「サウナって、ただ熱い部屋に入って汗をかくだけでしょ?」
半分合っていますが、半分間違っています。
サウナには「正しい入り方」があり、手順を守ることで体への効果が大きく変わります。最近よく聞く「ととのう」という感覚も、正しい入り方をして初めて体験できるものです。
温泉施設で働いていると、サウナの入り方がもったいない方をよく見かけます。逆に、常連さんの入り方を見ていると「なるほど、だからあの人はいつも気持ちよさそうなんだな」と納得することも多いです。
この記事では、サウナ初心者から「もっと気持ちよく入りたい」という方まで、現場スタッフの視点から正しい入り方を解説します。
サウナの基本サイクル——サウナ→水風呂→外気浴
サウナの入り方で最も大切なのは、「サウナ→水風呂→外気浴(休憩)」の3ステップを1セットとして繰り返すことです。
この3ステップにはそれぞれ明確な役割があります。サウナで体を温めて交感神経を刺激し、水風呂で一気に冷やしてさらに交感神経を高め、外気浴で副交感神経に切り替えてリラックスする。この自律神経の切り替えが、「ととのう」の正体です。
サウナだけ、あるいはサウナと水風呂だけで終わってしまうと、交感神経が優位なままで体が緊張した状態が続きます。外気浴(休憩)まで含めて1セットだということを、まず覚えてください。
ステップ0:サウナに入る前の準備
サウナ室に入る前に、いくつかの準備があります。
水分をしっかり摂る
サウナでは大量の汗をかきます。1回のサウナセッションで300〜500mlの水分が失われるとも言われており、脱水状態でサウナに入るのは危険です。

サウナに入る前に、コップ1〜2杯の水を飲んでおきましょう。アルコールは利尿作用があるため、水分補給にはなりません。飲酒後のサウナはのぼせや心臓への負担が大きく、絶対に避けてください。
体と頭を洗う
サウナ室に入る前に、必ず体と頭を洗いましょう。これはマナーであると同時に、皮膚の表面の汚れや皮脂を落とすことで、発汗がスムーズになる効果もあります。

体の水滴を拭く
体を洗った後、タオルで体の水滴をしっかり拭いてからサウナ室に入ります。
体が濡れたままだと、皮膚の表面の水分が蒸発する際に体温が奪われ、体が温まるまでに余計な時間がかかります。拭いてから入ることで、より効率的に体を温めることができます。
ステップ1:サウナ室——無理をしない時間設定
温度と座る位置の関係
サウナ室は上段ほど温度が高く、下段ほど低くなります。これは熱い空気が上に昇る性質によるものです。
上段と下段では10〜20℃の差があることも珍しくありません。初心者の方は、まず下段に座って体を慣らし、慣れてきたら徐々に上段に移動するのがおすすめです。

入る時間の目安
サウナ室にいる時間は、6〜12分が一般的な目安です。ただし、これはあくまで目安であり、大切なのは時間ではなく自分の体の感覚です。
「心拍数が普段の2倍くらいになったら出る」という基準がよく紹介されますが、脈拍を測りながらサウナに入るのは現実的ではありません。もっと簡単な基準としては、「背中の真ん中あたりが十分に温まったと感じたら」が目安になります。
無理に長時間入る必要はまったくありません。「あと少し」と我慢すると、のぼせや湯あたりに近い症状を引き起こすリスクがあります。
呼吸は鼻で
サウナ室では、できるだけ鼻で呼吸するようにしましょう。口で呼吸すると、熱い空気が直接喉や気管に入り、粘膜を刺激します。鼻は空気を加湿・調温する機能があるので、鼻呼吸の方が楽に過ごせます。
サウナハットの活用
頭部は体の中で最も熱の影響を受けやすい部分です。サウナハットを被ることで、頭部への熱を和らげ、のぼせを防ぐ効果があります。
特にドライサウナでは頭部と足元の温度差が大きいため、サウナハットの効果は顕著です。「サウナが苦手」という方の中には、サウナハットを被っただけで快適に過ごせるようになったという方もいます。
コンタクトレンズについて
ドライサウナでは、コンタクトレンズの装着はおすすめしません。高温・低湿度の環境でレンズが乾燥し、目のトラブルにつながる可能性があります。サウナに入る前に外すか、メガネに替えるのが安全です。
ステップ2:水風呂——一気に冷やす
サウナ室を出たら、次は水風呂です。ここが「ととのい」の鍵を握るステップです。
まずかけ水をする
サウナ室で大量の汗をかいた状態のまま水風呂に飛び込むのはマナー違反です。必ず汗をシャワーやかけ水で流してから水風呂に入りましょう。
かけ水は、手足など末端から心臓に向かって順番にかけていくと、体への負担が少なくなります。
水風呂の入り方
水風呂が苦手という方は多いですが、コツを知れば入りやすくなります。
息を大きく吸って、ゆっくりと肩まで沈みます。入った瞬間は冷たさで息が詰まりそうになりますが、10〜20秒ほどじっとしていると、体の表面に薄い温かい層(「羽衣」と呼ばれます)ができて、冷たさが和らぎます。
この「羽衣」は体温で温められた水の層なので、水風呂の中で動くと壊れてしまいます。水風呂ではなるべくじっとしているのがポイントです。
水風呂の時間の目安
水風呂にいる時間は、1〜2分程度が目安です。サウナとは逆に、「気持ちいい」と感じているうちに出るのが正解です。
長すぎると体が冷えすぎて、その後の外気浴での「ととのい」感が弱くなります。唇が紫になったり、体が震え始めたら明らかに入りすぎです。
水風呂がどうしても無理な場合
水風呂が怖い・冷たくて入れないという方は、冷水シャワーで代用することもできます。足先から少しずつ冷水をかけ、体を冷やしていきます。
水風呂に入らなくても、外気浴で涼しい空気に当たるだけでも自律神経の切り替えは起きるので、水風呂は必須ではありません。自分にとって心地よいと感じる方法を選んでください。
ステップ3:外気浴(休憩)——「ととのう」瞬間
外気浴は、サウナの3ステップの中で最も大切なパートです。ここを省略してしまう人が多いのですが、それは非常にもったいないことです。
外気浴の方法
水風呂を出たら、体の水滴を軽く拭き、外気浴スペースや休憩用の椅子に座ります(横になれるスペースがあれば、横になるとさらに効果的です)。
目を閉じて、何も考えずにぼーっとする。呼吸はゆっくりと深く。
すると、体の奥からじんわりと温かさが広がり、手足の先がジーンとしびれるような感覚、頭がふわっと軽くなる感覚が訪れることがあります。これが「ととのう」と呼ばれる状態です。
なぜ「ととのう」のか
サウナと水風呂で交感神経が極限まで刺激された後、外気浴でリラックスすると、副交感神経に一気に切り替わります。
このとき、体内ではβ-エンドルフィン(快感物質)、オキシトシン(リラックスホルモン)、セロトニン(幸福ホルモン)などが分泌されると考えられています。この多幸感が「ととのい」の正体です。
外気浴の時間
外気浴の時間は5〜10分程度が目安ですが、気持ちよければもう少し長くても構いません。体が冷えてきたと感じたら、次のセットに移るか、終了のサインです。
セット数の目安
「サウナ→水風呂→外気浴」を何セット繰り返すかは、体調と相談して決めます。
一般的には2〜3セットが目安です。1セット目よりも2セット目、2セット目よりも3セット目の方が「ととのい」の感覚が深くなるという方が多いです。
ただし、セット数を増やせば増やすほど良いというものではありません。体への負担も大きくなるので、4セット以上はよほど慣れた方でない限りおすすめしません。
サウナの種類による入り方の違い
サウナには大きく分けてドライサウナとウェットサウナ(スチームサウナ・ミストサウナ)があり、入り方が少し異なります。
ドライサウナ
温度80〜100℃、湿度10〜20%程度の高温・低湿度のサウナです。日本の温泉施設で最も一般的なタイプです。
体の表面から一気に温まるため、短時間で大量の汗をかきます。ただし、湿度が低いため、皮膚や髪の毛が乾燥しやすく、コンタクトレンズにも影響があります。
入る時間は6〜12分が目安です。
ウェットサウナ(スチーム・ミスト)
温度40〜60℃、湿度80〜100%程度の低温・高湿度のサウナです。
ドライサウナに比べて体への負担が少なく、息苦しさも感じにくいため、サウナ初心者や熱いのが苦手な方に向いています。肌や髪への乾燥ダメージも少ないです。
温度が低い分、体が温まるまでに時間がかかるため、入る時間は10〜15分程度とやや長めが目安です。
ロウリュ・アウフグース
サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」や、スタッフがタオルで熱波を送る「アウフグース」を実施している施設もあります。
蒸気が発生すると体感温度が一気に上がるため、ロウリュの直後は普段より早めにサウナ室を出ることをおすすめします。無理に耐えるとのぼせのリスクが高まります。
サウナで気をつけること
飲酒後のサウナは絶対NG
飲酒後のサウナは、脱水、不整脈、血圧の急変動など、命に関わるリスクがあります。「酒を抜くためにサウナに入る」という方がたまにいますが、これは完全な誤解です。アルコールはサウナでは抜けません。
施設スタッフとして、飲酒後にサウナに入ろうとする方をお見かけした場合は、お止めすることもあります。
食後すぐのサウナは避ける
食後は消化のために胃腸に血液が集まっています。この状態でサウナに入ると、血液が体表面に分散してしまい、消化不良を起こしやすくなります。食後1〜2時間は空けてからサウナに入りましょう。
体調が悪いときは入らない
風邪気味、睡眠不足、極度の疲労——こうした状態でサウナに入ると、体への負担が大きくなり、体調を悪化させるリスクがあります。
「サウナで風邪を治す」は都市伝説です。むしろ悪化する可能性が高いので、体調が悪いときは素直に休みましょう。
サウナ室でのマナー
サウナ室では、大きな声での会話を控える、タオルを絞らない(汗がしたたるタオルを絞ると周囲に飛び散る)、場所取りをしない、横になって複数人分のスペースを占有しない——こうした基本的なマナーを守りましょう。
施設によっては「黙サウナ」(会話禁止)をルールにしているところもあります。
サウナ後のケア
水分補給
サウナ後は必ず水分を補給してください。水やスポーツドリンクが適しています。一気に大量に飲むよりも、少量ずつこまめに飲む方が体に吸収されやすいです。
保湿
ドライサウナの後は肌が乾燥しています。湯上がりと同様に、ボディクリームや化粧水で保湿ケアをしましょう。
湯冷め対策
冬場にサウナ→水風呂→外気浴のセットを行うと、体が冷えた状態で施設を出ることになりがちです。最後のセットの後は、軽く温かいシャワーを浴びるか、湯船に少し浸かって体温を戻してから帰ると、湯冷めを防げます。
初心者におすすめの入り方
サウナ初心者の方は、以下の「やさしめプラン」から始めてみてください。
まず、体を洗って水滴を拭きます。サウナ室では下段に座り、6〜8分を目安にします。苦しくなったら時間に関係なく出てください。
サウナ室を出たらシャワーで汗を流し、水風呂は足先だけ浸ける、または冷水シャワーで代用します。慣れてきたらひざまで、腰まで、と段階的に深くしていきましょう。
外気浴スペースの椅子に座って5〜10分休憩します。目を閉じて深呼吸。ここが一番大事です。
これを2セットで終了。無理をしないことが、サウナを長く楽しむ最大のコツです。
まとめ
サウナの正しい入り方は、「サウナ→水風呂→外気浴」の3ステップを1セットとして2〜3回繰り返すことです。
サウナ前には水分補給と体の洗浄、水滴の拭き取りを。サウナ室では6〜12分を目安に、無理をせず自分の体感で判断する。水風呂では1〜2分、じっとして「羽衣」を作る。外気浴では5〜10分、何も考えずにリラックスする。
「ととのう」感覚は、この3ステップを正しく行った先にあります。特に外気浴を省略しないこと。サウナと水風呂で交感神経を刺激した後、外気浴で副交感神経に切り替わる瞬間が「ととのい」の正体です。
サウナが苦手だと感じている方は、下段に座る、時間を短くする、水風呂の代わりに冷水シャワーを使う、サウナハットを被る——こうした工夫で、驚くほど快適になることがあります。
無理をしないこと、自分のペースで楽しむこと。それがサウナを長く愛するための一番のコツです。
【参考文献】
加藤容崇『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社、2020年) ※「ととのう」のメカニズム(β-エンドルフィン、オキシトシン、セロトニンの分泌)、心拍数を基準にした入浴時間の考え方、水風呂の「羽衣」の概念はこの書籍が広く普及させた。
公益社団法人 日本サウナ・スパ協会 https://www.sauna.or.jp/
ドライサウナ(80〜100℃、湿度10〜20%)、ウェットサウナ(40〜60℃、湿度80〜100%)の数値は同協会の一般的な分類に基づく







