浴施設で実際に使われている用語を、現場スタッフの立場から一つずつまとめた辞典です。施設で働きはじめた方、設備に関わる方、そして「温泉のあの装置は何なのか」が気になった方に向けて、読み方・意味・現場での扱われ方を短くまとめています。各用語からは、より詳しく解説した記事へ移動できます。
設備・機器
お湯をつくり、めぐらせ、きれいに保つための装置類。図面や点検表に最もよく出てくる言葉です。
結露けつろ
空気中の水蒸気が冷たい面に触れて液体に戻る現象。浴室では天井から落ちる水滴として現れる。
空気が抱えられる水蒸気の量には温度で決まる上限があり、冷たい面に触れて温度が下がると抱えきれない分が水になる。浴室は湯面から常に水分が供給されて限界近い状態なので、外気で冷えた天井面が結露の場になる。衛生等管理要領では浴室の天井に適当な勾配を設けるなどして水滴が落下しないようにすることが求められており、換気と湯気抜きもあわせて規定されている。結露水そのものは不純物が少ないが、天井面のカビやサビを連れて落ちるため天井の清掃と塗装が管理対象になる。
湯気抜きゆけぬき
浴室にこもった湯気を外へ逃がすための開口部や設備。
天井付近や高所に設けられ、換気扇とあわせて浴室の湿気を排出する。衛生等管理要領では浴室に湯気抜き・換気扇等を設けること、そして湯気抜きを常に適切に行うことが定められている。排気だけを強くしても空気が入る道がなければ換気は進まないため、給気とのバランスが重要。湯気がこもると天井の結露が増え、視界不良と床の滑りにもつながる。
仕切弁しきりべん/ゲートバルブ
板状の弁体を上下にスライドさせて流路を開け閉めするバルブ。
全開にすると弁体が流路から完全に抜けるため圧力損失が小さく、水量をしっかり流したい主配管に向く。ただし中間の開き具合で使うと流れで弁体が振動し、弁体や弁座を傷めるため、流量を絞る目的には使わず全開か全閉で使うのが原則。ハンドルの見た目では開度が分からないので、タグや系統図での表示が重要になる。
玉形弁たまがたべん/グローブバルブ
胴体が球状で、弁体が流路に対して垂直に上下するバルブ。
流れをS字に曲げながら通す構造のため、開き具合に応じて流量が素直に変化し、絞って使う用途に向く。締切性能も高い。見た目は仕切弁と似ているが役割は逆で、仕切弁が全開・全閉専用なのに対し、玉形弁は途中で止めて使える。流路が曲がるぶん圧力損失は大きく、全開にするまでハンドルを何回も回す必要がある。
ボールバルブ
穴の空いた球を回転させて開け閉めするバルブ。レバーを90度倒すだけで操作できる。
球の穴の向きが配管と平行なら開、直角なら閉。レバーの向きを見るだけで開閉が一目で分かるため、複数のスタッフが同じ機械室を触る現場では扱いやすい。全開時の抵抗も小さく、小口径の分岐や薬液ラインで広く使われる。基本は開閉用で、半開のまま使い続けると球やシートの一部だけに流れが当たり、偏った摩耗につながる。
バタフライバルブ
配管の中の円板を90度回転させて開け閉めするバルブ。
大口径でも薄くて軽く場所を取らないため、循環系の太い配管やろ過器まわりで使われる。開度に応じた流量調整もある程度でき、電動や空気式の自動弁として組み込まれることも多い。全開にしても流路の中央に円板が残るため、わずかに抵抗が生じる。ハンドルを回すギア式は開閉状態が直感的に分かりにくく、開度表示の確認が必要。
逆止弁ぎゃくしべん/チェックバルブ
水の流れで自動的に開き、流れが逆になると閉じて逆流を防ぐバルブ。
ハンドルもレバーもなく、人が操作するのではなく流れそのもので動く。ポンプの吐出側や補給水のライン、薬液の注入ラインに入っていて、ポンプ停止時の逆戻りや浴槽水の給水側への逆流を防ぐ。内部のゴムや弁体が消耗する部品だが、外から働いているかどうかが分からない。ポンプを止めたら水が戻る、薬液が入らないといった症状の裏に劣化が隠れていることがある。
電動弁でんどうべん/自動弁
制御盤からの信号で自動的に開閉するバルブ。
バルブの上に電動アクチュエータが載り、モーターの回転で弁を動かす。90度回せば済むボールバルブやバタフライバルブと相性がよく、ろ過器の自動逆洗や補給水、薬液注入で使われる。空気圧で動かす空気圧式や、電磁石で直接動かす電磁弁も同じ仲間。スケールや腐食で弁が固着していると信号が出ているのに動き切らないことがあり、制御盤の表示だけで判断しないことが大切。
ウォーターハンマー水撃作用
バルブを急に閉めたとき、水の運動エネルギーが圧力の波となって配管を叩く現象。
勢いよく流れている配管のバルブを一気に閉めると、水の流れが行き場をなくし、ガンという衝撃音とともに配管が揺れる。繰り返されると継手や弁体、機器の接続部にダメージが蓄積し、水漏れや破損の原因になる。レバー一つで素早く閉められるボールバルブは便利な反面この現象を起こしやすく、大きな流量が流れているラインではゆっくり閉めるのが基本。
湯口ゆぐち
浴槽にお湯を注ぎ入れるための出口。竹筒やライオンの口、岩の切れ目など形はさまざま。
原水・原湯の注入口は、循環配管に接続せず浴槽水面の上部から落とし込む構造とすることが求められている。浴槽水が給水・給湯の配管へ逆流するのを、空気の層で物理的に断つためである。一方で循環してろ過された湯は浴槽の底部に近い部分から補給するとされており、こちらはエアロゾルの発生と、入浴者が新しい湯と誤解して口に含むことを防ぐためで、吐き出し口がその役割を担う。湯口の内部に湯が滞留すると生物膜ができやすいため、水が溜まらず抜け切る構造であることも重要になる。
貯湯槽ちょとうそう
沸かしたお湯を一時的に溜めておくタンク。
ボイラーで加熱したお湯をここに溜め、必要なときに浴槽やシャワーへ送ります。ピーク時に一気にお湯が使われても足りるよう、貯めて備えておくための設備です。レジオネラ対策の観点から高めの温度で保持するのが基本で、槽内の温度が下がる「ぬるい層」ができないよう温度管理と定期清掃が欠かせません。読み方を「ちょとうそう」と即答できるかどうかで、現場経験の有無がわかる言葉でもあります。
受水槽じゅすいそう
水道から引いた水をいったん受けて溜めておくタンク。
貯湯槽が「お湯」を溜めるのに対し、受水槽は「水」を溜めます。大量の水を使う温浴施設では、水道本管の圧力だけでは足りないため、いったん受水槽に受けてからポンプで各所へ送ります。一定の規模を超えると簡易専用水道として年1回の検査義務が生じるため、法令上も意識される設備です。
ろ過器ろかき
浴槽のお湯から髪の毛・皮脂・細かい汚れを取り除く装置。
循環式の浴槽では、お湯が常にこのろ過器を通って浴槽へ戻っています。砂を使う砂ろ過、繊維を使うカートリッジ式、珪藻土式などがあり、施設の規模と湯量で選ばれます。ろ材に汚れが溜まると流量が落ちるため、定期的な逆洗が前提の装置です。「循環しているから汚い」と言われがちですが、実際にはこのろ過器と消毒が湯を保っています。
逆洗ぎゃくせん/ぎゃくせんじょう
ろ過器に水を逆方向に流し、溜まった汚れを洗い出す作業。
通常の運転とは逆向きに水を通すことで、ろ材に捕まえられていた汚れを浮かせて排出します。多くの施設では営業終了後や早朝に、決まった頻度で行われます。逆洗を怠るとろ過能力が落ち、浴槽が濁る・ろ過圧が上がる・最悪は目詰まりで流量が確保できないといった不具合につながります。排出された水は「逆洗排水」と呼ばれ、施設によっては排水量そのものが管理指標になります。
集毛器しゅうもうき
ろ過器の手前で髪の毛などを先に捕まえるカゴ状の装置。ヘアキャッチャーとも。
循環ポンプの前に置かれ、髪の毛や大きなゴミがポンプやろ過器に入り込むのを防ぎます。構造は単純ですが、ここが詰まると循環量が落ちるため、毎日の洗浄が必要な部品です。掃除の手を抜くと真っ先に影響が出る場所で、現場では「集毛器を見ればその施設の管理レベルがわかる」と言われることもあります。
循環ポンプじゅんかんポンプ
浴槽のお湯を吸い出し、ろ過・加温・消毒を経て浴槽へ戻すためのポンプ。
循環式浴槽の心臓部で、営業中はほぼ止まりません。このポンプが止まるとろ過も消毒も成立しなくなるため、停電時に真っ先に問題になる設備でもあります。運転音や電流値の変化は不調のサインとして日常的に見られています。
熱交換器ねつこうかんき
二つの流体を混ぜずに熱だけを移す装置。
温泉水を直接ボイラーに通すと、成分で配管や缶体を傷めてしまいます。そこで熱交換器を挟み、ボイラーで沸かした水の熱だけを温泉水側へ渡す構造がよく使われます。プレート式が主流で、成分の濃い泉質ほど内部にスケールが付きやすく、定期的な分解洗浄が必要になります。
ボイラー
燃料や電気で水を加熱し、温水や蒸気をつくる装置。
温浴施設の熱源そのもの。規模や種類によってはボイラー技士などの有資格者による取扱いが必要で、日常点検・水面計の確認・ブロー作業などが定められています。源泉温度が低い施設では、このボイラーの能力がそのまま「浴槽の温度を保てるかどうか」に直結します。
薬注装置やくちゅうそうち
消毒用の薬液を、決まった量ずつ自動で注入する装置。
次亜塩素酸ナトリウムなどの薬液を、ポンプで循環配管に少しずつ送り込みます。注入量の設定ミスや、ノズルの結晶化による詰まりが「塩素が上がらない」トラブルの代表的な原因です。薬液タンクの残量確認は日常業務に組み込まれています。
チラー
水を冷やし続けるための冷却装置。水風呂の温度を保つために使われる。
サウナ人気とともに一気に知られるようになった設備です。冷凍機の原理で水から熱を奪い、設定温度を維持します。チラーのない施設では井戸水や水道水をかけ流して冷やすため、季節によって水温が変動しますが、チラー付きなら真夏でも一定温度を保てます。能力が足りないと、入浴者が多い時間帯に水温がじりじり上がっていきます。
オーバーフロー
浴槽のふちから溢れ出たお湯、またはそれを受ける構造のこと。
人が浴槽に入るとその体積の分だけお湯が溢れます。この溢れた湯を受ける溝や排水口をオーバーフローと呼びます。かけ流しの施設では溢れた分がそのまま捨てられますが、循環式では回収して再びろ過へ回す構造もあります。湯面に浮いた皮脂や汚れを外へ逃がす役割も担っており、水面の高さ管理と密接に関係します。
吸い込み口すいこみぐち
浴槽のお湯を循環設備へ吸い出すための開口部。
浴槽の壁面や底にあり、ここから吸われたお湯がろ過・加温・消毒を経て戻ってきます。吸引力が強いため、カバーの破損や固定不良は身体や髪が吸い付けられる重大事故につながります。安全基準でカバーの構造やネジ止めが定められており、点検項目としても重視されます。
吐き出し口はきだしぐち
循環してきたお湯を浴槽へ戻す開口部。
吸い込み口とは逆に、ろ過・加温・消毒を終えたお湯がここから浴槽へ出てきます。吐き出し口の位置と向きは、浴槽内でお湯がまんべんなく混ざるかを左右する重要な要素です。消毒された湯が浴槽の隅々まで行き渡らないと、局所的に塩素濃度が低い場所が生まれてしまいます。
キャビテーション
配管やポンプ内で気泡が発生し、潰れる際に金属を傷つける現象。
水の流れが急激に速くなると局所的に圧力が下がり、水が気化して気泡ができます。その気泡が高圧部で潰れるときの衝撃が、羽根車や配管内面を少しずつ削っていきます。異常な運転音や振動として現れることが多く、放置するとポンプの寿命を大きく縮めます。
ピット階ピットかい
浴室の下などにある、配管や設備が通る地下空間。
お客様からは決して見えない場所ですが、循環配管・排水管・ポンプ類が集中しており、施設の設備管理はここから始まります。狭く、暗く、湿度が高く、水が溜まりやすい環境のため、浸水や酸欠のリスクを伴う点検区画でもあります。「ピット」だけでも通じますが、階として区画されている場合にピット階と呼ばれます。
水位計すいいけい
浴槽や槽内の水面の高さを測り、給水の自動制御に使う機器。
連通管式・電極式・電子式などの方式があります。水位が下がれば自動で補給水が入り、上がれば止まる——この当たり前の動作を支えている装置です。電極棒にスケールや湯の花が付着すると水位を誤検知し、「お湯が止まらない」「補給されない」といったトラブルの原因になります。
連通管れんつうかん
槽の水位を外から目視できるようにした細い管。
つながった容器の水面は同じ高さになるという原理を使い、槽の横に立てた管の水位を見ることで中の水位を知ります。構造が単純で電気を使わないため信頼性が高い一方、管の内部が汚れると見づらくなり、定期的な清掃が必要です。
配管洗浄はいかんせんじょう
循環配管の内部に付いた汚れやぬめりを薬剤などで洗い落とす作業。
配管の内側にはバイオフィルムやスケールが少しずつ蓄積します。これはレジオネラ属菌の温床になるため、定期的な洗浄が衛生管理の要になります。過酸化水素系や塩素系の薬剤を循環させる方法が一般的で、施設の規模や泉質によって頻度と方法が変わります。休館日に実施されることが多い作業です。
スケール
温泉成分が固まって配管や湯口に付着した硬い堆積物。
主成分は炭酸カルシウムなどで、温度や圧力の変化によって溶けきれなくなった成分が析出したものです。湯口まわりの白い塊として目に見える形で現れますが、本当の問題は配管の内側。少しずつ内径を狭めて流量を落とし、最終的には閉塞を招きます。湯の花と混同されやすいのですが、成因も扱いも別物です。
カラン
洗い場の蛇口・水栓のこと。
オランダ語の kraan(鶴)が語源とされ、浴場業界で広く使われる呼び方です。数が多く、使用頻度も極端に高いため、消耗がはやい部品でもあります。湯温が安定しない、水量が変わるといった不具合は、カラン本体だけでなく給湯圧やサーモスタットの問題であることも少なくありません。
サウナストーブ
サウナ室を加熱する装置。
電気式、ガス式、薪式などがあり、上部にサウナストーンを積む構造が一般的です。ストーンに熱を蓄えることで、ロウリュの際に一気に蒸気を発生させられます。サウナ室の温度は、このストーブの能力と室の容積、そして換気のバランスで決まります。
換気設備かんきせつび
浴室内の湿気や熱を外へ排出する設備。
浴室は常に高温多湿で、換気が不足するとカビの発生、金属部のサビ、そして湯気による視界不良からの転倒につながります。地味な設備ですが、衛生面と安全面の両方に効いています。ダクト内部の清掃も見落とされやすい管理項目です。
加温かおん
源泉の温度が低い場合に、熱を加えて入浴に適した温度にすること。
日本の源泉のうち、そのままで適温になるものはむしろ少数派です。25℃以上あれば温泉法上の温泉ですが、入浴には40℃前後が必要なため、多くの施設が加温しています。加温の有無は温泉分析書や掲示で確認でき、「加温あり=質が劣る」ということではありません。外気温が低い季節や入浴者が多い時間帯は、加温能力が追いつかず湯温が下がることがあります。
加水かすい
源泉が高温すぎる場合などに、水を加えて温度や成分濃度を調整すること。
源泉が60℃や80℃といった高温で湧く場合、そのままでは入浴できないため加水されます。湯量が足りない場合に加水されることもあります。加温と同じく、掲示で確認できる項目です。加水の有無は湯の感触や成分濃度に影響するため、こだわる入浴者が気にするポイントでもあります。
揚湯量ようとうりょう
源泉から一定時間あたりに汲み上げられる湯の量のこと。
施設が使える湯の上限を決める数字で、浴槽の規模や入浴者数に対して足りなければ、加水・加温・循環に頼る割合が増える。経年で井戸やポンプの能力が落ちると揚湯量も下がり、配管を通る間に冷める割合が増えて「湯がぬるい」という形で利用者に現れることがある。源泉温度や熱交換器の能力とあわせて見る必要がある数値。
揚水ポンプようすいポンプ
受水槽に貯めた水を、建物の上階や高置水槽へ押し上げるポンプ。
水道本管の圧力だけでは大きな施設の上階まで水が届かないため、いったん受水槽に受けてから揚水ポンプで押し上げる。温浴施設ではシャワー・カラン・補給水の大元にあたるので、ここが止まると浴槽の湯は残っていてもシャワーから先に出なくなる。ふつう2台を交互に運転しており、1台が壊れても営業は続けられる作りになっている。断水時に最初に気にするのは受水槽の残量とこのポンプの運転状況。
電極棒でんきょくぼう
水に触れているかどうかで水位を検知する、電極式水位計のセンサー部分。
長さの違う数本の金属棒を垂らし、水が触れて通電したかどうかで満水・渇水・補給開始の位置を判断する。動く部品がなく丈夫だが、先端にスケールや湯の花が付着すると通電しなくなり、満水なのに補給が止まらない、逆に水があるのに渇水と判断して止まる、といった誤作動が起きる。自動補給水のトラブルで最初に疑う場所で、対処は基本的に清掃。
目皿めざら
吸い込み口や排水口に取り付ける、穴の空いた蓋状の部品。
髪の毛やゴミが配管へ入るのを防ぎ、同時に体や指が吸い込まれる事故を防ぐ。事故防止の要なので、外れていたり割れていたりしたらその浴槽は使用を止める。変わり湯のように浮かべる物を入れる日は、破片が目皿に張り付いて流れが悪くなるため、点検の回数を増やす。詰まると循環量が落ち、ろ過器や集毛器の負担にもつながる。
ろ材ろざい
ろ過器の中に詰めてあり、実際に汚れを捕まえている材料。
砂・けいそう土・繊維・カートリッジなど方式によって中身が違い、通した湯の汚れをここに溜めていく。溜まりすぎると流れが悪くなるので、逆洗で洗い流して使い続ける。それでも劣化するため定期的な交換が必要で、古いろ材はバイオフィルムの住みかになりやすい。「ろ過器を洗う」と言うとき、実際に洗っているのはこのろ材。
膨張タンクぼうちょうたんく
加熱で膨らんだ水を受け止め、配管系の圧力上昇を抑えるためのタンク。
水は温度が上がると体積が増えるが、配管の容積は変わらないため圧力が上昇する。この逃げ場として働き、冷えて水が縮むときは押し戻して負圧を防ぐ。大気に開放された開放式と、内部のゴム隔膜で吸収する密閉式がある。封入圧力の低下や隔膜の破損で機能を失うため、定期点検が必要。貯湯槽とは役割がまったく異なる。
膨張水ぼうちょうすい
加温によって体積が増えた分の水のこと。
水は温めると膨らみます。配管や熱交換器のように閉じた空間で温めると、増えた分の行き場がなくなり、そのまま圧力に変わります。これを逃がすために用意されているのが膨張タンクです。膨張水を甘く見た設計や、膨張タンクの不調は、配管の継手からの漏れや機器の損傷として表に出てきます。
ダイヤフラム/ブラダ
密閉式の膨張タンクの中で、水と空気を仕切っているゴム製の膜や袋。
タンク内をゴムで仕切り、片側に水、もう片側に圧縮空気を入れておく構造です。膨張水が入ってくると空気側が縮んで圧力を吸収します。膜状のものをダイヤフラム、袋状のものをブラダと呼びます。ゴムなので経年で硬くなったり破れたりし、破れるとタンクが効かなくなって圧力が逃げ場を失います。外から見て分からないため、点検で気づくしかない部品です。
逃がし弁にがしべん
圧力が設定値を超えたときに自動で開いて、水や蒸気を逃がす安全装置。
膨張タンクが吸収しきれないほど圧力が上がったときの、最後の砦にあたる部品です。作動すると水が排水側へ抜けるので、「原因は分からないが排水が流れている」という形で異常に気づくこともあります。逃がし弁が動いたということは、その手前で何かが効いていないということなので、弁を閉じて終わりにはできません。吸い込み口やキャビテーションと同じく、設備の安全を支える側の言葉です。
第二種圧力容器だいにしゅあつりょくようき
労働安全衛生法令で区分されている圧力容器のうちのひとつ。
圧力のかかった気体を内部に保有する容器は、その大きさや圧力によって法令上の区分が決まり、区分ごとに定期自主検査や取扱いの決まりが変わります。温浴施設では膨張タンクや貯湯槽がこの区分に該当することがあります。該当するかどうかは容器ごとの条件で決まるため、銘板と法令の条文で確認するのが確実です。ボイラーまわりで「検査が必要な機器かどうか」を分ける言葉だと思っておくと分かりやすいです。
衛生管理
お湯の安全を守るための言葉。保健所の立入検査や日々の水質測定で使われます。
残留塩素ざんりゅうえんそ
消毒のために加えた塩素のうち、水中に残って効果を発揮している分。
浴槽水の衛生管理で最も頻繁に測られる数値です。殺菌力を持つ「遊離残留塩素」と、アンモニア等と結合した「結合残留塩素」に分けられ、管理指標になるのは前者。濃度が低ければ菌が増え、高すぎれば臭いや刺激の原因になるため、一定の範囲に収めることが求められます。入浴者が多い時間帯は消費がはやく、こまめな測定が必要です。(具体的な管理数値は、公衆浴場における衛生等管理要領および各自治体の条例をご確認ください)
遊離残留塩素ゆうりざんりゅうえんそ
残留塩素のうち、殺菌力を持つ形で存在している分。
次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンの状態にある塩素で、これが実際に菌を不活化します。浴槽水の管理基準はこの遊離残留塩素の値で定められています。pHが高いと殺菌力の強い次亜塩素酸の割合が減るため、同じ濃度でも効きが変わる点が現場の難しさです。
次亜塩素酸ナトリウムじあえんそさんナトリウム
温浴施設で最も広く使われている塩素系の消毒薬。
薬注装置から浴槽の循環配管へ注入されるほか、嘔吐物処理や器具の消毒にも希釈して使われます。時間とともに濃度が落ちるため、保管期間と保管場所には注意が必要です。酸性の洗剤と混ざると有毒な塩素ガスが発生するため、取り扱いは厳重に分けられます。
中和剤ちゅうわざい
塩素濃度が上がりすぎたときに、塩素を打ち消すために投入する薬剤。
チオ硫酸ナトリウムなどが使われます。薬注装置の不具合や設定ミスで塩素が入りすぎた場合、そのままでは臭気や肌への刺激が出るため、中和して適正範囲に戻します。入れすぎると今度は塩素がゼロになってしまうため、少量ずつ入れて測り直すのが基本です。
ORPオーアールピー/酸化還元電位
水の酸化力を電位(mV)で表した値。消毒効果の目安になる。
残留塩素濃度が「どれだけ塩素があるか」を示すのに対し、ORPは「実際にどれだけ殺菌力が働いているか」に近い指標です。同じ塩素濃度でもpHや有機物量で殺菌力は変わるため、ORPを併用すると状態をより正確に把握できます。連続測定して制御に使う施設もあります。
レジオネラ属菌レジオネラぞっきん
温水環境で増殖し、肺炎を引き起こすことがある細菌。
温浴施設の衛生管理が厳しく定められている最大の理由です。菌を含んだ細かい水しぶき(エアロゾル)を吸い込むことで感染し、重症化すると命に関わります。20〜50℃前後のぬるい水、配管内のバイオフィルム、循環設備の停滞部が増殖の温床となるため、消毒・換水・配管洗浄・貯湯温度の管理がすべてこの菌への対策としてつながっています。浴槽水の検査項目としても定められています。
バイオフィルム
配管や浴槽の内側にできる、菌が作るぬめりの膜。
細菌が自ら分泌した粘着物質で作る膜で、内部の菌は消毒剤が届きにくく守られてしまいます。レジオネラ属菌の温床となるため、単に塩素を入れるだけでは不十分で、物理的な清掃と配管洗浄で膜そのものを剥がす必要があります。手すりや縁を触ったときのぬるつきは、その一端が目に見えたものです。
死水しすい
循環の流れから外れ、動かないまま滞留している水。公的文書では滞留水とも呼ばれる。
タイルの浮き、目地の欠け、岩組みの隙間、コーキングの切れなど、経年劣化でできた空隙に水が入り込んで生まれる。適温・有機物・停滞という条件が揃うためレジオネラ属菌が増殖しやすく、奥まで塩素が届かないため通常の消毒では対処できない。配管の行き止まり部分はデッドレグと呼ばれ、同じ問題を抱える。
打診棒だしんぼう
先端の玉でタイル面を叩き、音の違いから下地の浮きを調べる点検道具。
もとは建築の外壁タイル検査で使われる道具だが、浴槽の点検にも応用できる。密着している部分は詰まった硬い音、浮いている部分は乾いた軽い音がする。表面にひびがなくても浮きは起きるため、目視だけでは見つけられない空隙の発見に有効。換水で水を抜いたタイミングが点検の好機となる。
換水かんすい
浴槽のお湯を抜いて入れ替えること。
どれだけろ過と消毒をしても、湯の中には溶け込んだ汚れが少しずつ蓄積します。これをリセットする唯一の方法が換水です。頻度は法令・条例で定められており、連日使用型の循環浴槽では定期的な完全換水が求められます。換水にあわせて浴槽の清掃と配管の洗浄を行うのが一般的で、施設が休館日を設ける理由のひとつでもあります。
完全換水かんぜんかんすい
浴槽の湯をすべて抜き、清掃したうえで新しい湯を張り直すこと。
一部を入れ替える「部分換水」に対し、全量を入れ替える作業を指します。汚染が疑われる事態が起きたときには、定期の予定にかかわらず緊急で実施されます。大浴場では湯を張り直すだけで数時間かかるため、営業時間との調整が必要な作業です。
濁度だくど
水の濁りの程度を数値で表したもの。
浴槽水の水質基準のひとつで、ろ過が正常に機能しているかの指標になります。ただし、もともと白濁した泉質や、湯の花が多い温泉では見た目の濁りと衛生状態が一致しません。だからこそ「濁っている=汚い」ではなく、成分由来か汚れ由来かを見分ける目が求められます。
色度しきど
水についた色の程度を数値で表したもの。
濁度が「濁り」を、色度が「色」を表します。含鉄泉の茶色、硫黄泉の白濁など、泉質由来の色は正常なものです。一方で、普段は透明な浴槽が急に色づいた場合は、配管由来のサビや汚れの流出が疑われます。
白濁色はくだくしょく
お湯が白く濁って見える状態。
硫黄泉に代表される、成分が細かい粒子となって湯中に分散することで白く見える現象です。温泉らしさの象徴として好まれる一方、汚れによる濁りとの区別がつきにくいのも事実。成分由来であれば湯口付近から白く、時間の経過や温度低下で濃さが変わるといった特徴があります。
立入検査たちいりけんさ
保健所の職員が施設を訪れ、衛生状態を確認する検査。
公衆浴場法などに基づいて実施されます。浴槽水の採水、水質記録簿の確認、清掃・換水の記録、設備の状態などが見られます。日々の記録が残っていないと、実際にきちんとやっていても証明できません。「記録を残すことまでが衛生管理」と言われる理由です。
公衆浴場法こうしゅうよくじょうほう
公衆浴場の設置と衛生管理について定めた法律。
温浴施設の営業許可と衛生基準の土台になる法律です。具体的な基準の多くは各都道府県の条例に委ねられているため、同じ内容でも地域によって細部が異なります。加えて、厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」が実務上の指針として広く参照されています。
ノロウイルス
感染性胃腸炎を引き起こすウイルス。嘔吐物や便を介して広がる。
浴室や脱衣所で嘔吐があった場合、アルコール消毒では効果が不十分なため、次亜塩素酸ナトリウムによる処理が必要になります。乾燥した嘔吐物が舞い上がって感染が広がることもあるため、飛散させない手順で処理し、使用した用具はまとめて廃棄するのが原則です。冬季に特に警戒される対象です。
浴室清掃よくしつせいそう
営業終了後などに行う、浴室全体の洗浄作業。
浴槽、洗い場、床、排水溝、サウナ室まで、範囲は広大です。床のぬめりは転倒事故に直結し、排水溝の汚れは悪臭と害虫の原因になります。営業時間外の限られた時間で行うため、手順と分担が徹底されている施設ほど仕上がりが安定します。換水や配管洗浄とあわせて行われることも多い作業です。
塩素が上がらないえんそがあがらない
薬液を入れているのに残留塩素の数値が上がらない状態。現場の頻出トラブル。
原因は一つではありません。薬液の劣化、注入ノズルの詰まり、ポンプの吐出不良、入浴者数の急増による消費、有機物の多さ、pHの偏り、配管の汚れなど、複数の要因が絡みます。数値だけを追って薬液を足し続けると、原因が解消した瞬間に濃度が跳ね上がる危険があるため、原因の切り分けが先です。
泉質・温泉法
温泉そのものを分類し、性質を表す言葉。分析書や掲示板に書かれています。
温泉法おんせんほう
何を「温泉」と呼べるかを定めた法律。
源泉の温度が25℃以上あるか、または指定された成分のいずれかが一定量以上含まれていれば温泉と認められます。つまり、冷たくても成分が入っていれば温泉です。掘削や利用の許可、成分の掲示義務などもこの法律で定められています。
療養泉りょうようせん
温泉のうち、治療目的に適する成分・温度を備えたもの。
温泉法上の「温泉」よりも条件が厳しく、泉質名が付くのはこの療養泉です。適応症を掲示できるのも療養泉に限られます。「温泉ではあるが療養泉ではない」源泉も存在し、その場合は泉質名がつきません。
単純温泉たんじゅんおんせん
成分の総量が一定未満で、特定の泉質名がつかない温泉。
日本で最も多い泉質です。「成分が薄い=効果がない」と誤解されがちですが、刺激が少ないぶん体への負担が軽く、長く浸かれる、肌の弱い方や高齢の方でも入りやすいという明確な利点があります。
塩化物泉えんかぶつせん
塩化物イオンを主成分とする泉質。しょっぱい湯。
海水由来のもの、地層に閉じ込められた化石海水、岩塩層を溶かしたものなど、成因はさまざまです。塩分が肌に膜をつくるため湯冷めしにくく、「熱の湯」と呼ばれることもあります。
炭酸水素塩泉たんさんすいそえんせん
炭酸水素イオンを主成分とする泉質。重曹泉とも呼ばれる。
皮脂を乳化させる作用があり、肌がつるつるする「美肌の湯」として知られます。岩石が地下水に溶けることで生まれる泉質で、入浴後に肌が乾燥しやすい面もあります。
硫酸塩泉りゅうさんえんせん
硫酸イオンを主成分とする泉質。
含まれる陽イオンによってさらに細かく分類されます。岩石中の成分が溶け出してできる泉質で、古くから傷の湯として知られてきました。
二酸化炭素泉にさんかたんそせん/炭酸泉
遊離炭酸を一定量以上含む泉質。肌に細かい泡がつく。
日本では希少な天然の炭酸泉のほか、人工的に炭酸ガスを溶かした人工炭酸泉も広く普及しています。血管を広げる作用があるとされ、ぬるめの湯でもよく温まるのが特徴です。温度が高いと炭酸が抜けてしまうため、低温で提供されます。
含鉄泉がんてつせん
鉄イオンを一定量以上含む泉質。空気に触れると茶色く濁る。
湧き出した直後は無色透明でも、鉄が酸化することで茶褐色に変わります。浴槽が茶色いのはこのためで、汚れではありません。設備側から見ると、鉄分は配管や器具に付着しやすく、清掃の手間が増える泉質でもあります。
酸性泉さんせいせん
水素イオンを一定量以上含む、pHの低い泉質。
火山の近くに多く、強い殺菌力を持つ一方で、肌への刺激も強くなります。入浴後に真水で流すことが推奨される場合があります。金属を腐食させるため、設備の材質選定にも影響する泉質です。
含よう素泉がんようそせん
よう化物イオンを一定量以上含む泉質。
2014年の基準改定で新たに加わった、比較的新しい泉質名です。太古の海の地層に由来することが多く、火山のない平野部に偏って分布するという特徴があります。空気に触れると黄褐色に変化します。
硫黄泉いおうせん
総硫黄を一定量以上含む泉質。特有の匂いと白濁が特徴。
「温泉らしい匂い」として親しまれる一方、硫化水素型は高濃度になると危険なため、換気が特に重要になります。銀製品を黒く変色させるので、アクセサリーは外して入浴するのが無難です。設備面では金属の腐食が進みやすい泉質です。
放射能泉ほうしゃのうせん
ラドンなどを一定量以上含む泉質。ラドン泉・ラジウム泉とも。
名前の印象に反して含有量はごく微量で、花崗岩帯に多く分布します。ラドンは気体なので、湯に浸かるだけでなく浴室の空気からも取り込まれるとされ、換気との兼ね合いが語られることもあります。
温泉分析書おんせんぶんせきしょ
源泉の成分や性質を分析した公式の書面。
脱衣所などに掲示が義務づけられています。泉質名、源泉温度、pH、成分の含有量、そして加水・加温・循環・消毒の有無がここに記されます。読み方を知っていると、その施設の湯がどう扱われているかが一目でわかります。
低張性・等張性・高張性ていちょうせい・とうちょうせい・こうちょうせい
温泉の浸透圧を、人体の体液と比べて分類したもの。
体液より成分が薄ければ低張性、同程度なら等張性、濃ければ高張性です。高張性の湯は成分が身体に入りやすい反面、湯あたりを起こしやすいとされます。分析書に必ず記載されている項目です。
pHピーエッチ/水素イオン濃度
酸性・アルカリ性の度合いを示す数値。
7が中性で、低いほど酸性、高いほどアルカリ性です。アルカリ性の湯は皮脂を落とすため肌がぬるぬるし、酸性の湯は殺菌力が強い反面刺激があります。衛生管理の面では、pHが高いと塩素の殺菌力が落ちるため、測定が欠かせない項目です。
湯の花ゆのはな
温泉成分が析出してできた、湯に浮かぶ粒や沈殿物。
温度や圧力の変化で溶けきれなくなった成分が固まったもので、汚れではありません。ただし見た目が垢と似ているため、混同されやすい存在です。白、灰色、茶色など泉質によって色が異なり、入浴剤として販売されることもあります。
浴感よくかん
湯に入ったときの肌ざわりの感覚。
つるつる、きしきし、ぬるぬる、しっとりといった言葉で表されます。アルカリ性で皮脂が乳化すればつるつる、酸性や硫酸塩泉ではきしきしするなど、感覚の違いには化学的な理由があります。泉質を体感で見分ける手がかりです。
源泉かけ流しげんせんかけながし
湧き出した湯を循環させずに浴槽へ注ぎ、溢れた分を捨てる方式。
常に新しい湯が注がれる贅沢な方式ですが、豊富な湧出量と適した温度が必要なため、実現できる施設は限られます。加水・加温・消毒の有無によって呼び方が分かれることもあり、「かけ流し=無条件に衛生的」とは限りません。
循環式じゅんかんしき
浴槽の湯を吸い出し、ろ過・加温・消毒して再び浴槽へ戻す方式。
日本の温浴施設の多くがこの方式です。限られた湯量で大きな浴槽を維持でき、温度も安定します。「使い回し」という印象を持たれがちですが、ろ過・消毒・換水が適正に管理されていれば衛生上の問題はありません。管理を怠ったときにリスクが顕在化する方式、と言うほうが正確です。
源泉温度げんせんおんど
地中から湧き出した時点でのお湯の温度。
場所によって大きく異なり、火山性の温泉では高温、非火山性では地温勾配によるぬるめの湯が多くなります。この温度が低ければ加温が、高すぎれば加水や冷却が必要になるため、施設の設備構成を決定づける数字です。
適応症てきおうしょう
その温泉の入浴が適するとされる症状。
療養泉に限って掲示できます。一般的適応症(どの療養泉にも共通)と泉質別適応症に分かれます。医学的な治療を保証するものではなく、あくまで温泉療養の目安として示されるものです。
禁忌症きんきしょう
その温泉への入浴を避けるべきとされる状態や症状。
急性疾患、発熱時、重い心臓病などが一般的な禁忌症として挙げられます。分析書とあわせて掲示が義務づけられており、体調に不安がある場合は入浴前に確認すべき項目です。
飲泉いんせん
温泉を飲むこと。
飲泉には別途、飲用許可が必要です。許可のない浴槽の湯を飲むことはできません。許可された施設には飲泉場が設けられ、一回あたりの量の目安などが掲示されています。泉質によっては飲用が適さないものもあります。
サウナ・岩盤浴
近年利用者が急増した領域の言葉。設備としても新しいものが多く含まれます。
ロウリュ
熱したサウナストーンに水をかけ、蒸気を発生させること。
フィンランド語の löyly に由来します。蒸気で湿度が上がることで体感温度が大きく上昇し、発汗が促されます。設備側では、自動で水をかけるオートロウリュを備えた施設も増えました。急激に熱くなるため、無理をしない利用が前提です。
アウフグース
ロウリュで発生させた蒸気を、タオルなどで利用者に送る演出。
ドイツ語の Aufguss(注ぐ)に由来します。熱風を直接浴びるため体感温度がさらに上がり、イベント性の高いサービスとして定着しました。実施する担当者は熱波師と呼ばれます。
熱波師ねっぱし
アウフグースを行う担当者。
タオルの扱いだけでなく、室温・湿度・利用者の体調への配慮が求められる役割です。人気の熱波師目当てに来館する利用者もおり、施設の集客要素にもなっています。
水風呂みずぶろ
サウナの後に入る冷たい浴槽。
温度は施設によって幅がありますが、15〜17℃前後が一般的とされます。チラーの有無で夏場の安定性が変わります。心臓への負担があるため、かけ水で身体を慣らしてから入るのが基本です。
外気浴がいきよく
サウナと水風呂の後に、外の空気にあたって休憩すること。
サウナで温まり、水風呂で冷やし、外気浴で整えるという一連の流れの最後にあたります。この休憩時間の過ごし方が体感を大きく左右するため、整い椅子やデッキチェアの数は施設選びのポイントにもなっています。
ととのう
サウナ・水風呂・外気浴を経たあとに訪れる、心身が落ち着いた感覚。
サウナ文化の広がりとともに定着した言葉です。温冷交代による自律神経への作用が背景にあるとされますが、感じ方には個人差があります。無理に到達しようとして長時間サウナに入るのは危険で、体調と相談しながら楽しむものです。
サウナハット
サウナ内で頭を熱から守るためにかぶる帽子。
サウナ室内は上部ほど高温になるため、頭部が先にのぼせやすくなります。それを防ぎ、髪の乾燥も抑えるのがサウナハットの役割です。フェルトやタオル地の製品が主流です。
岩盤浴がんばんよく
温めた石の上に横たわり、じっくり汗をかく入浴法。
40〜50℃前後とサウナより低温で、時間をかけて身体を芯から温めます。館内着を着て男女一緒に利用できる施設が多いのが特徴です。サウナが「短時間・高温」なのに対し、岩盤浴は「長時間・低温」と整理するとわかりやすくなります。
チムジルバン
韓国式の大型サウナ施設。
複数の温度帯のサウナ、仮眠スペース、食事処などを備え、長時間滞在を前提とした構造になっています。館内着で過ごす点は日本の岩盤浴施設と共通しており、日本のスーパー銭湯の形態にも影響を与えました。
オロポ
オロナミンCとポカリスエットを混ぜたサウナドリンク。
サウナ後の定番として広く定着し、メニューに載せる施設も増えました。名称は両商品名を縮めたもので、比率は施設や好みによって異なります。
リポスパ
リポビタン系ドリンクと水分補給飲料を合わせたサウナドリンク。
オロポに続いて広まった組み合わせで、温浴施設発の定番として知られるようになりました。提供する施設ごとにベースとなる商品が違うことがあります。
施設運営
お客様対応や運営の現場で使われる言葉。
湯あたりゆあたり
温泉入浴後、時間を置いてから現れる体調不良。
入浴の直後ではなく、数時間から数日後にだるさ、頭痛、微熱などとして現れるのが特徴です。成分の強い温泉に繰り返し入ったときに起こりやすいとされます。入浴中に起こる「のぼせ」とは、原因もタイミングも別のものです。
のぼせ
入浴中や直後に、めまい・立ちくらみなどが起こる状態。
熱い湯につかることで血管が広がり、脳へ向かう血流が一時的に不足することで起こります。湯あたりと違って入浴中〜直後に現れるため、その場での対応が必要です。転倒による事故につながりやすく、施設側が最も警戒する症状のひとつです。
かけ湯かけゆ
浴槽に入る前に、お湯を身体にかけて汚れを落とし、温度に慣らすこと。
マナーであると同時に、衛生管理の第一歩でもあります。身体の汚れや汗を落としてから入ることで、浴槽水に持ち込まれる有機物が減り、塩素の消費が抑えられます。急な温度差による血圧の変動を和らげる効果もあり、心臓から遠い足元からかけるのが基本です。
湯冷めゆざめ
入浴後に身体が急速に冷えること。
入浴で広がった血管から熱が逃げ、汗が蒸発する際にさらに体温が奪われることで起こります。塩化物泉のように成分が肌に膜をつくる泉質は湯冷めしにくいとされます。脱衣所の室温管理は、施設側が地味に気を配っている部分です。
出禁できん
利用をお断りすること。出入り禁止。
迷惑行為、他の利用者への危害、施設の備品破損などが繰り返された場合に取られる措置です。施設側も簡単に判断するわけではなく、記録を残し、段階を踏んだうえで決定されるのが通常です。
カスハラカスタマーハラスメント
顧客による過剰な要求や、従業員への暴言・威圧行為。
正当なクレームとは区別されます。裸で過ごす空間という温浴施設の特性上、対応する側が逃げ場を持ちにくい場面もあり、対応方針を事前に定めておくことが重要になります。近年は企業側の対策が法的にも求められるようになりました。
スーパー銭湯スーパーせんとう
複数の浴槽やサウナ、休憩処などを備えた大型の公衆浴場。
法律上は「その他の公衆浴場」に区分されることが多く、料金が自由に設定できる点が、物価統制令の対象となる一般公衆浴場(銭湯)との大きな違いです。温泉を使っている施設もあれば、沸かし湯だけの施設もあります。
不感温度ふかんおんど
熱くも冷たくも感じにくい、体温に近い温度帯のこと。
この帯の湯は体への負担が小さいとされ、長く浸かっても体力を奪われにくい。施設側が意図的にこの温度に寄せた浴槽を用意していることがあり、利用者には「ぬるい」と受け取られやすいが不具合ではない。のぼせや湯あたりを避けたい人、長湯したい人に向けた設計で、ぬる湯浴槽と同じ考え方で使われる。
ぬる湯
長時間ゆっくり浸かってもらうことを前提にした、低めの湯温の浴槽。
高温の浴槽と並べて設置され、サウナの合間や長湯をしたい利用者の受け皿になる。不感温度に近い設定にすることが多く、加温の不調でぬるくなっているのとは意図がまったく違う。ただし利用者からは区別がつかないため、浴槽名や湯温の掲示がないと「ぬるい」というクレームにつながりやすい。
変わり湯かわりゆ
通常のお湯に柚子や菖蒲、果物、入浴剤などを加えて、季節感や香りを楽しめるようにした風呂。
冬至の柚子湯や端午の菖蒲湯が代表的で、近年は果物や野菜を浮かべる施設も増えている。循環ろ過の浴槽に有機物を入れることになるため、塩素の消費が増え、集毛器やろ過器に破片が溜まりやすい。施設はネットに入れる、丸ごと浮かべる、終了後に回収・清掃するといった工夫で影響を抑えている。
渇水停止かっすいていし
水位が下がりすぎたとき、ポンプを自動で止める保護のしくみ。
水のないままポンプを回すと空運転になり、内部が焼き付いて壊れる。それを防ぐため、水位計が下限を検知した時点でポンプを止める。断水や補給水の不調が起きたとき、まず現れるのがこの停止で、いわば設備が自分を守った状態。復旧は水位が戻ってから行い、原因を確かめずに手動で動かすとポンプを壊す。
簡易専用水道かんいせんようすいどう
水道水を受水槽に受けてから建物内へ配る設備のうち、受水槽の容量が一定以上のもの。
水道局の水を受けた後は建物側の管理責任になるため、受水槽の清掃と検査が定期的に求められる。大浴場を持つ施設はほとんどがこれに当たり、浴槽水の衛生管理とは別枠の管理項目になる。受水槽が汚れていれば、そこから先の浴槽・シャワー・厨房すべてに影響する。具体的な容量の区分や検査の頻度は制度と自治体の定めを確認する。
設備の全体像をつかむなら 温泉設備の仕組み完全ガイド、泉質の分布と地質の関係は 泉質は地質が決める|日本地質マップ にまとめています。知識を試したい方は 温浴施設管理者検定、自分に合う泉質を知りたい方は 泉質診断 へどうぞ。
このページについて
温浴施設で実際に使われている用語を、現場スタッフの視点でまとめています。法令に関わる具体的な数値基準は、厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領」および各自治体の条例が正式な基準となります。実務では必ず原典と所轄の保健所の指導をご確認ください。用語は随時追加していきます。


