サウナのアウフグースと熱波師とは?|専属スタッフの世界とサウナ室の定員

入り方・サウナ

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サウナ室に大きなタオルを持ったスタッフが入ってきて、勢いよく風を送る——アウフグースの光景は、いまや多くの温浴施設でおなじみになりました。決まった時間になると、その回を目当てにサウナ室が満員になることも珍しくありません。

風を送る人を「熱波師(ねっぱし)」と呼びます。近年はこの役割が専門職として確立してきており、施設に専属のアウフギーサーがいるところ、熱波師として求人を出しているところも増えてきました。

この記事では、温浴施設で働く現場スタッフの視点から、アウフグースと熱波師の世界を解説します。あわせて、意外と知られていない「サウナ室には定員がある」という利用上の注意についてもお伝えします。

アウフグースとは|熱波を送るサービス

アウフグース(Aufguss)はドイツ語で、もともとは「注ぐ」という意味の言葉です。熱したサウナストーンに水(またはアロマ水)をかけて蒸気を発生させ、その熱気をタオルなどであおいで利用者に届けるサービスを指します。

蒸気で室内の湿度が上がると体感温度が跳ね上がり、そこへ風が加わることで、一気に強い熱さを感じます。じっと座っているだけのサウナとはまったく別の体験になるのが特徴です。

ベースにあるロウリュの仕組みについては、サウナのロウリュとは?|アロマ水・アロマストーンの仕組みと水かけの漏電リスクを現場スタッフが解説で詳しく解説しています。ロウリュが「蒸気を発生させること」で、アウフグースは「その熱気を風として届けるところまで」を含んだサービス、と整理すると分かりやすいでしょう。

日本の「熱波」とドイツの「ショーアウフグース」

日本ではこのサービスを「熱波」と呼ぶことが多く、担当者を熱波師と言います。ドイツを中心とした本場では、音楽や照明、パフォーマンスを組み合わせた「ショーアウフグース」として発展しており、エンターテインメント性が非常に高いものです。

日本でも近年、こうしたショー形式を取り入れる施設が増えてきました。大会やイベントも開催されており、熱波師が観客を魅了する競技として成立しつつあります。

熱波師という仕事

タオルを振るだけの単純な仕事に見えるかもしれませんが、実際にはそうではありません。

専属のアウフギーサーがいる施設

サウナに力を入れている施設では、熱波を専門に担当するスタッフを置いています。決まった時間に複数回のアウフグースを実施し、その施設の看板として名前が知られている熱波師もいます。

「あの人の熱波を受けたいから、この施設に行く」という動機で来館するお客様も実際にいます。設備だけでなく、人が集客の核になる——これは温浴業界では比較的新しい現象です。

一方、専属を置かず、通常業務のスタッフが持ち回りで担当している施設もあります。規模やコンセプトによって体制はさまざまです。

求められるのは体力だけではない

高温のサウナ室で、大きなタオルを何分も振り続ける。体力が要る仕事であることは間違いありません。しかし、それ以上に重要なのが安全管理の意識です。

サウナ室の温度や湿度は毎回違います。その日の利用者の年齢層、体調、混雑具合も変わります。熱波師には、空気を読み、お客様の様子を観察し、危険を察知して、状況に応じて風の強さや時間を調整する判断力が求められます。

「気持ちよく整ってもらう」ことと「安全に終える」ことを両立させる。この二つを同時に成立させるのが、熱波師の本質的な仕事です。

途中で出ることを伝える

優れた熱波師ほど、開始前に必ず「無理せず、つらくなったら遠慮なく出てください」と伝えます。演出に集中するあまり、この一言を省略してはいけません。

アウフグースは通常のサウナより体への負荷が大きくなります。周囲が我慢しているように見えると、途中退室しづらい空気が生まれがちです。だからこそ、送り手側が最初に「出ていい」と明言することに意味があります。

熱波師になるには

興味を持つ方も増えているので、なり方についても触れておきます。

必須の国家資格はない

熱波師になるために法的に必要な資格はありません。ただし、業界内で広く知られているのが、日本サウナ熱波アウフグース協会(JSNA)が実施する「熱波師検定」です。

この検定はB級、ステップアップセミナー(SUS)、A級という段階に分かれており、座学と実技を経て認定証が発行されます。タオルの振り方だけでなく、サウナの基礎知識や安全管理も学ぶ内容になっています。

施設によっては、アマチュア向けの熱波体験に参加する条件として、検定Bの取得を求めているところもあります。

求人は実在する

「熱波師募集」という形で求人を出している施設もあります。ただし、多くの場合は熱波専任として採用されるのではなく、温浴施設のスタッフとして入り、業務の一環として熱波を担当する形です。

実際の流れとしては、清掃やフロント業務など施設運営の基本を覚えながら、先輩の指導のもとでサウナ室での立ち振る舞いを身につけていく——というのが一般的です。いきなり看板熱波師になれるわけではありません。

温浴施設の仕事全般については、温泉スタッフの仕事内容|現場スタッフが1日の流れを解説もあわせてご覧ください。熱波はあくまで業務の一部であり、施設運営には清掃も設備管理も接客も含まれます。

フリーランスという道も

経験を積んで名前が知られるようになると、特定の施設に所属せず、各地の施設へ出向いてイベントを行うフリーランスの熱波師として活動する人もいます。SNSでの発信がファン獲得につながる、という現代的な側面もある職業です。

サウナ特化型施設の増加

ここ数年、業界で大きく変わったのがこの点です。

従来、サウナは温浴施設の一設備という位置づけでした。大浴場があって、その隣にサウナがある。そういう構成が一般的だったのです。

ところが近年、サウナを主役に据えた施設が次々と登場しています。複数のサウナ室を備え、水風呂の温度にこだわり、外気浴スペースを充実させ、アウフグースを目玉に据える。浴槽よりもサウナに投資する、という発想の施設です。

なぜ増えたのか

背景には、サウナ人気の高まりがあります。「ととのう」という言葉が広く知られ、サウナを目的に施設を選ぶ層が増えました。この層は、泉質よりもサウナ室の温度、水風呂の冷たさ、外気浴の環境を重視します。

施設側から見れば、温泉を掘るには莫大な費用がかかりますが、サウナ設備であれば比較的導入しやすいという事情もあります。差別化の方向として、サウナに振り切るのは合理的な選択なのです。

水風呂へのこだわり

サウナ特化型施設では、水風呂の温度設定が重要な売りになります。10度台前半の「シングル」を用意する施設もあれば、複数の温度帯を用意する施設もあります。この冷たさは自然に保たれているわけではなく、チラーという冷却装置が冷水を循環させ続けることで実現しています。設備面の全体像は温泉設備の仕組み完全ガイド|ろ過・加温・消毒・循環設備をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。

ただし、冷たければ冷たいほどよいというものでもありません。シングルのような強冷は上級者向けで、初めての方には負担が大きすぎます。水風呂が苦手な方は、水風呂が怖い・冷たくて入れない|サウナ初心者が苦手を克服するための入り方と対処法もあわせてご覧ください。無理に冷たい水風呂に挑戦する必要はまったくありません。

【要注意】サウナ室には定員がある

ここが、この記事でぜひ知っておいていただきたい点です。

アウフグースの時間になると、サウナ室に人が集まります。人気の熱波師の回であれば、なおさらです。しかし、サウナ室には定員が定められています。

定員は安全のために決まっている

定員は、施設が適当に決めているわけではありません。室内の容積、ベンチの構造、避難経路の確保といった条件から設定されています。

定員を超えて詰め込めば、いくつもの問題が生じます。座る場所がなく無理な姿勢を取ることになる、人の熱で室温が想定以上に上がる、体調を崩した人がいても気づきにくい、そして何より緊急時に速やかに退出できない。

サウナ室は高温の密閉空間です。もし体調不良者が出たとき、人で埋まっていれば助けに入ることも運び出すこともできません。定員は、そうした事態を想定した安全上のラインなのです。

入れないときは無理をしない

アウフグースの回に間に合わなかった、すでに満員だった——そんなときは、無理に入ろうとせず次の回を待ってください。

スタッフが人数を制限したり、入場を断ったりすることがありますが、これは意地悪ではなく安全確保のためです。「せっかく来たのに」という気持ちは分かりますが、詰め込んだ結果として事故が起これば、全員にとって最悪の結果になります。

施設によっては、事前に整理券を配布したり、人数を区切って案内したりする運用をしています。こうした仕組みがある場合は、それに従うのがスムーズです。

ドアの近くを塞がない

定員内であっても、出入り口付近に立ったり座ったりして通路を塞ぐのは避けてください。途中で出たい人が出られなくなります。とくにアウフグース中は、つらくなった方がすぐ退出できる動線を確保しておくことが重要です。

アウフグースを楽しむための注意点

最後に、安全に楽しむためのポイントを整理します。

水分補給を必ず

アウフグースは通常のサウナより発汗量が増えます。参加前と後、しっかり水分をとってください。連続で複数回参加するようなときは、間の休憩と補給を意識的に挟みましょう。

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無理をしない

「最後までいなければ」と考える必要はまったくありません。熱さの感じ方には個人差があり、体調によっても変わります。少しでもつらいと感じたら、途中でも遠慮なく退出してください。周りを気にする必要はありません。

のぼせや体調変化については、温泉でのぼせるとは?|症状・原因・予防法と湯あたりとの違いもあわせてご覧ください。体調に不安がある場合は無理をせず、必要に応じて医療機関など専門家に相談することをおすすめします。

初めてなら上段を避ける

サウナ室は上段ほど熱くなります。アウフグースが初めてなら、まずは下段で体験してみるのが無難です。慣れてから上段に挑戦しても遅くありません。

水風呂へは慌てず

アウフグースを終えたあと、火照った体で一気に水風呂へ飛び込みたくなりますが、ここは慎重に。通常のサウナ以上に体温が上がっているぶん、急激な温度差の負担も大きくなります。

かけ水で体を慣らしてから、ゆっくり入る。これだけで負担はかなり変わります。水風呂が苦手な方は、無理をせず外気浴だけで休むという選択でも十分に整えます。

基本の入り方を押さえる

アウフグースはあくまでサウナの楽しみ方のひとつです。基本の入り方はサウナの正しい入り方で解説していますので、あわせてご覧ください。

しっかり整ったあとの食事も、サウナの大きな楽しみのひとつです。サウナ飯のおすすめやサウナドリンクもどうぞ。

まとめ

アウフグースは、蒸気を発生させた熱気をタオルなどであおいで届けるサービスで、それを行うのが熱波師です。近年は専属のアウフギーサーを置く施設が増え、その人の名前を目当てに来館するお客様もいるほど、専門職として確立してきました。

熱波師に必須の国家資格はありませんが、業界には熱波師検定という制度があり、求人も実在します。ただし多くの場合、施設スタッフとして働きながら熱波を担当する形になります。

そして近年目立つのが、サウナを主役に据えた特化型施設の増加です。サウナ室、水風呂、外気浴に投資し、アウフグースを目玉にする施設が各地に生まれています。

楽しむうえで忘れないでほしいのが、サウナ室には安全上の定員があるということ。満員のときは無理をせず次の回を待つ、出入り口を塞がない、つらくなったら遠慮なく出る。この配慮が、自分と周りの安全を守ります。

参考文献

  • 厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領等について」 https://www.mhlw.go.jp/topics/2001/0111/tp1106-1.html
  • 厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について(令和元年9月19日)」
  • 厚生労働省「入浴施設の衛生管理の手引き」
  • 日本サウナ熱波アウフグース協会(熱波師検定に関する情報) https://neppa.jp/
  • 各都道府県・市の公衆浴場法に基づく条例(施設の構造設備基準を含む)
ひねこじた 温泉

温浴施設で5年以上働く現役スタッフ。水質や塩素の管理、ろ過設備の運転など、お湯を支える仕事をしています。現場で身につけた知識をもとに、温泉の仕組みや困りごとを解説しています。

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