「温泉でリフレッシュするはずが、帰ってきたらぐったり…」そんな経験、ありませんか?
休みに来たはずなのに、なぜか疲れる。温浴施設で働いていると、この声は本当によく聞きます。季節でいうと、いちばん多いのは冬の入り口です。
この記事では、温泉で疲れる理由を体の仕組みから整理したうえで、冬の始まりに疲れやすくなるわけと、疲れない入り方を現場スタッフの目線でまとめます。
※体調に関する内容は一般的な情報です。感じ方には個人差があります。持病のある方や症状が強い場合は、医師にご相談ください。
温泉で疲れる主な原因
先にお伝えしておくと、お湯に浸かっているだけで使うエネルギーは、運動と比べれば大きくありません。それでも疲れるのは、体の中で「調整」の仕事がたくさん起きているからです。
体温を一定に保つための負担
湯に浸かると体温が上がり、体は汗をかいたり血管を広げたりして熱を逃がそうとします。熱いお湯ほど、長く入るほど、この働きはフル稼働になります。
政府広報オンラインでは、42℃のお湯に10分入ると体温が38℃近くまで上がるとされています。軽い発熱と同じくらいの状態です。湯上がりのだるさの多くは、この「熱を逃がす仕事」の反動だと考えてください。
汗による水分不足
湯の中にいると気づきにくいのですが、入浴中も体はしっかり汗をかいています。水分が足りなくなると、だるさや頭痛、立ちくらみが出やすくなります。環境省も、入浴の前後に水分補給をするよう呼びかけています。
何を飲めばいいか迷う方は、サウナドリンクのおすすめ|オロポ・アクリ・リポスパの違いと飲むタイミングも参考にしてみてください。温泉でも考え方は同じです。
血圧の上下
寒い場所では血管が縮んで血圧が上がり、湯で温まると血管が広がって血圧が下がります。さらに、湯から勢いよく立ち上がると、脳へ行く血液が一時的に足りなくなって立ちくらみが起こります。
この上下を1日に何度も繰り返すと、それだけで体は消耗します。
長湯と入浴の繰り返し
「せっかく来たから」と何度も浴槽を往復したり、休憩をはさまずに入り続けたりすると、体の回復が追いつきません。現場で「疲れた」とおっしゃる方の多くは、このパターンです。
移動や観光の疲れ
温泉旅行の場合、疲れの原因はお湯だけではありません。移動、観光、食べ過ぎ、慣れない寝具。これについては後半でまとめます。
冬の入り口は「温泉で疲れる」人が増える
ここからは現場の話です。私の感覚では、体調を崩すお客様がいちばん目立つのは、真冬よりも冬の初め、急に冷え込んできた頃です。温泉でのぼせるとは?の記事でも触れましたが、救急搬送が起きやすいのも冬場です。
現場でよく見る3つの場面
一つめは、脱衣所でふらついて、ベンチに座り込んでいる方です。浴室から出て体を拭いている途中や、服を着ようとしているタイミングが多いです。
二つめは、露天風呂に長く浸かっていて、立ち上がった瞬間にふらつく方です。冬の露天は顔に当たる空気が冷たくて気持ちいいので、つい長湯になります。
三つめは、湯上がりに休憩所でぐったり横になっている方です。入浴中は平気だったのに、少し時間がたってからだるさが来るパターンです。
なぜ冬の初めに増えるのか
理由は大きく3つあると考えています。
まず、温度差です。寒い脱衣所や外気で冷えた体が、熱い湯に入る。湯から上がって、また寒い場所へ出る。先ほど書いた血圧の上下が、冬はより大きく、より急になります。消費者庁も、冬に入浴中の事故が増える原因として、寒暖差による急な血圧の変動と、熱い湯に長く浸かることによる体温上昇を挙げています。
次に、露天風呂の長湯しやすさです。首から上が冷たい空気に当たっているので、体はかなり温まっていても「熱い」と感じにくいんです。気づいたら20分、30分と浸かっていて、立ち上がった瞬間にふらっと来ます。
最後に、水分です。冬は汗をかいた実感が薄いので、飲み物をとらずに入り続ける方が多い印象です。夏より油断しやすいぶん、かえって危ないと感じています。
もうひとつ付け加えると、冷え込み始めの時期は「寒いから熱い湯でしっかり温まろう」という入り方になりがちです。体がまだ寒さに慣れていないところに、熱い湯と長湯が重なる。これが冬の入り口に不調が増える一番の理由だと、現場では感じています。
施設の側で起きていること
冬は施設の側も大変です。露天風呂は湯面からどんどん熱が逃げるので、湯温を保つための加温の負担がぐっと上がります。お湯の温め方については温泉はどうやって温めている?、源泉の温度との関係は源泉温度についての記事で詳しく書いています。
ただ、施設が湯温を管理していても、内湯・露天・脱衣所の温度差そのものはゼロにはできません。そこはお客様ご自身の入り方で調整していただくしかない部分です。
具合が悪くなった方への対応
ふらついている方や、ぐったりしている方を見つけたら、スタッフはまず声をかけます。意識がはっきりしていれば、休憩所やレストランで横になったり座ったりして、しっかり休んでいただいてから帰っていただきます。
意識がない、呼びかけへの反応がおかしい、という場合は迷わず119番通報です。周りのお客様も、様子のおかしい人を見かけたら、すぐに近くのスタッフへ知らせてください。
ご自身がふらついたときは、着替えを急がず、その場で座るか横になって、スタッフを呼んでください。ふらつきが残ったまま車を運転して帰るのは避けましょう。
冬の温泉で疲れないコツ
- 露天風呂は「何分まで」と先に決めてから入る
- 浴槽からはゆっくり立ち上がる。手すりや浴槽の縁を使う
- 脱衣所では体をしっかり拭いて、急がずに着替える
- 入浴前と湯上がりに水分をとる(喉が渇いていなくても)
- 熱い湯で一気に温まろうとしない
消費者庁は、冬の入浴の目安として湯温41℃以下、浸かる時間は10分までを挙げています。主に家庭のお風呂での高齢者向けの目安ですが、温泉でも参考になる数字です。
泉質と湯温による疲れやすさの違い
硫黄泉・酸性泉は刺激が強い
硫黄泉や酸性泉は刺激の強い泉質で、肌や粘膜への負担も大きめです。環境省も、皮膚や粘膜が敏感な人と、皮膚乾燥症のある高齢の人は、酸性泉・硫黄泉に入らないよう示しています。慣れていない方は短めを心がけてください。
42℃以上の高温は消耗が大きい
熱いお湯ほど体温は早く上がり、体への負担も大きくなります。環境省は、高齢者や高血圧・心臓病の方、脳卒中を経験した方は42℃以上の高温浴を避けるよう呼びかけています。
単純温泉は比較的マイルド
単純温泉は成分が薄く刺激が少ないため、体への負担も比較的小さい泉質です。
炭酸泉はぬるくても長湯になりやすい
炭酸泉はぬるめの設定が多く、つい長く入ってしまいがちです。ぬるくても長湯すれば疲れるので、時間は意識してください。
施設での過ごし方と、疲れやすい人
疲れにつながりやすい過ごし方は、次のとおりです。
- 休憩をはさまずに何度も入浴する
- 食事の直前・直後や、お酒を飲んだ後に入る
- 運動した直後に入る
- 温泉とサウナを休憩なしで往復する
環境省も、食事の直前・直後や飲酒後の入浴、過度に疲れているときや運動後30分以内の入浴は控えるよう示しています。サウナでの不調についてはサウナで気持ち悪くなる理由で詳しく解説しています。
また、普段あまり運動しない人、高齢の方、寝不足や風邪気味で体調がよくないときは、同じ入り方でも疲れやすくなります。高齢の方やお子さんは、1人きりでの入浴も避けたほうが安心です。
温泉で疲れない入り方
環境省の目安では、慣れるまでは1回3〜10分くらいを1〜2回、慣れてきたら15〜20分くらいを2〜3回とされています。まずは短めから始めて、体の反応を見ながら延ばしていくのが基本です。
- 一度に長く入らず、途中で湯から出て休む(分割浴)
- 入浴前・休憩中・湯上がりに水分をとる
- 入浴と入浴の間は、休憩所でしっかり休む
- 38〜40℃くらいのぬるめの浴槽を中心に使う
- 湯上がりはすぐに動かず、体の熱が落ち着くまで休む
- 寝る直前の熱い湯・長湯は避ける
いちばん大事なのは、「せっかく来たから元を取らなきゃ」という気持ちを手放すことです。適度に楽しんで、元気に帰る。これを目標にしてください。基本の入り方は温泉の正しい入り方にまとめています。
疲労・のぼせ・湯あたりの違い
温泉での体調不良は、混同されやすいものが3つあります。
| 項目 | 疲労 | のぼせ | 湯あたり |
|---|---|---|---|
| 出るタイミング | 入浴後〜翌日 | 入浴中〜直後 | 数時間後〜翌日。湯治では数日後のことも |
| 主な症状 | だるさ、眠気 | めまい、立ちくらみ、吐き気 | だるさ、頭痛、不眠、胃腸の不調 |
| 主な原因 | 体温調節、水分不足、入りすぎ | 体温の上昇、血圧の変化 | 温泉の刺激に対する体の反応 |
| 緊急度 | 低い | 高い(転倒・溺水の危険) | 低〜中 |
| 対処 | 休息と水分補給 | すぐに湯から出て、涼しい場所で横になる | 入浴を中止するか、回数を減らす |
のぼせは入浴中や直後に急に来るのが特徴で、転倒や溺水につながるため最も注意が必要です。意識がおかしいときは119番通報してください。詳しくは温泉でのぼせるとは?をご覧ください。
湯あたりについて、環境省は温泉療養を始めておおむね3日〜1週間前後に、気分の不快感や不眠、胃腸の症状などが出ることがあるとしています。詳しくは温泉の湯あたりとは?をご覧ください。
自分がどれに当てはまるかわからないときは、温泉に入ったら気分が悪くなった|湯あたり・のぼせ・熱中症の見分け方から確認してみてください。
温泉旅行全体の疲れ

長時間の移動、観光での歩き疲れ、食べ過ぎ・飲み過ぎ、慣れない寝具や部屋の環境。温泉旅行の疲れは、お湯以外のこうした要素が積み重なった結果でもあります。

日程を詰め込みすぎない、夜は早めに休む、お酒は控えめにする。お湯の入り方と同じくらい、こちらも効きます。
まとめ
温泉で疲れるのは、お湯そのものより、体温調節・水分不足・血圧の上下といった「体の調整仕事」が積み重なるからです。そして冬の入り口は、温度差と長湯と水分不足が重なって、体調を崩す方がぐっと増えます。
露天は時間を決める、ゆっくり立つ、水を飲む、休憩をしっかりとる。この4つだけでも、帰り道の疲れ方はかなり変わるはずです。ほかの困りごとは温泉で困ったときの対処法まとめから探せます。
参考文献
- 環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」https://www.env.go.jp/content/900492872.pdf
- 消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_042
- 消費者庁「コラムVol.12 高齢者の事故 ―冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意―」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20241219/
- 政府広報オンライン「交通事故死の約3倍?!冬の入浴中の事故に要注意!」https://www.gov-online.go.jp/article/202111/entry-9952.html







