チムジルバンとは?|韓国式サウナと日本の温泉の違いをよくある誤解とあわせて現場スタッフが解説

入り方・サウナ

チムジルバン」という言葉を、韓国ドラマや旅行番組で耳にしたことはないでしょうか。館内着を着た人たちが広間でごろごろしたり、タオルを羊の角のように巻いて写真を撮っていたり——あの独特の空間が、韓国の代表的な入浴文化であるチムジルバンです。

近年は日本国内にもチムジルバンを取り入れた施設が増え、韓国からのお客様が日本の温泉を訪れる機会も多くなりました。「日本の温泉とチムジルバンって何が違うの?」という疑問も浮かんできます。同じ「お風呂で汗をかく文化」でありながら、その中身はけっこう違います。

この記事では、温浴施設の現場スタッフの視点から、チムジルバンとは何か、日本の温泉やサウナと何が違うのかを整理します。あわせて、日本人が抱きがちな誤解、そして韓国からのお客様が日本の温泉に対して抱きがちな誤解の、両方向のギャップにも触れていきます。

チムジルバンとは?|韓国式の総合温浴施設

チムジルバン(찜질방)は、韓国語で「蒸し風呂の部屋」といった意味を持つ言葉です。低温から高温までさまざまな温度の「汗蒸幕(ハンジュンマク)」的なサウナ部屋が並び、館内着を着て自由に行き来しながら過ごす、韓国の温浴施設を指します。

大きな特徴は、単なるお風呂屋さんではなく「一日過ごせる総合レジャー施設」だという点です。浴場やサウナに加えて、大きな共有スペース(広間)、食堂、マンガコーナー、仮眠室などを備えていることが多く、家族や友人と長時間滞在して楽しむのが一般的なスタイルです。24時間営業の施設も多く、韓国では宿泊代わりに利用されることもあります。

チムジルバンの基本的な流れ

典型的な過ごし方はこうです。まず受付で館内着とタオルを受け取り、男女別の浴場で体を洗って湯船に浸かります。そのあと館内着に着替え、男女共用のチムジルバンエリアへ。ここからが本番で、温度の違うサウナ部屋を巡りながら、合間に広間で寝転んだり、食堂で食事をとったりして過ごします。

「浴場は男女別、汗をかくエリアは男女共用」という構造は、日本の岩盤浴とよく似ています。岩盤浴の入り方や楽しみ方については、温泉の岩盤浴とは?|サウナとの違い・入り方・水分補給のコツを現場スタッフが解説で詳しく解説しています。

なぜ韓国でこの文化が根づいたのか

チムジルバンが韓国でこれほど生活に密着した理由のひとつに、伝統的な蒸し風呂の文化があります。韓国では古くから、熱した石や土の部屋で汗をかいて体を整える習慣がありました。その流れをくむ形で、現代的な設備と大衆的な料金設定を組み合わせた施設として広まったのがチムジルバンです。

加えて、家族や友人と一緒に長時間過ごせる場という性格が、レジャーとしての需要にうまく合致しました。日本の温泉が「静かに湯に浸かる個の時間」を大切にしてきたのに対し、チムジルバンは「みんなで過ごす賑やかな時間」を許容する空間として発展した——この対比は、両国の入浴文化の性格をよく表しています。

日本の温泉とチムジルバンの違い

では、日本の温泉施設と具体的に何が違うのでしょうか。いくつかの軸で比べてみます。

目的の違い|「浸かる」か「汗をかく」か

日本の温泉は、湯船に浸かることが中心です。源泉の泉質を味わい、じっくり温まる。主役はあくまで「お湯」です。一方チムジルバンは、サウナ部屋で汗をかくことが中心。お風呂はその前段階、という位置づけの施設も少なくありません。主役は「」なのです。

お湯の位置づけ|温泉かどうかは問わない

日本では「温泉であること」に大きな価値が置かれ、泉質源泉かけ流しかどうかが語られます。チムジルバンでは、温泉であるかどうかは必ずしも重視されません。もちろん温泉を引いている施設もありますが、多くは沸かし湯で、それが特に問題視されることはありません。この点は、泉質を細かく気にする日本の温泉文化との大きな違いです。

滞在時間とスタイル

日本の温泉は「入って、上がって、少し休んで帰る」という利用が中心で、滞在は1〜3時間程度が一般的でしょう。チムジルバンは半日から一日、場合によっては泊まりがけで過ごす前提の作りになっています。広間で雑魚寝したり、食事をしたり、ドラマを観たりと、過ごし方の自由度が高いのが特徴です。

男女で一緒に過ごせるかどうか

日本の温泉は基本的に男女別で、家族や友人と一緒に過ごせるのは休憩処など限られた場所です。チムジルバンは館内着エリアが男女共用なので、家族や恋人同士で長時間一緒に過ごせます。この「一緒に過ごせる」点が、韓国でチムジルバンが日常的なレジャーとして根づいた大きな理由のひとつです。

温度帯の幅

日本のサウナは80〜100度前後の高温が中心ですが、チムジルバンは40度台の低温部屋から、90度を超える高温部屋まで、複数の温度帯の部屋が並んでいるのが一般的です。塩を敷いた部屋、炭を使った部屋、黄土の部屋など、素材ごとに部屋が分かれていることも多く、巡り歩く楽しさがあります。日本のサウナの入り方は、サウナの正しい入り方|初心者でも「ととのう」ための手順とコツを現場スタッフが解説もあわせてどうぞ。

日本人が抱きがちな誤解

チムジルバンについて、日本ではいくつかの誤解が見られます。

誤解1|「チムジルバン=あの羊タオルの文化」

タオルを羊の角のように巻く「ヤンモリ(羊頭)」は、チムジルバンの象徴として有名になりました。ただ、これは必須の作法でも儀式でもなく、単に濡れた髪をまとめるための実用的な巻き方が定着したものです。全員がやっているわけでもありません。「やらないといけない」と身構える必要はまったくないのです。

誤解2|「サウナと同じでしょ?」

チムジルバンを「韓国のサウナ」と一言でまとめてしまうと、実態からはずれます。サウナ部屋は要素のひとつに過ぎず、実際には広間で過ごす時間、食べる時間、眠る時間まで含めた総合的な滞在文化です。日本でいえば、サウナと岩盤浴と休憩処と食堂を全部合わせたようなイメージが近いでしょう。

誤解3|「汗蒸幕とチムジルバンは同じもの」

汗蒸幕(ハンジュンマク)は、伝統的な高温のドーム型サウナを指す言葉で、チムジルバンの中にある設備のひとつ、あるいは独立した専門施設です。チムジルバンという施設全体と、汗蒸幕という設備は、イコールではありません。

誤解4|「日本の温泉より安い」

チムジルバンは比較的リーズナブルなイメージがありますが、日本国内でチムジルバンを取り入れた施設は、館内着や複数の部屋を備えるぶん、通常の入浴料に追加料金がかかることが多いです。この構造は日本の岩盤浴と同じで、「別料金」が基本と考えておくとよいでしょう。

韓国からのお客様が日本の温泉に抱く誤解

逆に、韓国のお客様が日本の温泉に対して抱きがちなギャップもあります。現場でよく感じるのは次のような点です。

まず、「日本の温泉にも広間や食堂があって長時間過ごせるはず」という期待です。施設によってはありますが、こじんまりした温泉ではお風呂だけ、という場合も多く、想定より滞在の選択肢が少ないと感じられることがあります。

また、「アカスリは当然あるもの」と思っている方もいます。韓国では浴場にアカスリ(セシン)のサービスが併設されているのが一般的ですが、日本では導入している施設は限られます。

入浴マナーについては、韓国にも公衆浴場文化があるため、体を洗ってから湯船に入るという基本は共有されています。この点で戸惑いが少ないのは、欧米圏のお客様との大きな違いです。外国人のお客様への対応については、温浴施設の外国人対応|言葉の壁をどう越える?現場のリアルな工夫を解説でも紹介しています。

日本でチムジルバンを楽しむには

日本国内にも、チムジルバンや韓国式サウナを取り入れた施設が増えています。楽しむときのポイントをいくつか挙げておきます。

まず、時間に余裕を持って行くこと。短時間で切り上げるより、複数の部屋を巡り、休憩を挟みながらゆっくり過ごすほうが、この文化の良さを味わえます。次に、水分補給をこまめに行うこと。汗をかく時間が長くなるため、脱水には注意が必要です。

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そして、無理をしないこと。高温の部屋に長く居続けるより、低温の部屋と休憩を組み合わせるほうが快適です。温熱による体への反応には個人差があり、気分がすぐれないときは無理をせず、体調に不安がある場合は医療機関など専門家に相談してください。基本的な入浴の流れは、温泉の正しい入り方|マナーと健康的な入浴手順を現場スタッフが解説も参考になります。

まとめ|似ているようで、目指すものが違う

チムジルバンは、館内着を着て複数の温度帯のサウナ部屋を巡り、広間や食堂で長時間過ごす韓国式の総合温浴施設です。日本の温泉が「お湯に浸かること」を中心に据えているのに対し、チムジルバンは「汗をかき、みんなで過ごすこと」を中心に据えている——ここが最大の違いです。

羊タオルは必須の作法ではなく、汗蒸幕はチムジルバンの一部。こうした誤解を解いておくと、実際に訪れたときの体験がぐっと自然になります。どちらが優れているという話ではなく、風土や生活習慣の中で育った、それぞれの温浴文化です。違いを知ったうえで両方を楽しめたら、お風呂の時間はもっと豊かになるはずです。

参考文献

  • 厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領等について」 https://www.mhlw.go.jp/topics/2001/0111/tp1106-1.html
  • 厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について(令和元年9月19日)」
  • 環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」
  • 韓国観光公社(Visit Korea)公式サイト「韓国の温浴文化に関する紹介情報」 https://japanese.visitkorea.or.kr/

ひねこじた 温泉

温浴施設で働く現役スタッフ。ガイドブックに載らない温泉の裏側を施設スタッフ目線で発信しています。

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