温泉施設スタッフはどういう仕事をしてるの?|裏側を開店前から閉店後まで解説!

温泉施設の裏側

「温泉施設の仕事って、受付してお風呂の管理をするくらいでしょ?」

そう思っている方、甘いです。

温泉施設のスタッフは、お客様が来る前から帰った後まで、驚くほど多くの業務をこなしています。受付、接客、清掃、設備管理、衛生管理、事務、電話対応、クレーム対応、救急対応、発注、人事——小さな会社の全部門を数人で回しているようなものです。

この記事では、ある温泉施設の1日を開店前・営業中・閉店後の3つに分けて、現場のリアルをできるだけ詳しくお伝えします。


開店前——お客様を迎えるまでの準備

開店の1〜2時間前、まだ館内にお客様がいない静かな時間帯。スタッフにとっては、1日の土台を作る大切な時間です。

前日の引き継ぎ確認

出勤して最初にやるのは、前日の閉店スタッフが残した引き継ぎの確認です。

施設によって連絡ノート、ホワイトボード、チャットツールなど形式はさまざまですが、ここには前日に起きたことの記録が詰まっています。設備の不具合(「3番浴槽の温度センサーが不安定」「男湯のシャワーヘッド1本交換済み」など)、お客様からの申し送り(「忘れ物の問い合わせが来る予定」「常連の○○様から要望あり」など)、対応途中のクレームの経過、納品予定の業者情報——。

ここを読み飛ばすと、「昨日伝えたはずですけど」というトラブルに直結します。引き継ぎの確認は、出勤後の最優先業務です。

朝礼の実施

出勤したスタッフが揃ったら、朝礼を行います。

内容は、当日のイベント情報や予約状況の共有、スタッフのシフトとポジション確認、前日からの引き継ぎ事項の口頭確認、注意事項の伝達などです。たとえば「浴室内で漏水している箇所があるので、一部のシャワーカランは使用不可となっています」「昨日から露天の温度がやや低めなので、午前中に設定を調整します」といった具合です。

朝礼は5〜10分程度で終わりますが、これをやるかやらないかで1日の連携がまったく変わります。スタッフ同士が同じ情報を持って動き始めることで、「聞いてない」「知らなかった」という行き違いを防げます。

浴槽の温度チェック

各浴槽の温度を温度計で測定し、記録します。

源泉の湧出温度や外気温によって浴槽温度は日々変動します。内湯は比較的安定していますが、露天風呂は外気温の影響をもろに受けるため、冬の朝は想定より2〜3℃低くなっていることも珍しくありません。

温度が基準値から外れている場合は、ボイラーの加温設定を調整したり、加水(冷たい水を足して温度を下げる)を行ったりします。「お客様が入浴する時間帯にちょうどいい温度になっている」状態を作るのが目標なので、逆算して早めに調整を始めます。

開店前のお湯は実は「一番いい状態」

意外と知られていませんが、開店前の浴槽のお湯は1日の中で最も新鮮です。

閉店後に換水や清掃を行い、新しいお湯を張り直します。そこから開店までの数時間、まだ誰も入浴していない状態で、ろ過を通す前の源泉がたっぷりと注がれています。温泉成分が濃く、お湯の透明度も高い。いわば「一番風呂」の状態です。

この朝一番のお湯に入れるのは、開店前に来店していただいた、お客様の特権です。

イベントのセッティング

季節イベントやキャンペーンがある日は、開店前にイベントのセッティングを行います。

装飾の設置(季節の飾りつけ、ポスターの掲示など)、イベント用ポップの配置、特別メニューがある場合はレストランへの共有。入浴剤イベント(「今日はゆず湯」「バラ風呂」など)がある場合は、開店に合わせて浴槽への入浴剤投下もこのタイミングで行います。

ゆず湯の日に大量のゆずを浴槽に浮かべる作業は、見た目は華やかですが、閉店後にゆずを回収して清掃する手間を考えると複雑な気持ちになることもあります。

券売機の表示切替作業

意外と神経を使うのが券売機の表示切替作業です。

平日料金と休日料金が異なる施設、時間帯によって料金が変わる施設では、営業開始前に券売機の表示を当日の料金に切り替える必要があります。曜日を間違えて休日料金のまま平日営業を始めてしまったり、逆に平日料金のまま休日を迎えてしまったりすると、お客様からのクレームだけでなく売上の差異にもつながります。

料金切替後は、必ず別のスタッフとダブルチェックを行い、テスト購入で正しい金額が表示されることを確認してから開店します。

清掃の最終確認と備品の補充

閉店後に大がかりな清掃を行っていますが、開店前に清掃の最終確認と備品の補充を行います。脱衣所のロッカー、洗面台、ドライヤー周り、トイレ、休憩スペース——お客様の目線で歩いてみて、気になる箇所があればその場で対応します。

シャンプー・ボディソープの残量確認と補充、ドライヤーの動作確認、トイレットペーパーの補充なども開店前に済ませます。


営業中——やることが途切れない

開店すると、ここからはお客様対応と施設管理が同時進行で走る怒涛の時間帯です。「暇な時間」はほぼありません。

フロント受付業務

温泉施設の顔であるフロント業務では、入館の受付と案内を行います。

初めてのお客様には、館内の利用方法(浴室、脱衣所の場所、食事処の営業時間、休憩スペースの案内など)を説明します。リピーターの方でも、料金プランの変更や新しいサービスの案内が必要な場合があります。

混雑する時間帯はフロントに列ができることもあり、スピードと丁寧さの両立が求められます。お客様を待たせすぎないよう、かといって雑な対応にならないよう——このバランスは経験を積んでも難しいところです。

券売機の使い方の説明

最近の温泉施設では、タッチパネル式の券売機を導入しているところが増えています。

若い方はスムーズに操作できることが多いですが、高齢のお客様の中には「どこを押せばいいかわからない」と戸惑われる方もいます。そんなときは、スタッフが横について、一緒に画面を見ながら券売機の操作をサポートします。

海外からのお客様の場合は、券売機の日本語表示が読めないことも多く、英語対応の画面がない施設では特に丁寧な案内が必要です。指差しシートやイラスト入りの案内を用意している施設もあります。

クーポンの着券処理

割引クーポンや優待券を持参されたお客様には、着券処理を行います。

クーポンの種類は多岐にわたります。自治体の福祉クーポン、旅行サイトのクーポン、折込チラシの割引券、企業の福利厚生券、提携ホテルの優待券——それぞれ割引率や適用条件が異なるため、有効期限の確認、適用可能な料金プランとの照合、券面の記載事項のチェックを行った上で、券を回収(着券)し、差額を精算します。

種類が多い施設では、クーポン一覧表を手元に置いて対応しています。お客様にとっては「クーポンを出せば安くなる」だけのことですが、裏側ではそれなりの確認作業が動いています。

ロッカーに入らない荷物の預かり

スーツケース、ベビーカー、大きなリュック、ゴルフバッグ——ロッカーに入らない荷物をフロントで預かることは日常的にあります。

旅行中に立ち寄る方、空港に向かう前にひとっ風呂という方、海外からのお客様で大きなスーツケースを引いている方。預かり証を発行し、所定のスペースで保管します。

貴重品が入っていないか確認し、引き渡し時に預かり証と照合する——この流れを丁寧にやることで、トラブルを防ぎます。

1時間に1回の塩素測定・調整

営業中の衛生管理で最も重要なルーティンが、浴槽水の塩素測定です。

遊離残留塩素濃度を1時間に1回測定し、検査キットで数値を確認します。基準値(多くの施設では0.2〜0.4mg/L)を下回っていれば、次亜塩素酸ナトリウムを補充して調整します。

測定結果は時刻とともに記録簿に記入し、保管します。この記録簿は保健所の立入検査で提出を求められるものなので、記入漏れは許されません

お客様が多い時間帯は、入浴者の汗や皮脂によって塩素が消費されるスピードが上がります。休日の午後や連休中は、通常より塩素の減りが早くなるため、注意深く監視します。逆に、お客様が少ない平日の午前中は塩素が減りにくいので、過剰投入にも注意が必要です。多すぎると塩素臭が気になるとクレームになることもあります。

次亜塩素のタンク補充

塩素消毒に使う次亜塩素酸ナトリウムの溶液は、機械室のタンクに入っており、ポンプで自動的に浴槽水に注入されています。

営業中にタンクの残量が少なくなると、補充作業が必要です。次亜塩素酸ナトリウムは強い酸化剤で、原液は皮膚に付くとただれる可能性があり、目に入ると非常に危険です。補充作業では必ずゴム手袋・ゴーグル・マスクを着用し、換気を確認した上で行います。

重いポリタンクを持ち上げてタンクに注ぐ作業は体力も使います。地味ですが、この薬品がなければ浴槽水の衛生は維持できません。温泉施設の安全を文字通り支えている作業です。

サウナマットの交換

サウナ室の座面に敷いてあるマットは、利用者の汗を吸収するため、サウナマットの定期的な交換が必要です。

交換頻度は施設によって異なりますが、1〜2時間ごとに交換するところが多いです。混雑する休日には、もっと頻繁に交換することもあります。

作業としては、サウナ室内の使用済みマットをすべて回収し、新しい清潔なマットを敷き直します。サウナ室は80〜100℃の高温なので、交換作業中は当然ながら猛烈に暑いです。手早く済ませないと自分がやられます。

回収したマットは洗濯・乾燥して再利用します。マットの在庫管理も地味に重要で、足りなくなると交換が滞り、衛生面に影響します。

浴槽の温度チェック(営業中も継続)

開店前に確認した浴槽温度ですが、営業中も定期的に浴槽の温度をチェックを続けます。

外気温の変化、入浴者数の増減、源泉の湧出温度の変動などによって、浴槽温度は常に変化しています。お客様から「ぬるい」「熱すぎる」というお声をいただくこともあるので、体感だけでなく温度計で客観的な数値を確認し、必要に応じて加温や加水を調整します。

特に露天風呂は外気温の影響を大きく受けるため、季節や天候によって温度管理の難易度が変わります。冬場の夕方以降は気温が急降下するので、先手を打って加温を強めにしておくこともあります。

館内の巡回清掃

営業中は、浴室、脱衣所、トイレ、休憩スペース、廊下、食事処——館内のあらゆるエリアを定期的に巡回し、汚れや散らかりがあればその場で対応します。

最も汚れやすいのは脱衣所の床(髪の毛が大量に落ちる)とトイレです。この2か所は巡回頻度を高くして、お客様が「汚い」と感じる前に手を打つのが理想です。

「汚れたから掃除する」ではなく「汚れる前に掃除する」——この意識が、施設全体の清潔感を左右します。お客様からの口コミで「清潔感がある」と評価される施設は、この巡回清掃を丁寧にやっている施設です。

浴室内では、シャワーヘッドの向きが乱れていないか、シャンプーの残量は十分か、排水溝に髪の毛が詰まっていないか、鏡が汚れていないかなども確認します。細かいことですが、こうした積み重ねが「また来たい」という気持ちにつながります。

機械室の確認

お客様の目に触れることはありませんが、機械室は温泉施設の心臓部です。

ろ過装置ボイラー循環ポンプ、消毒装置、給排水設備——これらが並ぶ機械室を定期的に巡回し、異常がないか確認します。

チェックするのは、異音がないか(ポンプのベアリング劣化やキャビテーションの音は早期発見が重要)、異臭がないか(ガス漏れや過熱の兆候)、水漏れがないか(配管の接合部やバルブ周り)、計器の数値が正常範囲か(圧力計、温度計、流量計など)。

機械トラブルは営業停止に直結します。「いつもと音が違う」「振動がいつもより大きい」といった微妙な違和感を察知できるかどうかは、経験がものを言います。ベテランのスタッフほど、機械室に入った瞬間に「今日はどこかおかしい」と気づくことがあります。

入浴剤の投下

日替わり湯やイベント風呂を実施している施設では、所定のタイミングで浴槽に入浴剤を投下します。

開店前に投下するパターンもあれば、色味が薄くなってきたら投下するパターン、時間を決めて投下するパターンもあります。お客様の目の前で投下すると「おっ、入れたてだ!」と喜ばれることもあり、ちょっとしたパフォーマンスになります。

入浴剤の種類によっては、ろ過装置のフィルターに影響を与えるものもあるため、使用する入浴剤は慎重に選んでいます。

のぼせ・体調不良への対応

営業中に避けて通れないのが、のぼせ湯あたりを起こしたお客様への対応です。

長湯やサウナの利用で体調を崩す方は少なくありません。顔が真っ赤になっている、ふらついている、座り込んでいる——そうした異変に気づいたら、すぐにお声がけして涼しい場所に誘導し、水分を提供します。

状態が深刻な場合(意識が朦朧としている、嘔吐がある、倒れているなど)は、ためらわずに救急車を呼びます。実際に救急搬送に至るケースは年に数回はあり、AEDの場所と使い方はすべてのスタッフが把握しています。

飲酒後の入浴で体調を崩す方も多く、見るからに酔っているお客様には入浴をお控えいただくよう案内することもあります。

クレーム対応

温泉施設のクレームは多岐にわたります。

「お湯がぬるい」「塩素臭い」「脱衣所が汚い」「ドライヤーの風が弱い」「他のお客様がマナーを守らない」「サウナ室でおしゃべりがうるさい」「食事がおいしくない」「駐車場が有料なのはおかしい」——。

クレーム対応で大切なのは、まずお客様の話をしっかり聞くこと。そして、すぐに対応できることはその場で対応し、時間がかかるものは「確認して対応します」と伝えて記録に残すことです。

対応が難しいのは、お客様同士のトラブルです。「隣の人が浴槽内でタオルを使っている」「サウナで場所取りをしている人がいる」——スタッフが直接注意に行くこともありますが、お客様同士の関係がこじれないよう配慮しながらの対応は、かなり気を使います。

クレームの内容は日報に記録し、翌日以降のスタッフに引き継ぎます。同じクレームが繰り返される場合は、根本的な改善策を検討します。

忘れ物の対応

温泉施設は忘れ物対応が非常に多い場所です。

忘れ物の例としては、メガネ、スマートフォン、アクセサリー(指輪、ネックレス、ピアス)、腕時計、シャンプーやスキンケア用品、タオル、下着、ヘアゴム、ロッカーの鍵——毎日のように何かしらの忘れ物が届きます。いま記事をみているあなたも、過去に何か忘れたものがあるのではないでしょうか。

忘れ物があれば、発見場所、日時、物品の特徴を台帳に記録し、所定の場所で保管します。お客様から電話で「忘れ物をしたのですが…」と問い合わせがあれば、台帳と照合して該当するものがあるか確認し、引き取り方法(来館、郵送など)を案内します。

脱衣所のロッカーに入れたまま帰ってしまう方もいるため、営業中もロッカーの利用状況を気にかけています。

館内放送

閉館時間が近づくと、館内放送でお客様にお知らせします。「閉館30分前」「閉館15分前」と段階的に案内し、最終的に「まもなく閉館のお時間です。お忘れ物のないようご確認ください」とお伝えします。

それ以外にも、イベントの開始案内、場所取り禁止のお願い(「浴室での場所取りはご遠慮ください」など)、天候悪化による露天風呂の閉鎖案内なども放送で行います。

放送の声のトーンや話し方は施設の印象を左右するため、落ち着いた明るいトーンを心がけています。

電話応対

営業中はひっきりなしに電話がかかってきます。

最も多い問い合わせは、営業時間の確認、入場料金の確認、駐車場の有無と台数。次いで、イベントの内容、食事処のメニュー、貸切風呂の予約、団体利用の相談、忘れ物の問い合わせ、アクセス方法の確認などが続きます。

電話応対は、フロント業務と並行して行うことがほとんどです。目の前にお客様がいるのに電話も鳴っている——この状況をどちらも失礼なく捌くのは、慣れるまで本当に大変です。

飛び込み営業への対応

温泉施設には、さまざまな業者が飛び込みで営業に来ます。

飛び込み営業の例としては業務用洗剤、タオルのリース、食材の卸、自動販売機の設置提案、広告掲載の営業、求人媒体の営業、ウォーターサーバーの営業、保険の営業、券売機の営業——ジャンルは実に幅広いです。

忙しい時間帯に来られると正直困ることもありますが、中には本当に良い商品や良い条件の取引もあるので、無下に断るわけにもいきません。多くの場合、名刺とカタログを預かって「担当者から改めてご連絡します」という対応になります。

食材・備品の発注と納品の受け取り

レストランや売店がある施設では、食材の発注は毎日の業務です。翌日以降の予約状況や曜日ごとの来客傾向を踏まえて、必要な食材の種類と量を見積もり、取引先に発注します。

タオル、シャンプー、ボディソープ、清掃用品、事務用品などの消耗品も、在庫を確認しながら定期的に発注します。「あると思ったらなかった」が許されないものばかりなので、在庫管理は地味ですが重要な業務です。

納品時には、数量と品質を確認して受け取り、所定の場所に保管します。食材であれば冷蔵・冷凍の温度帯を間違えないように、薬品類であれば日光に当たらないようにするなど、保管場所と取り扱い方法に注意して格納します。

アルバイトの面接対応

温泉施設に限らず、サービス業は常に人手不足との戦いです。求人の応募があれば、営業の合間を縫ってアルバイトの面接を行います。

フロント業務の手を止めて事務室や面接スペースに向かい、面接が終わったらまたフロントに戻る。採用が決まれば、シフトの調整、制服の準備、業務の引き継ぎ資料の作成——こうした付随作業も発生します。

「温泉入り放題」という福利厚生に魅力を感じて応募してくる方は意外と多く、温泉好きが高じてスタッフになるパターンは珍しくありません


閉店後——ここからが本番

お客様が帰り、館内が静かになります。しかし、スタッフの仕事はここからが本番です。閉店後の作業は、翌日の営業品質を決める重要な時間帯です。

券売機の売上回収・集計

券売機から売上を回収し、売上を集計します。

券種ごとの販売枚数(大人・子ども・シニア・回数券など)、クーポンの利用数、割引の内訳を確認し、券売機のデータとレジ金の実際の金額を突き合わせます。

金額が合わないと、原因の追究が必要です。お釣りの渡し間違い、クーポンの処理ミス、券売機のエラー——どこで差異が出たのかを特定するのは、地味に神経を使う作業です。

日報の作成

その日の営業をまとめた日報を作成します。

記載するのは、入館者数(時間帯別がわかると翌日以降の人員配置に活かせる)、売上金額、設備の状態と異常の有無、クレームの内容と対応状況、忘れ物の記録、消耗品の在庫状況、翌日への引き継ぎ事項などです。

日報は、社内全体で読む資料です。必要な情報を漏れなく、かつ読みやすくまとめることが大切です。

忘れ物の最終確認

閉店後に、浴室・脱衣所・休憩スペース・食事処を巡回し、忘れ物がないか最終チェックを行います。ロッカーも一つずつ扉を開けて確認します。

営業中に見落としていた忘れ物が見つかることもあるので、この最終確認は省略できません。

館内清掃

営業中の巡回清掃とは別に、閉店後にまとまった清掃を行います。

休憩スペースの床のモップがけ、テーブル・椅子の拭き上げ、トイレの本格清掃(便器の洗浄、床面の洗浄、鏡磨き、消耗品の補充)、ゴミの回収と分別、自動販売機周りの清掃、フロント周りの整理整頓——。

これらは浴室以外の館内清掃ですが、それだけでもかなりの作業量です。

浴室の清掃——閉店後作業のメインイベント

閉店後の作業で最も時間と労力を要するのが、浴室の清掃です。ここが温泉施設の清潔さを根本から支えている工程です。

まず、洗い場の洗面器と椅子を一つずつブラシで洗浄します。数十脚の椅子と洗面器を毎日手作業でこすり洗いするのは、見た目以上に重労働です。石鹸カスや水垢が付着しているので、ブラシでしっかりこすらないときれいになりません。

次に、浴室の床面をポリッシャー(回転ブラシ付きの床面洗浄機)で洗浄します。タイルの目地に入り込んだ汚れやぬめり(バイオフィルムの初期段階)は、人力のブラシだけでは落としきれません。ポリッシャーの回転ブラシと洗剤の力で、目地の奥まで洗浄します。

壁面や浴槽の縁、排水溝の周り、シャワーブースの仕切りなど、ポリッシャーが届かない場所は高圧洗浄機で洗い流します。温泉成分の析出物(スケール)がこびりついている箇所は、通常の水圧では落ちないため、高圧洗浄機のノズルを近づけて集中的に当てます。

高圧洗浄機は威力が強い分、取り扱いに注意が必要です。ノズルの向きを間違えると水が跳ね返って自分に当たりますし、タイルの素材によっては水圧で傷つくこともあります。

浴室清掃は、全工程で1〜2時間かかることもあります。夏場は暑く、冬場は寒い中での作業です。しかし、この清掃があるからこそ、翌朝お客様を清潔な浴室に迎えることができます。

浴槽の換水作業

浴槽のお湯を抜いて、新しいお湯に入れ替える換水作業を行います。

換水の頻度は施設の方針や設備によって異なります。毎日全量を入れ替える施設もあれば、2〜3日に1回の施設もあります。循環式源泉かけかによっても異なりますし、保健所の指導基準も自治体によって違います。

換水時は、お湯を抜いた状態で浴槽内のブラシ清掃も行います。浴槽の壁面や底面に付着した湯垢、温泉成分のスケール、バイオフィルムをブラシやスポンジでこすり落とします。

お湯を張り直した後は、温度が適正値に達するまで加温し、塩素を投入して消毒を行い、ORP値が基準を満たしていることを確認します。ここまでが換水作業のワンセットです。

大きな浴槽の場合、お湯を満たすだけで数時間かかることもあるため、閉店直後から作業を始める必要があります。


1日を振り返って

こうして書き出してみると、改めて業務の幅が広いなと感じます。

朝の引き継ぎ確認から始まり、浴槽の温度管理、券売機の設定、フロント受付、塩素測定、サウナマット交換、巡回清掃、機械室の確認、クレーム対応、のぼせ対応、電話応対、発注、面接、そして閉店後の売上集計、日報作成、浴室の徹底洗浄——。

華やかさはありません。一つひとつは地味な作業の連続です。でも、そのすべてが「お客様に安全で清潔で快適な温泉体験を提供する」という一つの目的につながっています。

開店前の誰もいない浴室に、ピカピカに磨き上げた床と、新鮮なお湯が満ちているのを見ると、「今日もいい1日になる」と思えます。そして閉店後、すべての清掃と点検を終えて施設を後にするとき、「明日もお客様に気持ちよく入ってもらえる」と思える瞬間が、この仕事のやりがいです。

温泉に入ったとき、お湯がきれいで、浴室が清潔で、椅子にぬめりがなくて、スタッフが笑顔だったら——その裏側にはこんな1日があることを、少しだけ思い出していただけたら嬉しいです。

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