サウナで「ととのった」後、サウナドリンクで水分を補給して、休憩処のリクライニングシートで少しまどろんで——。
そして、お腹が鳴る。
サウナ後の食事、通称「サウナ飯(サ飯)」。サウナで大量の汗をかいた後の体は、水分だけでなく塩分やエネルギーも欲しています。この状態で食べるご飯が、信じられないほどおいしい。
温泉施設のお食事処で働いているスタッフに聞くと、「サウナ後のお客様は、がっつり系を注文する方が圧倒的に多い」とのこと。特にピリ辛系のメニューは、サウナで研ぎ澄まされた味覚にビシッとハマるようで、注文率が高いそうです。
この記事では、サウナ後にぴったりのメニュー、なぜサウナ後の食事がおいしいのか、そして施設ごとの名物メニューの楽しみ方を紹介します。
なぜサウナ後の食事はおいしいのか
味覚が鋭敏になっている
サウナ→水風呂→外気浴の「ととのい」状態では、副交感神経が優位になり、全身の感覚が鋭敏になっています。味覚も例外ではなく、普段よりも味を繊細に感じ取れる状態です。
同じメニューでも、サウナ後に食べると「いつもよりおいしい」と感じるのは、この味覚の変化が大きな理由です。
体が塩分を求めている
サウナで大量の汗をかくと、水分と一緒にナトリウム(塩分)が体外に排出されます。体が塩分を補給しようとしている状態なので、しっかりとした味付けの料理がたまらなくおいしく感じるのです。
ラーメンのスープを最後まで飲み干したくなるのも、カレーのルーをご飯にたっぷりかけたくなるのも、体が求めている証拠です。
エネルギーが消費されている
サウナでは体温調節のためにかなりのエネルギーが消費されています。2〜3セットのサウナを終えた後は、軽い運動をした後のような空腹感があります。この空腹感が、食事のおいしさをさらに引き立てます。
サウナ後にぴったりのメニュー
ここからは、サウナ後に食べたくなるメニューを紹介します。温泉施設のお食事処でよく見かけるメニューを中心に、サウナとの相性で選びました。
ピリ辛担々麺
サウナ飯の王道です。
濃厚なゴマベースのスープ、ピリッとした辣油の刺激、ひき肉のコク、チンゲン菜のシャキシャキ感——サウナで研ぎ澄まされた味覚に、これらの要素がすべて響きます。
担々麺がサウナ飯として人気がある理由は、塩分・脂質・辛味・うま味がすべて高レベルで揃っているからです。汗で失われた塩分を補給しつつ、辛味が「ととのい」の延長のような心地よい刺激を与えてくれます。スープまで飲み干したくなる罪深さもまた、サウナ飯の醍醐味です。

麻辣湯(マーラータン)
花椒のしびれと唐辛子の辛さが特徴の、スパイシーな春雨スープです。
具だくさんの野菜、きくらげ、豆腐、肉——ヘルシーながらも刺激的な味わいが、サウナ後の体に染みます。辛さの中に漢方的な深みがあり、「体に良いものを食べている」という満足感もあります。
花椒の「しびれ」がサウナ後の敏感な舌に独特の快感をもたらすので、担々麺とはまた違った辛さの体験を求める方におすすめです。
肉味噌うどん
ガツンとした肉味噌と、もっちりした太めのうどん。シンプルだけど、サウナ後に食べると格別です。
味噌のコクと甘み、ひき肉のうま味、ネギや生姜の薬味——日本の発酵食品である味噌の深い味わいが、サウナで整った体に染み込んでいきます。辛味噌を使ったバージョンなら、ピリ辛の刺激も加わって満足度がさらに上がります。
うどんは消化が良く、サウナで疲れた胃腸にも優しい選択です。
辛口の石焼き麻婆豆腐
グツグツと音を立てる石焼きの器から立ち上る湯気。赤い油の海に浮かぶ絹豆腐。山椒のしびれが舌を駆け抜ける——。
サウナの熱を出たばかりの体に、さらに熱い石焼きの麻婆豆腐をぶつける。矛盾しているようですが、これがハマるのです。辛さと熱さで再び汗をかき、そこにご飯を投入して石焼きおこげを作る。サウナ飯としての完成度は非常に高いです。
白いご飯との相性が最強なので、ご飯大盛りで注文する方が多いです。
キムチビビンバ
キムチの酸味と辛味、ナムルの野菜、ひき肉、温泉卵——混ぜれば混ぜるほどおいしくなるビビンバは、サウナ後の一品として安定の人気があります。
石焼きビビンバなら、おこげの香ばしさが加わってさらにレベルアップ。キムチの乳酸菌は腸内環境にも良いので、サウナのデトックス効果と合わせて「体の中からきれいになった」気分を味わえます。
唐揚げカレー
カレーの辛さとスパイスの刺激、ジューシーな唐揚げのボリューム感。サウナ後の空腹感を一発で満たしてくれる最強のがっつりメニューです。
カレーに含まれるターメリック(ウコン)やクミンなどのスパイスが、体を内側から温め、消化を促進するとも言われています。唐揚げのカリッとした食感がカレーのルーと絡む瞬間——幸福度が急上昇します。
カレーは温泉施設のお食事処の定番中の定番で、どの施設でも大きく外すことが少ないメニューです。迷ったらカレー、これはサウナ飯でも鉄則です。
バターラーメン
辛い系が苦手な方には、バターラーメンがおすすめです。
味噌ベースのスープにバターのコクが溶け込み、コーンの甘味がアクセントになる北海道系のラーメン。辛味はないのに、バターの脂質と味噌の塩分が「サウナ後に体が求める味」をしっかり満たしてくれます。
まろやかで優しい味わいなので、サウナ後の「ととのい」の余韻を壊さずに食事を楽しめるのもポイントです。
激辛ラーメン
辛いもの好きの方にとって、サウナ後の激辛ラーメンは究極の体験です。
サウナで限界まで耐え、水風呂で極限の冷たさに耐え、外気浴でととのい、そして激辛ラーメンで辛さに耐える——「耐える」が続くのがサウナーの性なのかもしれません。
ただし、サウナ後の胃腸は繊細な状態です。普段食べられる辛さでも、サウナ後にはダメージが大きくなることがあります。辛さのレベルは普段より一段控えめにしておくのが賢い選択です。
定番のさっぱり系も忘れずに
がっつり系ばかり紹介しましたが、サウナ後にさっぱりしたものが食べたい方もいます。
冷やしうどん、ざるそば、お茶漬け、冷奴——暑い時期のサウナ後には、こうしたさっぱり系が体に優しくてハマります。特に夏場は、冷たい麺類の注文が増えるとお食事処のスタッフが言っていました。
施設ごとの名物メニューを探そう
サウナ飯の楽しみ方で、ぜひおすすめしたいのが「施設ごとの名物メニューを食べる」ことです。
施設オリジナルメニューの存在
温泉施設のお食事処には、その施設でしか食べられないオリジナルメニューがあることが多いです。地元の食材を使った限定メニュー、常連客の声から生まれた裏メニュー、施設の名前を冠した看板メニュー——こうした施設独自のメニューは、食事の満足度を大きく上げてくれます。
SNSや口コミで事前リサーチ
施設のSNSアカウントをフォローしておくと、新メニューや限定メニューの情報がいち早く手に入ります。口コミサイトで「ここのカレーが絶品」「担々麺が名物」といった情報を事前にチェックしておくのもおすすめです。
サウナ好きのコミュニティやSNSでは、「あの施設のサウナ飯がうまい」という情報が頻繁にシェアされています。サウナの質だけでなく、サウナ飯の質で施設を選ぶ——そんな楽しみ方もありです。
同じ施設でも季節で変わる
季節限定メニューを提供している施設もあります。夏は冷やし担々麺、冬は鍋焼きうどんなど、季節ごとに違ったサウナ飯を楽しめます。常連になると、「今月の限定メニューは何だろう」というワクワク感も加わります。
サウナ飯を食べるタイミング
すべてのサウナセットが終わった後
サウナ飯は、すべてのサウナセットを終えた後に食べるのがベストです。食後にサウナに入ると、消化中の胃腸に負担がかかり、気分が悪くなることがあります。
サウナ→サウナドリンクで水分補給→休憩処で少し休む→サウナ飯——この流れが、体にも優しく、味覚的にも最高のタイミングです。
食後にもう一度入浴するなら1〜2時間空ける
サウナ飯を食べた後にもう一度温泉に入りたい場合は、食後1〜2時間は空けてください。食後すぐの入浴は、消化のために胃腸に集まっている血液が全身に分散してしまい、消化不良の原因になります。
サウナ飯とドリンクの組み合わせ
ノンアルコールの場合
オロポやアクリでまず水分を補給してから食事、が理想の流れです。担々麺やカレーなど辛い料理と一緒に飲むなら、ウーロン茶やジャスミン茶がすっきりして相性抜群です。
ビールの誘惑
サウナ飯と一緒に生ビールを飲みたくなる気持ちは痛いほどわかります。唐揚げとビール、餃子とビール、カレーとビール——最高の組み合わせです。
ただし、サウナ後は脱水状態にあるため、いきなりビール(利尿作用がある)を飲むのは体に優しくありません。まず水やスポーツドリンクで水分を補給してから、ビールはゆっくり楽しむのが賢い飲み方です。
飲酒後にサウナに戻るのは絶対にNGです。
現場スタッフが見たサウナ飯事情
サウナブームで食事の注文が変わった
サウナブーム以前と以後で、お食事処の注文傾向が変わったとスタッフは感じています。以前は「うどん」「定食」などのあっさり系が中心でしたが、サウナブーム以降は「担々麺」「カレー」「辛いもの」の注文が増えたそうです。
施設によっては、メニュー開発の段階で「サウナ後に食べたくなる味」を意識して新メニューを考えるようになったところもあります。
食事処の混雑タイミング
サウナ→ドリンク→休憩→食事という流れが定番化したことで、お食事処の混雑タイミングも変わりました。以前は12〜13時のランチタイムがピークでしたが、今は14〜15時頃にもう一つのピークが生まれています。サウナを午前中に楽しんだ方が、ゆっくり休憩した後に食事をするタイミングです。
まとめ
サウナ飯は、サウナ体験の締めくくりであり、「ととのい」の延長線上にある楽しみです。
サウナ後の体は味覚が鋭敏になり、塩分とエネルギーを求めている状態。この状態で食べるピリ辛の担々麺、しびれる麻辣湯、ガツンと来る石焼き麻婆豆腐、ボリュームたっぷりの唐揚げカレー——どれも普段の何倍もおいしく感じます。
タイミングは、すべてのサウナセットを終えた後。まずサウナドリンクで水分補給、休憩処で少し休んでからお食事処へ。食後にもう一度入浴するなら1〜2時間は空けてください。
施設ごとの名物メニューを探す楽しみもあります。SNSや口コミで「あの施設のサ飯がうまい」という情報をキャッチして、サウナの質とサウナ飯の質の両方で施設を選ぶ——そんな楽しみ方が、サウナライフをさらに豊かにしてくれます。
サウナで正しくととのえて、ドリンクで潤して、サウナ飯で満たされる。この三拍子が揃ったとき、サウナの幸福度は最高潮に達します。
参考文献
- 加藤容崇『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社、2020年)
サウナ後の味覚変化(副交感神経優位による感覚の鋭敏化)、発汗によるナトリウム喪失と塩分欲求のメカニズム - 公益社団法人 日本サウナ・スパ協会
サウナ中の発汗によるミネラル喪失(ナトリウム、カリウム)と食事による補給の重要性
https://www.sauna.or.jp/ - 厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動
入浴・サウナ後の水分補給の推奨
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと循環器疾患」
サウナ後の飲酒における脱水悪化リスク、利尿作用による水分排出
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/ - 環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」(平成31年3月)
食後すぐの入浴を避けるべき理由(消化への影響)
https://www.env.go.jp/nature/onsen/pdf/top.pdf



