温泉・サウナのNG行動10選|危険度別に現場スタッフが解説

入り方・サウナ

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いきなりですが、数字をひとつ。

令和5年に「不慮の溺死及び溺水」で亡くなった65歳以上の方は8,270人。そのうち浴槽での事故が6,541人を占めています。同じ年の交通事故死亡者数は2,116人ですから、入浴中に亡くなる方は交通事故のおよそ3倍ということになります。

温泉やサウナは、正しく使えば心身を深く休ませてくれる場所です。けれど同時に、高温・裸・滑りやすい床といった要素が揃った、事故の起こりやすい環境でもあります。

施設で働いていると、「それ、危ないんですよ」と声をかけたくなる場面に日常的に出くわします。この記事では、健康と安全の観点から避けてほしい行動を10個、危険度を3段階に分けて解説します。

なお、本記事は一般的な情報の整理であり、医学的な診断や指導を行うものではありません。持病のある方や体調に不安のある方は、必ず医師にご相談ください。

危険度の基準

本記事では、次の3段階で整理しています。

  • 【危険度:高】 最悪の場合、意識を失い、命に関わる事態につながる可能性があるもの
  • 【危険度:中】 湯あたり・のぼせ・熱中症など、その場で倒れる可能性があるもの
  • 【危険度:低】 すぐに倒れる危険は低いが、繰り返すことで体や持ち物にダメージが蓄積するもの

【危険度:高】命に関わる4つの行動

NG① 飲酒後すぐに入浴・サウナに入る

消費者庁も、高齢者の入浴事故を防ぐポイントとして「飲酒後の入浴は避ける」ことを明記しています。

アルコールには血管を広げる作用があり、入浴による体温上昇でも血管は広がります。両方が重なれば血圧が大きく下がり、意識を失うおそれがあります。浴槽の中で意識を失えば、そのまま溺水事故につながりかねません。

「ビール1缶だけだから」という感覚でも、体の反応は変わりません。

現場から:お酒が入っている方は、ご自身の感覚がかなり鈍くなっています。「大丈夫」と言われても、足取りを見れば分かります。館内で飲酒される場合は、入浴を先に済ませるのが確実です。

対策:飲酒後は最低でも2〜3時間空けてください。「風呂上がりの一杯」は問題ありませんが、その逆は避けましょう。

NG② 水分をとらずに長時間入り続ける

入浴中は、自覚がなくてもかなりの量の汗をかいています。サウナであればなおさらです。

水分が失われると血液の粘度が上がり、心臓や血管への負担が増します。脱水は、めまいや意識障害の引き金にもなります。

現場から:「のどが渇いていないから平気」という方がいらっしゃいますが、渇きを感じた時点ですでに脱水は始まっています。渇きは早期のサインではなく、遅れて出るサインです。

対策:入浴前・休憩中・入浴後と、こまめに補給してください。汗で失われる成分も補うことを意識した飲み物を選ぶのもひとつの方法です。サウナ後の水分についてはサウナドリンクのおすすめ|オロポ・アクリ・リポスパの違いと飲むタイミングを現場スタッフが解説もご覧ください。

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NG③ 体調が悪いままサウナと水風呂を往復する

サウナと水風呂を繰り返す温冷交代浴は、自律神経に強い刺激を与えます。健康な状態なら心地よさにつながりますが、体調がすぐれないときや寝不足のときは、心臓に大きな負担をかけることになります。

血圧や心臓に不安のある方は、水風呂での急激な冷却がとくにリスクになるとされています。

現場から:「昨日ちょっと熱があって」と話しながらサウナに向かわれる方が、実際にいらっしゃいます。その場合は利用を控えるようお願いしています。

対策:少しでも違和感があるなら、その日はサウナを見送ってください。水風呂が苦手な方は無理に入る必要もありません。水風呂が怖い・冷たくて入れない|サウナ初心者が苦手を克服するための入り方と対処法もあわせてどうぞ。

NG④ 持病や服薬中に、確認せず入浴する

消費者庁の注意喚起でも、「医薬品服用後の入浴は避ける」ことが挙げられています。

高血圧・糖尿病・心疾患などの持病がある方、降圧剤や睡眠薬などを服用している方は、入浴によって薬の効き方が変わる可能性があります。たとえば血圧を下げる薬を飲んだ状態で高温浴をすると、血圧が下がりすぎることがあるとされています。

現場から:施設側には、お客様の病歴も服薬状況も分かりません。ここはご自身で管理していただくほかない部分です。

対策:持病のある方は、かかりつけ医に「温泉やサウナを利用してよいか」を事前に確認しておくと安心です。入浴を避けるべき状態については温泉の禁忌症とは?|入ってはいけない病気・症状を解説もご覧ください。

【危険度:中】その場で倒れる可能性がある3つの行動

NG⑤ 食後すぐに高温浴をする

これも消費者庁が避けるべき行動として挙げている項目です。

食後は消化のために胃腸へ血液が集まっています。そこで高温浴をすると皮膚や筋肉にも血流が必要になり、消化器への血流が減ります。結果として、消化不良や腹痛、吐き気が起きやすくなるとされています。

現場から:館内の食事処で食べてすぐ浴室へ、という流れは非常に多いです。休憩処でゆっくりしてから入ると、体への負担も違ってきます。

対策:食後は最低30分、できれば1時間空けましょう。サウナ飯は、入浴後の楽しみにとっておくのがおすすめです。

NG⑥ 「ととのう」を求めて長く居座る

サウナ人気の高まりとともに、無理をする方が増えた印象があります。

体の限界を超えた長時間の滞在は、熱中症や脱水、意識障害のリスクを高めます。「もう少しで整いそう」と感じているときが、実はもっとも危ういタイミングであることも少なくありません。

現場から:サウナ室で動けなくなり、スタッフが介助に入るケースは実際にあります。とくにアウフグースの回は熱気が一気に上がるため、周囲に合わせて我慢してしまう方が出やすい場面です。

対策:時間の目安にこだわるより、自分の体の反応を基準にしてください。つらいと感じたら、途中でも出てかまいません。詳しい手順はサウナの正しい入り方|初心者でも「ととのう」ための手順とコツを現場スタッフが解説をご覧ください。

NG⑦ 湯船やサウナから急に立ち上がる

消費者庁も「浴槽から急に立ち上がらないこと」を推奨しています。

入浴中は血管が広がり、血圧が下がっています。この状態で勢いよく立ち上がると脳への血流が一時的に不足し、立ちくらみやのぼせが起きることがあります。

浴室の床は硬く、濡れていて滑りやすい場所です。そこで倒れれば、打撲や骨折といった重いけがにつながります。

現場から:浴室内の事故で、私たちがもっとも警戒しているのが転倒です。湯気で視界が悪い日はなおさらリスクが上がります。

対策:立つ前に一度浴槽の縁に腰かけ、数秒おいてから動く。これだけでかなり違います。体調の変化については温泉に入ったら気分が悪くなった|湯あたり・のぼせ・熱中症の見分け方を現場スタッフが解説で見分け方を解説しています。

【危険度:低】積み重ねがダメージになる3つの行動

NG⑧ アルカリ性の温泉で肌をゴシゴシこする

炭酸水素塩泉やアルカリ性単純温泉が「美肌の湯」と呼ばれるのは、角質を柔らかくする作用があるためです。

つまり、肌の表面がふやけやすい状態になっているということ。そこを強くこすれば、バリア機能を損ない、入浴後の乾燥やヒリつきにつながることがあります。

対策:泡立てたボディソープでやさしく洗う程度にとどめ、タオルでこすらないこと。泉質と肌の関係は温泉のpHが高すぎると悪影響?と温泉で肌が荒れる人がやりがちなミスで詳しく扱っています。

NG⑨ アクセサリーをつけたまま入る

硫黄泉に含まれる硫化水素は、銀を黒く変色させます。これは錆ではなく「硫化」という化学反応で、一度進むと簡単には戻りません。酸性泉では金属そのものが傷むこともあります。

現場から:集毛器(ろ過の手前で髪の毛を受け止めるカゴ)を清掃すると、指輪やピアスが出てくることがあります。浴室で落としたものは、循環の流れに乗って配管へ運ばれるためです。

対策:入浴前にすべて外してロッカーへ。詳しくは温泉にアクセサリーはつけたまま入っていい?をご覧ください。泉質ごとの性質は硫黄泉とは?でも解説しています。

NG⑩ かけ湯をせずに湯船へ入る

かけ湯には2つの意味があります。ひとつは汗や汚れを落とすマナー、もうひとつは体を湯温に慣らす安全上の目的です。

寒い脱衣所から出てすぐ熱い湯に入れば、血圧が急激に動きます。消費者庁が指摘している「寒暖差による血圧の変動」は、まさにこの場面で起こります。

現場から:かけ湯をせずに入られる方への声かけは、スタッフがもっとも気を使う業務のひとつです。衛生面だけでなく、その方自身の安全のためでもあります。

対策:足元から膝、腰、肩と、心臓から遠い順にかけていきます。基本の手順は温泉の正しい入り方|初心者が知っておくべきマナーと手順にまとめています。

公的機関が示す入浴のポイント

ここまで挙げた10項目は、私の現場感覚だけで選んだものではありません。消費者庁が高齢者の入浴事故防止として示しているポイントと、多くが重なります。

具体的には、入浴前に脱衣所や浴室を暖めること、湯温は41度以下でお湯につかる時間は10分までを目安にすること、浴槽から急に立ち上がらないこと、食後すぐ・飲酒後・医薬品服用後の入浴を避けること、そして入浴前に同居者へ一声かけることが挙げられています。

温浴施設は脱衣所と浴室の寒暖差が家庭より小さく設計されていることが多いものの、それ以外のポイントはそのまま当てはまります。 公的な注意喚起と現場の実感が一致しているということは、それだけ実際に起きている事故だということでもあります。

もし異変を感じたら

最後にお伝えしたいのは、我慢しないでほしいということです。

めまいがする、気分が悪い、動悸がする——そう感じたら、すぐに湯から上がって涼しい場所で横になってください。そして、近くのスタッフに声をかけてください。

「これくらいで呼ぶのは申し訳ない」と思われる方が本当に多いのですが、対応が遅れるほうが施設にとってはずっと困ります。私たちはそのために常駐しています。ご自身や同行者の様子がおかしいと感じたときも、遠慮なくお知らせください。

まとめ

温泉やサウナで避けたい10の行動を、危険度別に整理しました。

命に関わるものが、飲酒後すぐの入浴、水分をとらない長時間入浴、体調不良時の温冷交代浴、持病・服薬中の無確認での入浴。その場で倒れる可能性があるものが、食後すぐの高温浴、無理な長時間サウナ、急に立ち上がること。積み重ねがダメージになるものが、アルカリ泉で肌をこすること、アクセサリーの着用、かけ湯を省くことです。

入浴中の事故が交通事故死の約3倍という数字は、決して大げさな話ではありません。けれど裏を返せば、知っていれば防げるものがほとんどだということでもあります。

温泉は、正しく使えば本当にいいものです。気持ちよさの前に安全を置く。それだけで、事故のリスクは大きく下がります。

参考文献

ひねこじた 温泉

温浴施設で5年以上働く現役スタッフ。水質や塩素の管理、ろ過設備の運転など、お湯を支える仕事をしています。現場で身につけた知識をもとに、温泉の仕組みや困りごとを解説しています。

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