温泉と一口に言っても、その中身は施設ごとに大きく異なります。 「お湯がやわらかい」「体がぽかぽかする」「肌がつるつるする」などの違いは、温泉に含まれる成分(泉質)によるものです。
日本では環境省の「鉱泉分析法指針」に基づき、療養泉の泉質は10種類に分類されています。 この記事では、温泉施設や現場でよく話題になる代表的な泉質について、特徴を中心にわかりやすく解説します。
温泉成分(泉質)とは何か
温泉成分とは、地下から湧き出たお湯に含まれる溶存物質やガス成分のことを指します。 一定の条件(温度や成分量)を満たしたものが「療養泉」として認められ、その成分構成によって泉質が分類されます。
泉質は主に以下の3つの視点で分類されます。
- 含まれる主成分の種類
- 成分の量
- お湯の性質(酸性・アルカリ性など)
一般の利用者が目にする「〇〇泉」という表記は、このうち主成分による分類です。
なお、現在の10種類は2014年(平成26年)の鉱泉分析法指針改訂で整理されたもので、それ以前の「含アルミニウム泉」「含銅-鉄泉」などは大部分が含鉄泉に統合され、塩化物泉に含まれていた含よう素泉が独立する形となりました。
10種類の泉質一覧
① 単純温泉
単純温泉は、刺激の少ない成分構成が特徴です。 溶け込んでいる成分量が比較的少なく、無色透明でにおいも弱い場合が多い泉質です。
現場では「クセがないお湯」「入りやすいお湯」と言われることが多く、年齢を問わず利用しやすいのが特徴です。
長時間の入浴や繰り返しの利用でも体への負担が少ないとされ、観光地の温泉や日帰り温泉施設でもよく見られます。
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② 塩化物泉
塩化物泉は、ナトリウムイオンと塩化物イオンを主に含む温泉で、いわゆる「食塩泉」と呼ばれることもあります。 入浴後に体の表面に塩分が残りやすく、保温感が続きやすいと感じる人が多い泉質です。
湯冷めしにくいことから、寒冷地の温泉や冬場に好まれる傾向があります。 施設側では、配管や金属部分への影響を考慮する必要がある成分でもあります。
③ 炭酸水素塩泉
炭酸水素塩泉は、いわゆる「重曹泉」と呼ばれることもある泉質です。 皮脂や汚れを落としやすい性質があり、入浴後に肌がなめらかに感じられることがあります。
現場では「お湯がやわらかい」「肌触りがいい」と言われることが多く、女性客からの人気が高い傾向があります。
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④ 硫酸塩泉
硫酸塩泉は、硫酸イオンを多く含む温泉です。 比較的さっぱりとした浴感で、関節部位の温まりを実感しやすいと言われています。
無色透明な場合が多く、見た目では単純温泉と区別がつきにくいこともありますが、成分分析表を見ると違いがはっきりします。
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⑤ 二酸化炭素泉(炭酸泉)
炭酸泉は、二酸化炭素を多く含む温泉です。 湯の中で細かい気泡が肌に付着するのが特徴です。
温度が低めでも体が温まりやすいと感じられることがあり、近年は人工炭酸泉も多くの施設で導入されています。 天然炭酸泉は管理が難しく、湧出条件や設備維持に注意が必要な泉質です。
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⑥ 含鉄泉
含鉄泉は、温泉水1kg中に総鉄イオンが20mg以上含まれる温泉です。 かつての「鉄泉」「緑ばん泉」が統合された泉質で、陰イオンの種類によって炭酸水素塩型と硫酸塩型に分けられます。
現場で目を引くのは、その色の変化です。 湧き出した直後は無色透明に近いのに、空気に触れて時間が経つと赤褐色や濁った茶色に変わっていく——これは溶けていた鉄が酸素と反応して水酸化鉄として沈殿するためで、源泉周辺の岩肌が赤く染まっているのもこの現象によるものです。
浴槽や配管に鉄分が析出しやすいため、施設側では清掃や設備管理に手間がかかる泉質でもあります。 入浴前と入浴後で湯の色がはっきり違う、というのは含鉄泉ならではの光景です。
関連記事:含鉄泉とは?|お湯が茶色くなる理由と「鉄の湯」の効能を現場スタッフが解説
⑦ 酸性泉
酸性泉は、pH値が低く、酸性度の高い温泉です。 殺菌力が強いとされる一方、肌への刺激を感じる場合もあります。
施設では注意喚起表示を行うことが多く、長時間入浴や敏感肌の利用には配慮が必要とされています。
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⑧ 含よう素泉
含よう素泉は、温泉水1kg中によう化物イオンが10mg以上含まれる温泉で、2014年の改訂で新たに独立した泉質です。 それ以前は塩化物泉に括られていましたが、性質が独特なため別分類となりました。
特徴は、非火山性の温泉に多いこと。 火山地帯の地熱で湧き出すお湯ではなく、堆積岩層に長い年月閉じ込められていた古い海水(化石海水)由来の温泉に多く見られる泉質です。秋田や東京・千葉などの非火山地帯で見つかるのは、こうした地質的な背景があります。
湧き出した直後は薄い色でも、空気に触れて時間が経つと黄色〜茶褐色、ときに黒に近い色に変色していくのが現場での特徴です。 飲用で高コレステロール血症への効能が示されている、療養泉の中でも比較的珍しい泉質です。
⑨ 硫黄泉
硫黄泉は、硫黄成分を含む温泉で、独特のにおいが特徴です。 白濁や淡い色がつく場合もあり、「温泉らしさ」を強く感じる泉質の一つです。
成分が揮発しやすく、空気に触れることで変質しやすいため、現場では換気や設備管理に気を配る必要があります。
⑩ 放射能泉(ラドン泉)
放射能泉は、微量の放射性物質(ラドンなど)を含む温泉です。 日本では法律に基づいた安全基準の範囲内で管理されています。
無色無臭の場合が多く、見た目や浴感では判断しにくい泉質です。 10種類の泉質の中で、唯一「痛風(高尿酸血症)」が浴用の適応症に含まれている点も特徴です。
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温泉成分を知ることで楽しみ方が変わる
泉質10種類の特徴を知ると、 「今日はさっぱりしたお湯に入りたい」 「湯冷めしにくい温泉を選びたい」 といったように、目的に合わせた温泉選びがしやすくなります。
また、成分表示を見ることで、その温泉がどんな特徴を持っているのかを理解でき、入浴体験そのものがより深いものになります。
関連記事:温泉の効能は本当に効くの?|リウマチ・神経痛など疾患別に解説
まとめ
温泉成分は、見た目だけでは分からない重要な要素です。 2014年の改訂で整理された10種類の泉質は、それぞれに特徴があり、管理方法や浴感も異なります。
現場を知る立場としても、成分の違いを正しく理解しておくことは、利用者への説明や施設運営において大きな意味を持ちます。
温泉は「どこで入るか」だけでなく、「どんな成分のお湯に入るか」で楽しみ方が変わるものです。
【参考文献】
・環境省 あんしん・あんぜんな 温泉利用のいろは
・環境省 鉱泉分析法指針(平成26年改訂)











