循環式(ろ過)温泉のメリット・デメリット|実は悪者じゃない理由

温泉深掘り

温泉を探すとき、「循環式」と聞くと、なんとなく質が劣るイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。「源泉かけ流しこそ本物の温泉」という考え方が根強くあります。

しかし温泉施設で働いていると、循環式が決して「悪者」ではなく、むしろ現実的で合理的な選択であることがわかります。今回は、循環式温泉の実態と、その必要性について解説します。

循環式温泉とは何か

循環式温泉とは、浴槽のお湯をろ過装置で浄化しながら繰り返し使用する方式の温泉です。

基本的な仕組み

  1. 浴槽のお湯をポンプで吸い上げる
  2. ろ過装置で髪の毛や垢などの汚れを除去する
  3. 必要に応じて加温・塩素消毒を行う
  4. 再び浴槽に戻す

この循環を24時間(または営業時間中)継続することで、常に一定の湯温と水位を保ちます。

かけ流し式との違い

かけ流し式:

  • 源泉から新しいお湯を注ぎ続ける
  • 使用済みのお湯は排出する
  • 常に新鮮な温泉が供給される

<源泉かけ流しに関する記事については以下のリンクをチェック↓>

循環式:

  • 同じお湯をろ過して再利用する
  • 新しいお湯の補給は最小限
  • お湯の入れ替わりは緩やか

循環併用式という中間形態

源泉を注ぎながら、同時に循環ろ過も行う「循環併用式」という方式もあります。完全な循環式よりも新鮮さを保ちつつ、水資源を節約できる折衷案です。

なぜ循環式が必要なのか|現実的な理由

多くの温泉施設が循環式を採用しているのは、次のような現実的な理由があります。

①源泉の湧出量が限られている

すべての温泉地に豊富な湧出量があるわけではありません。1分間に数十リットル程度しか湧かない源泉も珍しくなく、これでかけ流しにすると大きな浴槽を満たすことができません。

限られた源泉を有効に使うには、循環式が現実的な選択です。

②水資源の有効活用(環境面)

かけ流し式は大量の温泉を使い、その分大量の排水が出ます。環境への配慮や水資源保護の観点から、循環式のほうが持続可能と言えます。

特に温泉地全体で湧出量が減少している地域では、循環式への移行が推奨されているケースもあります。

③温度調整の容易さ

源泉温度が高すぎる、または低すぎる場合、かけ流しでは大量の加水や加温が必要になります。循環式なら、一度適温にしたお湯を保温するだけで済むため、温度管理が容易です。

④ランニングコストの削減

かけ流し式は大量のお湯と燃料を消費するため、ランニングコストが高くなります。循環式であれば、これらのコストを大幅に削減でき、その分利用料金を抑えることができます。

⑤設備投資の必要性

循環式温泉には、ろ過装置の導入が不可欠です。ろ過装置の価格は性能や規模によって異なりますが、一般的に数百万円から1000万円以上かかります。

主なろ過装置の種類と価格帯:

  • 砂ろ過装置: 300万円〜800万円程度
  • カートリッジ式ろ過装置: 200万円〜500万円程度
  • 珪藻土ろ過装置: 500万円〜1500万円程度

さらに、ポンプ、配管工事、制御盤なども含めると、システム全体で1000万円〜2000万円の初期投資が必要になることも珍しくありません。

これだけの設備投資をしてでも循環式を採用するのは、長期的に見ればランニングコストの削減や安定した運営ができるメリットがあるからです。

循環式のデメリットと誤解

もちろん、循環式にもデメリットはあります。

①温泉成分が薄まる可能性

循環する過程で、ろ過装置に温泉成分の一部が吸着されたり、塩素によって分解されたりすることがあります。そのため、源泉そのものに比べると成分濃度が低下する可能性があります。

ただし、適切に源泉を補給していれば、大幅に薄まることは避けられます。

②塩素消毒が必須になる

循環式では、同じお湯を繰り返し使うため、レジオネラ菌などの細菌繁殖リスクが高まります。そのため、塩素消毒が事実上必須です。

これにより、温泉本来の香りや成分が影響を受けることがあります。

<塩素に関しての記事は下のリンクをチェック↓>

③「新鮮さ」は確かに劣る

かけ流しのように常に新しいお湯が注がれるわけではないため、「新鮮さ」という点では劣ります。源泉の持つ本来の力を最大限に感じたい人には物足りないかもしれません。

④適切な管理が前提

ただし、これらのデメリットは適切に管理されていれば大きな問題にはなりません。逆に、管理が不十分だと水質が悪化し、衛生面でもリスクが高まります。

つまり、循環式だから悪いのではなく、管理が悪いと問題が起きるということです。

循環式のメリット(意外と知られていない)

実は、循環式には多くのメリットがあります。

①安定した湯温・湯量を提供できる

かけ流しでは、源泉の湧出量や温度が変動すると、浴槽の状態も変わってしまいます。循環式なら、常に一定の湯温と水位を保てるため、利用者にとって快適です。

②多くの利用者に温泉を提供できる

限られた源泉を循環させることで、より多くの人が温泉を楽しめます。特に都市部の温泉施設では、大量の利用者を受け入れるために循環式が不可欠です。

③環境負荷が少ない

水資源やエネルギーの消費を抑えられるため、環境への負荷が小さくなります。持続可能な温泉利用という観点では、循環式のほうが優れています。

④料金を抑えられる

ランニングコストが低いため、その分利用料金を安く設定できます。これにより、より多くの人が気軽に温泉を楽しめるようになります。

⑤衛生管理がしやすい

適切にろ過と消毒を行えば、常に清潔な状態を保てます。レジオネラ菌対策も、塩素濃度管理とろ過装置の清掃で確実に行えます。

かけ流しでも、湯量が少なく滞留時間が長い場合は、循環式と同様のリスクがあります。その点、循環式は管理方法が確立されているため、むしろ安心とも言えます。

良い循環式温泉の見分け方

循環式だからといって、すべてが同じわけではありません。質の高い循環式温泉を見分けるポイントがあります。

①ろ過装置の性能と清掃頻度

ろ過装置が適切にメンテナンスされているかが重要です。フィルターの交換や逆洗浄が定期的に行われていれば、水質は良好に保たれます。

②塩素濃度の適正管理

塩素臭が強すぎる施設は、管理が雑な可能性があります。逆に、適正濃度(0.2〜0.4mg/L程度)に保たれていれば、臭いはほとんど気になりません。

塩素濃度の測定記録が掲示されているかも確認しましょう。

③定期的な完全換水の実施

循環式でも、週に1回や月に数回など、定期的に浴槽のお湯を全部入れ替えて清掃している施設は信頼できます。

④レジオネラ検査の結果公開

年に1回以上のレジオネラ検査が義務付けられていますが、その結果を公開している施設は、衛生管理をしっかりと行っている証拠です。

当施設でも掲示しています!!

⑤浴室の清潔さ

浴槽や床、壁の状態を見れば、日常的な清掃がきちんと行われているかわかります。ヌメリ(バイオフィルム)やカビがなく、清潔に保たれている施設を選びましょう。

⑥源泉の補給状況

循環式でも、一定量の源泉を継続的に補給している施設は、温泉成分の濃度を保ちやすくなります。温泉成分表示で「加水なし」「源泉補給あり」などの記載を確認しましょう。

まとめ

循環式温泉は、決して「偽物」や「質が悪い」というわけではありません。むしろ、現代の温泉施設運営において合理的で現実的な選択です。

循環式が必要な理由:

  • 源泉の湧出量が限られている
  • 水資源・エネルギーの有効活用
  • 安定した温度・水位の維持
  • 多くの利用者への提供
  • ランニングコストの削減

循環式のデメリット:

  • 温泉成分が薄まる可能性
  • 塩素消毒が必須
  • 新鮮さではかけ流しに劣る
  • ろ過装置などの初期投資が高額(1000万円〜2000万円)

循環式のメリット:

  • 安定した快適性
  • 環境負荷が少ない
  • 料金を抑えられる
  • 適切な管理で高い衛生水準を保てる

大切なのは、「かけ流しか循環式か」という方式ではなく、施設がどれだけ誠実に管理しているかです。

適切に管理された循環式温泉は、十分に質の高い温泉体験を提供できます。逆に、管理が不十分なかけ流し温泉よりも、よほど安心して入浴できることもあります。

温泉を選ぶときは、方式だけで判断せず、施設の清潔さや管理状況を総合的に見極めましょう。それが、本当に良い温泉に出会うための第一歩です。

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