温泉のpHが高すぎると悪影響?|酸性・アルカリ性が肌に与える影響

悩みトラブル

温泉施設の浴室に掲示されている温泉成分表示を見ると、必ず「pH〇〇」という数値が記載されています。しかし、この数値が何を意味し、どのように肌に影響するのかを理解している人は少ないのではないでしょうか。

温泉施設で働いていると、pHの違いによって温泉の性質が大きく変わることを実感します。同じ「温泉」でも、酸性とアルカリ性では、肌への影響がまったく異なるのです。今回は、温泉のpHについて、その基本から肌への影響まで詳しく解説します。

pHとは何か

pHは「水素イオン濃度」を示す指標で、液体が酸性かアルカリ性かを表す数値です。

pH0〜14のスケール

pHは0から14の数値で表されます。

  • pH7: 中性(純粋な水)
  • pH7未満: 酸性(数値が小さいほど酸性が強い)
  • pH7超: アルカリ性(数値が大きいほどアルカリ性が強い)

身近な例で言うと、レモン汁はpH2程度の酸性石鹸水はpH10程度のアルカリ性です。

人間の肌のpH

健康な人間の肌表面は、pH4.5〜6.0程度の弱酸性に保たれています。これが肌のバリア機能を維持する上で重要な役割を果たしています。

温泉のpH分類

温泉は、pHによって次のように分類されます。

酸性泉(pH3未満)

レモン汁に近い強い酸性です。刺激が強く、ピリピリとした感覚があります。

弱酸性泉(pH3〜6)

肌に近い酸性で、比較的刺激が穏やかです。

中性泉(pH6〜7.5)

最も刺激が少なく、敏感肌でも安心して入れます。

弱アルカリ性泉(pH7.5〜8.5)

「美肌の湯」として人気があります。ぬるぬるとした肌触りが特徴です。

アルカリ性泉(pH8.5以上)

強いアルカリ性で、角質を溶かす作用が強いです。肌がツルツルになる反面、刺激も強めです。

日本の温泉で多いpH帯

日本の温泉は、弱酸性〜弱アルカリ性(pH6〜8.5程度)のものが最も多く、極端な酸性泉やアルカリ性泉は比較的少数派です。

酸性泉の特徴と肌への影響

酸性泉は、pH3未満の強い酸性を持つ温泉です。

酸性泉の特徴

①強い殺菌力
酸性の強さによって、細菌や雑菌を殺菌する効果があります。そのため「皮膚病に効く」と言われることが多いです。

②ピリピリとした刺激
肌に触れるとピリピリとした感覚があります。傷があると特にしみます。

③肌の引き締め効果
酸性の収れん作用により、毛穴が引き締まり、肌がキュッとする感覚があります。

④金属臭や酸っぱい臭い
温泉によっては、独特の酸っぱい臭いがすることがあります。

肌への影響

メリット:

  • 殺菌効果により、ニキビや皮膚炎に良いとされる
  • 毛穴が引き締まり、肌がすべすべする
  • 脂性肌の人には向いている

デメリット:

  • 刺激が強く、敏感肌の人にはピリピリ感が辛い
  • 長湯すると肌が乾燥しやすい
  • 傷口にしみる
  • アトピー性皮膚炎など、肌が弱い人は注意が必要

代表的な酸性泉の温泉地

  • 玉川温泉(秋田県):pH1.2、日本屈指の強酸性泉
  • 草津温泉(群馬県):pH2程度
  • 蔵王温泉(山形県):pH1.3〜1.6

これらの温泉は「湯治場」として古くから利用されてきました。

アルカリ性泉の特徴と肌への影響

アルカリ性泉は、pH8.5以上の温泉を指します。

アルカリ性泉の特徴

①角質を柔らかくする
アルカリ性のお湯は、肌の表面にある古い角質を溶かし、柔らかくします。これが「美肌効果」の正体です。

②ぬるぬるとした肌触り
アルカリ性のお湯は、独特のぬるぬるとした感触があります。石鹸水のような感覚です。

③「美肌の湯」と呼ばれる理由
角質が取れることで、肌がツルツル・すべすべになります。そのため、女性に人気があります。

④無臭のことが多い
硫黄泉などと違い、アルカリ性泉は無臭のことが多いです。

肌への影響

メリット:

  • 古い角質が取れて、肌がツルツルになる
  • 肌が明るく見える
  • クレンジング効果がある
  • 乾燥肌の人には適度に角質が取れて良い

デメリット:

  • 長湯すると角質を取りすぎて、肌が乾燥しやすくなる
  • 入浴後の保湿ケアが必須
  • 敏感肌の人は刺激を感じることがある
  • 強アルカリ性(pH10以上)では、肌がピリピリすることも

代表的なアルカリ性泉の温泉地

  • 美人の湯として知られる温泉の多くがアルカリ性泉
  • pH9〜10程度の温泉が「美肌の湯」として人気

アルカリ性泉は日本全国に広く分布しており、「美肌の湯」として観光客に人気です。

中性泉の特徴

中性泉は、pH6〜7.5程度の温泉です。

中性泉の特徴

①最も刺激が少ない
人間の肌に近いpHのため、刺激がほとんどありません。

敏感肌でも安心
肌が弱い人、子ども、高齢者でも安心して入浴できます。

③長湯しやすい
刺激が少ないため、長時間入浴しても肌への負担が小さいです。

単純温泉に多い
成分が薄い単純温泉は、中性に近いことが多いです。

肌への影響

刺激が少ないため、肌トラブルが起こりにくいです。特別な「美肌効果」はありませんが、温泉の温熱効果により、血行促進やリラックス効果は十分に得られます。

温泉初心者や、肌が敏感な人には、まず中性泉から試すことをおすすめします。

pHと泉質の関係

pHと泉質(温泉の種類)には、ある程度の関連があります。

酸性になりやすい泉質

硫黄泉
硫黄成分が酸性を示すため、pH2〜4程度のことが多いです。

酸性泉
硫酸や塩酸などの酸性成分を含むため、pH3未満の強酸性です。

アルカリ性になりやすい泉質

炭酸水素塩泉(重曹泉)
炭酸水素ナトリウム(重曹)を含むため、アルカリ性になります。pH8〜9程度。

ナトリウム泉
ナトリウム成分が多いと、弱アルカリ性になる傾向があります。

pHだけでは泉質は決まらない

同じ硫黄泉でも、含まれる他の成分によってpHが変わることがあります。また、塩化物泉は中性〜弱アルカリ性が多いなど、泉質とpHは密接に関係していますが、一対一で対応するわけではありません。

泉質とpHの両方を確認することで、より正確に温泉の性質を理解できます。

肌質別のおすすめpH

自分の肌質に合わせて、温泉を選ぶことが大切です。

敏感肌:中性〜弱アルカリ性(pH6.5〜8)

刺激が少ない中性泉や、穏やかな弱アルカリ性泉がおすすめです。酸性泉や強アルカリ性泉は避けたほうが無難です。

脂性肌:弱酸性〜酸性(pH3〜6)

酸性泉の殺菌効果と収れん作用により、皮脂をコントロールできます。ニキビ肌にも効果的です。

乾燥肌:弱アルカリ性(pH7.5〜8.5)

適度に角質を柔らかくし、肌の透明感を引き出します。ただし、長湯は避け、入浴後は必ず保湿ケアをしましょう。強アルカリ性(pH9以上)は、乾燥が悪化する可能性があるため注意が必要です。

普通肌:どのpHでもOK

肌トラブルがない普通肌の人は、どのpHの温泉でも楽しめます。気分や好みで選びましょう。

アトピー性皮膚炎:中性〜弱アルカリ性

刺激の少ない中性泉が基本です。酸性泉は刺激が強すぎることが多いです。ただし、症状や個人差が大きいため、医師に相談してから入浴しましょう。

pH別の入浴時の注意点

pHによって、入浴時に気をつけるべきポイントが異なります。

酸性泉(pH3未満)での注意点

①上がり湯を推奨
入浴後は、シャワーで軽く酸性成分を洗い流しましょう。肌に残ったまま乾燥すると、刺激が続きます。

②長湯禁物
5〜10分程度にとどめましょう。長時間浸かると、肌への刺激が強すぎます。

③傷がある場合は避ける
切り傷、擦り傷がある場合は、非常にしみます。無理に入らないほうが良いでしょう。

④金属製のアクセサリーは外す
酸性のお湯は金属を腐食させるため、アクセサリーは必ず外しましょう。

アルカリ性泉(pH8.5以上)での注意点

①入浴後の保湿必須
角質が取れて肌が乾燥しやすい状態になっているため、入浴後すぐに保湿ケアをしましょう。

②長湯しすぎない
角質を取りすぎると、バリア機能が低下します。10分程度を目安にしましょう。

③石鹸の使用は控えめに
アルカリ性のお湯自体にクレンジング効果があるため、石鹸を使いすぎると皮脂を取りすぎます。

④敏感肌の人は様子を見ながら
強アルカリ性泉は刺激を感じることもあるため、最初は短時間から試しましょう。

極端なpHは刺激が強い

pH2以下の強酸性泉や、pH10以上の強アルカリ性泉は、効果が高い反面、刺激も非常に強いです。初めて入る場合は、必ず短時間から始め、肌の反応を確認しながら入浴しましょう。

現場で見るpH管理

温泉施設では、pHをどのように管理しているのでしょうか。

源泉のpHは変動しにくい

温泉の源泉そのもののpHは、基本的に安定しており、大きく変動することはありません。温泉成分表示に記載されているpHは、源泉を分析した時点の数値です。

加水するとpHが変わることも

源泉温度が高すぎて加水する場合、水道水(pH7程度の中性)と混ざることで、源泉のpHが変化することがあります。

例えば、pH3の酸性泉に加水すると、pH4〜5程度に薄まることがあります。逆に、pHが高いアルカリ性泉に加水すると、若干pHが下がります。

温泉成分表示での確認方法

浴室に掲示されている温泉成分表示には、以下の情報が記載されています。

  • pH値: 源泉の水素イオン濃度
  • 加水の有無: 加水している場合、pHが源泉そのものと異なる可能性

「加水あり」と記載されている場合は、源泉のpHよりも中性に近づいていることが多いです。

循環式でもpHはほぼ変わらない

循環ろ過や塩素消毒をしても、温泉のpH自体はほとんど変化しません。ただし、塩素を大量に投入した場合、わずかにpHが変動することがあります。

まとめ

温泉のpHは、酸性・アルカリ性を示す重要な指標で、肌への影響が大きく異なります。

pHの分類:

  • 酸性泉(pH3未満):殺菌力が強く、刺激が強い
  • 弱酸性泉(pH3〜6):比較的刺激が穏やか
  • 中性泉(pH6〜7.5):最も刺激が少ない
  • 弱アルカリ性泉(pH7.5〜8.5):美肌効果、ぬるぬる感
  • アルカリ性泉(pH8.5以上):角質を溶かす作用が強い

酸性泉の特徴:

  • 殺菌力、引き締め効果
  • ピリピリとした刺激
  • 脂性肌向き
  • 長湯禁物、上がり湯推奨

アルカリ性泉の特徴:

  • 角質を柔らかくする、美肌効果
  • ぬるぬるとした肌触り
  • 乾燥肌向き(適度な入浴時間で)
  • 入浴後の保湿必須

肌質別のおすすめ:

  • 敏感肌:中性〜弱アルカリ性
  • 脂性肌:弱酸性〜酸性
  • 乾燥肌:弱アルカリ性
  • 普通肌:どれでもOK

入浴時の注意:

  • 極端なpHは刺激が強い
  • 自分の肌質に合ったpHを選ぶ
  • 長湯を避け、入浴後のケアを忘れずに

温泉成分表示のpH値を確認することで、自分の肌に合った温泉を選べるようになります。「美肌の湯」だからといって、すべての人に良いわけではありません。

自分の肌質を理解し、pHを確認しながら温泉を選ぶことで、より快適で効果的な温泉体験ができるはずです。

【参考文献】

温泉分析書の見方 | 日本温泉協会
日本温泉協会の公式サイトです。全国の温泉地や加盟施設を検索、宿泊予約ができる。また協会の活動や刊行物、催し物を紹介。温泉のことを学ぶなら温泉百科をご覧ください。
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