サウナはどうやって温めている?|ストーブの種類と「水かけ」の漏電リスクを現場スタッフが解説

入り方・サウナ

サウナ室に入ると、そこには80〜100℃の熱気が充満しています。

この熱を生み出しているのが「サウナストーブ」です。でも、そのストーブがどうやってサウナ室を温めているのか、具体的に知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。

そして、最近のサウナブームで注目を集めているのが「ロウリュ」——サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる入浴法です。しかし現場では、ストーブに水をかけることによる漏電や故障のトラブルが実際に起きています。

この記事では、サウナストーブの種類と仕組み、そして「水かけ」がなぜ危険な場合があるのかを、温泉施設スタッフの視点から解説します。

サウナストーブの種類

サウナストーブは、熱源によって大きく3つに分けられます。日本の温泉施設で見かけるサウナのほとんどは、このいずれかの方式です。

ガス式ストーブ(遠赤外線型)

日本の温泉施設やスーパー銭湯で最も多く使われているのが、ガス式の遠赤外線ストーブです。

都市ガスやLPガスを燃焼させ、その熱で遠赤外線を放射するパネルやセラミックを加熱します。パネルから放射された遠赤外線が、サウナ室の壁、床、天井、そして入浴者の体を直接温めます。焚き火のそばにいると体が温かくなるのと同じ「輻射熱」の原理です。

ガス式の最大の長所は、立ち上がりの早さと熱効率の良さです。電気式と比べて50〜60%程度燃費が良いとされており、大型のサウナ室を効率的に温められます。商業施設で多用されている理由はここにあります。

電気式ストーブ(対流型・ストーン型)

電気ヒーター(電熱線)で発熱し、その上に積まれたサウナストーンを加熱する方式です。熱されたストーンが周囲の空気を温め、対流によってサウナ室全体に熱が広がります。

電気式は操作が簡単で、温度調節もボタンひとつでできます。タイマーや自動温度管理機能を備えたモデルが多く、スタッフの管理負担が軽いのもメリットです。

サウナストーンがあるため、ロウリュ対応のモデルであれば水をかけて蒸気を楽しむことができます。ただし、すべての電気式ストーブがロウリュに対応しているわけではありません。この点が漏電リスクに直結するため、後ほど詳しく解説します。

電気式はガス式に比べると燃費が高く、大型のサウナ室を温めるにはパワー不足になることもあるため、小〜中規模のサウナ室や家庭用サウナに多く採用されています。

薪式ストーブ

薪を燃やしてサウナストーンを加熱する、最も伝統的な方式です。フィンランドの伝統的なサウナはこの薪式であり、薪が燃える音や匂い、炎の揺らめきまで含めた五感の体験が魅力です。

日本では、テントサウナやアウトドアサウナ、一部の宿泊施設で採用されています。都市部の温浴施設ではほとんど見かけません。煙突が必要、薪の準備と管理が必要、火災リスクが高いなど、商業施設での運用には課題が多いためです。

薪式はサウナストーンが大量に積まれているため、ロウリュとの相性は抜群です。薪の火力で十分に熱されたストーンに水をかけると、力強い蒸気が立ち上ります。

その他の方式

上記3つ以外にも、いくつかの方式があります。

ガス式とストーン型を組み合わせたハイブリッドタイプもあります。ガスの遠赤外線で室内を効率よく温めながら、ストーンを使ったロウリュも可能にしたタイプで、最近の大型施設では導入が増えています。

ボナサームと呼ばれる格納式は、ヒーターが壁面に埋め込まれた方式で、サウナ室内にストーブが露出しません。安全性が高く、省スペースですが、ロウリュはできません。

スチーム発生器を使ったスチームサウナは、蒸気を直接室内に噴出して加湿・加温する方式です。温度は40〜60℃と低めですが、湿度が非常に高く、ドライサウナが苦手な方に向いています。

サウナストーンの役割

電気式・薪式のストーブには、サウナストーンが欠かせません。ストーンが果たしている役割を理解すると、なぜロウリュが気持ちいいのかもわかります。

蓄熱体として機能する

サウナストーンは、ストーブの熱を蓄える「蓄熱体」です。石は空気よりもはるかに多くの熱を蓄えることができるため、ストーンがしっかり加熱されていれば、ヒーターが一時的にOFFになってもサウナ室の温度を維持できます。

ストーンの量が多いほど蓄熱量が大きくなり、安定した温度を長時間維持できます。業務用のサウナストーブには30〜100kg以上のストーンが積まれていることもあります。

ロウリュで蒸気を発生させる

十分に加熱されたサウナストーン(表面温度300〜400℃)に水をかけると、水が瞬時に蒸発して蒸気(水蒸気)になります。これがロウリュです。

発生した蒸気は天井付近に溜まり、サウナ室の湿度が一気に上がります。湿度が上がると体感温度が急上昇し、発汗が促進されます。同じ室温でも、ロウリュの直後は体感温度が10〜20℃高く感じることもあります。

ストーンは消耗品

意外と知られていませんが、サウナストーンは永久に使えるものではなく消耗品です。長期間の加熱と冷却の繰り返しで、石にひびが入ったり、割れたり、風化して崩れたりします。

割れたストーンが落下してヒーターのエレメント(電熱線)を損傷させることもあるため、定期的にストーンの状態を確認し、劣化したものは交換しています。

ストーブに水をかけると漏電する?

ここからが、施設スタッフとして最も注意を払っているポイントです。

ロウリュ非対応のストーブに水をかけるのは危険

結論から言うと、ロウリュ非対応の電気式サウナストーブに水をかけると、漏電や故障の原因になります。これは現実に起きるトラブルです。

ロウリュ非対応のストーブは、水がかかることを想定した設計になっていません。水がストーンを伝ってストーブの内部に入り込むと、電熱線(エレメント)や配線部分に水が触れ、漏電が発生します。

漏電が起きると、漏電遮断器(ブレーカー)が作動してサウナの電源が落ちます。最悪の場合、ブレーカーが作動する前に感電のリスクもあります。

ロウリュ対応ストーブの安全設計

一方、ロウリュ対応の電気式ストーブは、水がかかることを前提に設計されています。

ヒーターのエレメント(電熱線)が防水処理されている、もしくは水が直接エレメントに触れない構造になっています。水はストーンの上で蒸発し、ストーブ内部の電気部品には到達しない設計です。

また、万が一の漏電に備えて、漏電遮断器やアース(接地)が適切に設置されていることも、安全運用の前提条件です。

なぜ「水かけ禁止」の貼り紙があるのか

温泉施設のサウナ室に「ストーブに水をかけないでください」という貼り紙が貼ってあるのを見たことがある方は多いと思います。

これはまさに、そのストーブがロウリュ非対応であるために掲示しているものです。ガス式の遠赤外線ストーブはそもそもストーンがないため水をかける場所がありませんが、電気式のストーン型でロウリュ非対応のモデルが問題になります。

見た目にはストーンが積まれており、水をかけられそうに見えます。サウナブームでロウリュの気持ちよさを知った利用者が「ここでもロウリュしたい」と思って水をかけてしまう——これが施設にとって頭の痛い問題なのです。

水かけによる故障でサウナが使えなくなると、修理に数日〜数週間かかることもあります。その間サウナは営業停止となり、施設にとっても利用者にとっても大きな損失です。

セルフロウリュの施設が増えている理由

最近、セルフロウリュ(利用者が自分で水をかけられるサウナ)を導入する施設が増えています。背景にあるのは、「水かけ禁止」では利用者のニーズに応えられないという現実です。

ロウリュの気持ちよさを知った利用者は、禁止されていても水をかけてしまうことがあります。貼り紙を貼る、ストーブガードを天井まで囲う、それでもやる人がいる——いたちごっこが続いていました。

ならば、ロウリュ対応のストーブに入れ替えて、安全にセルフロウリュを楽しめる環境を作ろう——この発想で、ストーブの更新に踏み切る施設が増えています。

セルフロウリュを導入する場合は、水のかけすぎを防ぐために「15分に1回まで」「柄杓1杯ずつ」といったルールを設け、砂時計を設置している施設が多いです。

漏電以外のリスク

水かけに関しては、漏電以外にもリスクがあります。

蒸気による火傷

ロウリュで発生する蒸気は非常に高温です。ストーンの直近では100℃を超えることもあり、水をかけた瞬間に立ち上る蒸気で手や顔を火傷するリスクがあります。

特に、大量の水を一気にかけると、爆発的に蒸気が発生して危険です。ロウリュは柄杓1杯ずつ、ゆっくりとかけるのが安全な方法です。柄の長い柄杓を使い、ストーブからできるだけ距離を取ってかけます。

他の利用者への影響

セルフロウリュでは、水をかけた本人以外の利用者にも蒸気の熱が降りかかります。「もっと熱くしたい」と思って大量に水をかけると、他の利用者にとっては望まない温度になることがあります。

「水をかける前に周囲に一声かける」「一度に大量にかけない」というマナーが、セルフロウリュでは特に重要です。

ストーブの寿命短縮

ロウリュ対応のストーブであっても、頻繁な水かけはストーブの寿命を縮めます。水によるヒーターエレメントの酸化、ストーンの急激な温度変化による劣化、金属部品の腐食——これらが蓄積していきます。

施設側は、ストーブの状態を定期的に点検し、エレメントやストーンの交換時期を管理しています。

施設のサウナストーブ管理

現場スタッフとして、サウナストーブの管理で日常的に行っていることを紹介します。

温度管理

サウナ室の温度はストーブの設定温度で管理しますが、外気温や利用者の出入り(ドアの開閉)によって室温は常に変動します。スタッフは定期的にサウナ室の温度を確認し、必要に応じて設定を調整します。

ストーンの点検と交換

サウナストーンは半年〜1年に一度を目安に、割れや崩れがないか点検します。劣化したストーンは取り除き、新しいストーンに交換します。ストーンの積み方にもコツがあり、空気の通り道を確保しつつ、水がエレメントに直接かからないよう配置します。

ヒーターエレメントの確認

電気式ストーブの場合、ヒーターエレメント(電熱線)が断線していないか、変色・変形していないかを定期的に確認します。エレメントが1本でも切れていると、サウナ室が十分に温まらなくなります。エレメントの確認は業者に委託するのも一つの手です。

換気の管理

サウナ室には給気口と排気口が設けられており、新鮮な空気を取り入れながら室内の空気を循環させています。換気が不十分だと、酸素濃度が低下して息苦しさを感じるだけでなく、ストーブの燃焼効率(ガス式の場合)にも影響します。

利用者として気をつけること

「水かけ禁止」の表示は絶対に守る

禁止の掲示がある場合、そのストーブはロウリュ非対応です。水をかけると漏電・故障のリスクがあり、サウナが使えなくなって他の利用者にも迷惑がかかります。「ちょっとくらい大丈夫だろう」は禁物です。

セルフロウリュのルールを守る

セルフロウリュが許可されている施設では、施設が定めたルール(水の量、頻度、タイミング)を守ってください。周囲の利用者に一声かけてからかけるのがマナーです。

異臭・異音を感じたらスタッフに報告

サウナ室で焦げ臭い匂いがする、バチバチという異常な音がする、ストーブ周辺に水が溜まっている——こうした異変に気づいたら、すぐにスタッフに報告してください。漏電や故障の初期症状である可能性があります。

まとめ

サウナストーブには、ガス式(遠赤外線型)、電気式(ストーン型)、薪式の3つの主要タイプがあります。日本の温泉施設で最も多いのはガス式で、立ち上がりが早く燃費が良いのが特徴です。電気式はストーンを使った対流加熱で、ロウリュ対応モデルも増えています。

ロウリュ非対応の電気式ストーブに水をかけると、水がヒーターエレメントや配線に到達し、漏電や故障の原因になります。漏電遮断器が作動してサウナが停止するだけでなく、感電のリスクもあります。「水かけ禁止」の掲示は、この危険を防ぐためのものです。

ロウリュ対応のストーブは、水がかかることを前提に防水設計されており、安全にロウリュを楽しめます。セルフロウリュの導入が進んでいるのは、利用者のニーズに安全な形で応えるための取り組みです。

サウナの正しい入り方とあわせて、ストーブの仕組みを知っておくと、サウナ体験がさらに深まります。次にサウナ室に入ったとき、ストーブをちらっと見て「これはガス式かな、電気式かな」と考えてみてください。サウナの楽しみ方が一つ増えるはずです。

【参考文献】

サウナストーブの種類・仕組み:

  • 公益社団法人 日本サウナ・スパ協会「サウナ設備基準」 https://www.sauna.or.jp/ ※ガス式(遠赤外線型)、電気式(対流型)、薪式の分類と構造、ボナサーム(格納式)の仕様。商業施設でのガス式の普及率が高い理由(電気式比50〜60%の燃費優位性)
  • 一般社団法人 日本サウナ総研「サウナ室の設計と設備」 https://saunasouken.jp/ ※サウナストーブの選定基準、サウナ室の容積とストーブ出力の関係

漏電リスク・電気安全:

  • 経済産業省「電気用品安全法(PSE)」 ※日本国内で販売・使用される電気式サウナストーブはPSE認証が必要。菱形PSEマーク(特定電気用品)の対象
  • 一般社団法人 日本電気協会「内線規程」 ※サウナ室のような高温・高湿度環境における電気設備の設置基準、漏電遮断器(ELB)の設置義務、接地(アース)の基準
  • 電気事業法施行規則 ※漏電遮断器の動作基準(感度電流30mA、動作時間0.1秒以内)、電気設備の定期点検義務

ロウリュ対応・非対応ストーブの安全設計:

  • Harvia(ハルビア)社 公式技術資料 https://harvia.com/ ※ロウリュ対応モデルのヒーターエレメント防水設計、ストーンの積み方による水の到達経路の制御
  • MISA(ミサ)社、HELO(ヘロ)社 各製品仕様書 ※ロウリュ非対応モデルに水をかけた場合の故障・漏電リスクに関する注意書き

「水かけ禁止問題」の業界動向:

  • 株式会社アクトパス 温浴未来研究会「水かけ禁止問題」(2021年4月) https://club.aqutpas.co.jp/?p=3092 ※ロウリュ非対応ストーブへの水かけによる漏電・故障の実態、施設側の対応策(ストーブガードの設置、ロウリュ対応ストーブへの入れ替え、セルフロウリュのルール整備)、水かけ問題の背景分析

セルフロウリュの安全運用:

  • 公益社団法人 日本サウナ・スパ協会「温浴施設の安全管理指針」 https://www.sauna.or.jp/ ※セルフロウリュの運用ルール(頻度制限、水量制限、砂時計の設置)、蒸気による火傷の防止策(長柄の柄杓の使用)

サウナストーンの管理:

  • Harvia社「サウナストーンの取り扱いガイド」 ※ストーンの交換目安(使用頻度に応じて半年〜1年)、劣化したストーンの落下によるエレメント損傷リスク、ストーンの積み方(空気の通り道の確保)

蒸気による火傷:

  • 消費者庁「やけどに御注意ください」 https://www.caa.go.jp/ ※蒸気(水蒸気)は同温度の熱湯よりも熱量が大きく、火傷の重症度が高くなる原因

ガスストーブの安全管理:

  • 一般社団法人 日本ガス協会「ガス機器の安全な使い方」 https://www.gas.or.jp/ ※ガス式サウナストーブの燃焼安全装置、換気の必要性、不完全燃焼のリスク

ひねこじた 温泉

温浴施設で働く現役スタッフ。ガイドブックに載らない温泉の裏側を施設スタッフ目線で発信しています。

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