「サウナは好きだけど、水風呂だけはどうしても無理」
施設で働いていると、この声を本当によく聞きます。サウナ室を出て水風呂の前まで来たものの、結局入れずに戻っていく方。恐る恐る足だけ入れて、すぐ引き上げてしまう方。水風呂への苦手意識は、サウナ初心者にとって最大の壁かもしれません。
そんな方にお伝えしたいことがあります。水風呂の水温は、一日の中で動いています。
同じ施設の同じ水風呂でも、時間帯によって体感はかなり違います。つまり、狙う時間を変えるだけで「入れる水風呂」に出会える可能性があるということです。
この記事では、水温が変わる理由と、ぬるめの時間帯を狙うコツ、そして冷たさに慣れていくための入り方をお伝えします。
水風呂が苦手な人は、少数派ではありません
まず知っておいてほしいのは、水風呂が苦手な人は決して珍しくないということです。
よく聞く理由は3つあります。見ただけで「無理」と感じる冷たさへの恐怖。入った瞬間に息が止まる苦しさ。そして、急激な冷たさが体に負担なのではという不安です。
どれも自然な感覚です。サウナ人気が高まって初めて挑戦する方が増えた分、こうした戸惑いの声も増えている印象があります。「みんな平気そうなのに自分だけ」と感じる必要はまったくありません。
実は、水風呂の温度は一日の中で動いている
ここが本題です。水風呂は設定温度どおりに一日中キープされている、と思われがちですが、実際にはそうではありません。
入浴者が多いほど、水温は上がる
いちばん影響が大きいのがこれです。
水風呂に入るのは、サウナで体を温めた直後の人です。その体が次々と入ってくれば、当然ながら水風呂の温度は少しずつ上がっていきます。人が入るたびに、熱が水に移っているわけです。
冷却設備(チラー)は水を冷やし続けていますが、入ってくる熱の量が多ければ、設定温度まで下げきれない時間帯が生まれます。混雑時に「今日の水風呂、ぬるいな」と感じるのは、気のせいではありません。
逆に言えば、空いている時間帯ほど水温は設定に近づき、キリッと冷たくなります。
季節と外気温でも変わる
水風呂に足す水の元をたどれば、多くの場合は水道水です。この水温が、夏と冬ではかなり違います。
夏場は元の水が温かいため、設定温度まで下げるのに冷却設備がフル稼働することになります。冬場は比較的楽に冷やせます。同じ施設でも、季節によって水風呂の印象が変わるのはこのためです。
また、露天に水風呂がある施設では、外気温の影響も受けます。
冷却の仕組みは「追いつく・追いつかない」がある
多くの施設では、チラーと呼ばれる冷却装置が水を循環させながら冷やし続けています。水風呂の冷たさは、この装置が休みなく働いて保たれているものです。
ただし、冷却能力には限界があります。短時間に大勢が入れば、冷やす速度より熱が加わる速度が上回り、水温が上がる。これは故障ではなく、設備の性質です。仕組みを詳しく知りたい方は水風呂のチラーとは?|冷却の仕組みと温度設定を現場スタッフが解説をご覧ください。
ぬるい時間帯の狙い方
ここまでを踏まえると、苦手な方の戦略が見えてきます。あえて混雑している時間を選ぶということです。
狙い目は、サウナが賑わっている時間帯
一般的に混み合うのは、土日祝の午後から夜、平日なら仕事終わりの時間帯です。サウナ室の回転が速く、水風呂に人が出入りし続けている時間ほど、水温は上がりやすくなります。
「人が多いと落ち着かない」という方もいると思いますが、水風呂の冷たさが壁になっているなら、この時間帯のほうが入りやすいはずです。
もっとも冷えているのは、開店直後と空いている時間
逆に、いちばん冷たいのは開店直後です。営業前の時間に誰も入らないまま冷やし続けているので、設定温度まできっちり下がっています。平日の昼間など、空いている時間帯も同様です。
冷たい水風呂が好きな方には最高の狙い目ですが、苦手な方にとっては最難関の時間帯ということになります。
アウフグースの直後は一気に上がる
アウフグースなどの熱波のイベントがある施設では、終了直後に大勢が一斉に水風呂へ向かいます。この瞬間は、水温がもっとも上がりやすいタイミングです。
混雑で順番待ちになることもありますが、少し時間をずらして「人が引いた直後」に入れば、まだ温度が戻りきっていない状態を狙えます。
設定温度そのものが高い施設を選ぶ
時間帯の工夫よりも確実なのが、施設選びです。
水風呂の設定は施設によって幅があり、10度台前半の強冷を売りにするところもあれば、20度前後のマイルドな設定にしているところもあります。苦手な方は、最初から設定温度が高めの施設を選ぶのが近道です。
公式サイトに水温を明記している施設も増えてきました。口コミで確認できることもあります。
スタッフに聞くのがいちばん早い
意外と使われていないのがこの方法です。
「水風呂は何度くらいですか」「今日はぬるめですか」と聞いていただければ、たいていの施設は答えられます。その日の状況を把握しているのは現場のスタッフですから、遠慮なく尋ねてください。聞かれて困る質問ではありません。水温計を設置している施設も多いので確認してみてください。
それでも冷たいと感じるときの入り方
時間帯を選んでも、やはり冷たいものは冷たい。ここからは、少しでも楽に入るための手順です。
まず、かけ水で体を慣らす
いきなり全身で入るから怖いのです。桶で足元から順にかけ水をして、冷たさを予告してあげると、体の反応がずいぶん穏やかになります。衛生面でも、汗を流してから入るのが基本です。
手足の先から入れてみる
最初は手先や足先だけでかまいません。「冷たいけれど耐えられる」という感覚をつかむだけで十分な一歩です。
息を吐きながら、ゆっくり沈む
これがもっとも効果的なコツです。
息を止めて入ると、体が緊張して冷たさのショックを強く感じます。「ふーっ」と息を吐き続けながら、腰、お腹、肩の順にゆっくり沈んでいってください。
水風呂が苦手だというお客様にこの方法をお伝えすると、「全然違った」という反応をいただくことがよくあります。
最初は10秒から15秒で十分
「1分は入らないといけない」というルールはありません。肩まで浸かれたら、それだけで大きな前進です。
体が「もう出たい」と言ったら、それが出るサインです。我慢比べをする場所ではありません。
入ったら動かない
水中で動くと、体のまわりの水が入れ替わって冷たさを強く感じます。じっとしていると体の表面にわずかに温まった層ができ、これが「羽衣」と呼ばれます。静かにしているほど楽になるので、入ったら動かないのがコツです。
水風呂をより快適にするグッズ
入り方に慣れてきたら、道具の力を借りるとさらに快適になります。
サウナハット
頭部を熱から守ることで、サウナ室に長く入っていられるようになります。しっかり温まってから水風呂に入ると、冷たさが「不快」ではなく「気持ちいい」に変わってきます。水風呂が苦手な方ほど、まず温まりきることが大切です。
詳しくはサウナハットを被らないと損する理由|知らないと後悔する3つのデメリットをご覧ください。
速乾タオル
水風呂から上がった後、素早く水気を拭き取ると体が冷えすぎません。薄くて吸水力の高いマイクロファイバー素材は、サウナ利用に向いています。
サウナポンチョ
外気浴のときに羽織ると、心地よい体温を保ったままリラックスできます。冷えすぎが苦手な方には特におすすめです。
「ぬるすぎる」と感じたときは
ここまでぬるい時間帯を狙う話をしてきましたが、逆のケースにも触れておきます。
混雑していないのに明らかにぬるい、いつ行ってもぬるい——そんなときは、冷却設備の不調ということもあります。チラーが止まってしまうと、水温は水道水に近いところまで上がってしまいます。夏場なら、水風呂と呼べない温度になることもあります。
お客様の立場では判断がつかないと思いますので、気になったらスタッフに伝えてください。施設側が気づいていない場合もあり、教えていただけるとありがたいです。
水風呂なしでも、サウナは楽しめます
どうしても無理なら、入らないという選択で何の問題もありません。
シャワーで少しずつ水温を下げていく方法もありますし、サウナ室を出たあと外気浴だけで休むのでも、十分にリラックスできます。水風呂ほどの落差はありませんが、それで得られるものがないわけではありません。
水風呂はサウナの必須条件ではありません。 自分のペースで楽しむことが何より大切です。サウナ全体の流れはサウナの正しい入り方|初心者でも「ととのう」ための手順とコツを現場スタッフが解説で解説しています。
無理をしないことが大前提
最後に、安全の話をさせてください。
サウナと水風呂の急激な温度差は、体に少なからず負担をかけます。心臓や血圧に持病のある方、体調がすぐれない日、寝不足の日、飲酒後は、水風呂を避けてください。
反応には個人差があり、少しでも異変を感じたらすぐに上がって休むことが大切です。気になる症状がある場合は、医療機関など専門家にご相談ください。持病をお持ちの方は、利用前に主治医に確認しておくと安心です。
サウナで体調を崩す原因についてはサウナで気持ち悪くなる理由、のぼせとの違いは温泉でのぼせるとは?もあわせてご覧ください。
まとめ
水風呂の温度は一日の中で動いています。入浴者が多い時間帯ほど水温は上がり、空いている時間や開店直後ほど冷たくなります。季節によって元の水温も変わります。
だからこそ、苦手な方の戦略は「あえて混雑した時間を狙う」こと。そして、設定温度が高めの施設を選ぶこと。分からなければスタッフに聞いてしまうのが、いちばん早い方法です。
入るときは、かけ水で慣らし、息を吐きながらゆっくり沈み、入ったら動かない。最初は10秒でも十分です。
水風呂は、慣れると「これがないと物足りない」と感じるようになります。けれど、無理をして好きになるものでもありません。今日は入れなくてもいい。そのくらいの気持ちで、ぬるい時間帯から少しずつ試してみてください。
参考文献
- 厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領等について」 https://www.mhlw.go.jp/topics/2001/0111/tp1106-1.html
- 厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について(令和元年9月19日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001402024.pdf
- 厚生労働省「入浴施設の衛生管理の手引き」 https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001401967.pdf
- 消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_042
- 環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」 https://www.env.go.jp/content/900492872.pdf








