温泉を楽しんだ後、髪を洗ったら「ギシギシして指が通らない」「ゴワゴワして広がる」という経験はありませんか?普段使っているシャンプーなのに、なぜか温泉の後だけ髪の状態が悪くなる…そんな悩みを持つ人は多いと思います。
温泉施設で働いていると、「温泉で髪がギシギシになった」という声をよく聞きます。実は、これには温泉の泉質とpHが大きく関係しています。
今回は、温泉で髪がギシギシになる理由と、その対策について詳しく解説します。
髪がギシギシになるメカニズム
まず、なぜ温泉で髪がギシギシになるのか、そのメカニズムを理解しましょう。
髪の構造(キューティクル)
髪の表面は、キューティクルという薄い層で覆われています。キューティクルは、魚の鱗のように重なり合っており、髪の内部を保護しています。
健康な髪では、キューティクルがきれいに閉じていて、髪がツルツルと滑らかです。
アルカリ性・酸性がキューティクルを開く
髪のキューティクルは、pHの影響を受けやすい性質があります。
アルカリ性の温泉(pH8以上)に入ると: キューティクルが開き、髪の内部が露出します。この状態で髪が摩擦を受けると、キューティクルが剥がれたり、髪同士が絡まったりして、ギシギシとした感触になります。
酸性の温泉(pH3以下)に入ると: 強い酸性は、髪のタンパク質を変性させ、キューティクルを傷めます。これもギシギシの原因になります。
硫黄が髪のタンパク質に作用
硫黄泉では、硫黄成分が髪のケラチン(タンパク質)と反応します。髪にはもともと硫黄を含むアミノ酸(システイン)が含まれており、温泉の硫黄と化学反応を起こすことで、髪質が変化します。
この反応により、髪がゴワゴワと硬くなることがあります。
ミネラルの付着
温泉に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルが、髪の表面に付着します。これらのミネラルが蓄積すると、髪がゴワゴワして重くなります。
特に、硬度の高い温泉(ミネラル分が多い温泉)では、この現象が顕著に現れます。
泉質別の髪への影響
泉質によって、髪への影響は大きく異なります。
アルカリ性泉:キューティクルが開く
pH8.5以上の強アルカリ性泉は、髪のキューティクルを大きく開かせます。
影響:
- 髪がギシギシ、ゴワゴワになる
- 指通りが悪くなる
- 髪が絡まりやすくなる
- 乾燥しやすくなる
代表的な温泉: 「美肌の湯」として人気のアルカリ性泉は、肌には良くても、髪には負担が大きいです。
酸性泉:タンパク質変性
pH3未満の強酸性泉は、髪のタンパク質を変性させます。
影響:
- 髪がパサパサになる
- ゴワつきが出る
- 色落ちしやすい
- ダメージが蓄積する
代表的な温泉: 草津温泉、蔵王温泉など。
硫黄泉:最も影響大
硫黄泉は、髪への影響が最も大きい泉質です。
影響:
- 髪が著しくギシギシになる
- 硫黄臭が髪に残る
- カラーリングが色落ちする
- パーマが取れやすい
硫黄泉の多くは酸性でもあるため、ダブルでダメージを受けます。
硫黄泉については、当サイトの「硫黄泉とは?」の記事でも詳しく解説しています。
塩化物泉:比較的影響少ない
塩化物泉は、中性〜弱アルカリ性であることが多く、髪への影響は比較的少ないです。
影響:
- 多少のゴワつきは出ることがある
- ミネラルの付着で重くなることも
- 全体的には穏やか
塩化物泉については、当サイトの「塩化物泉とは?」の記事でも詳しく解説しています。
単純温泉:最も影響少ない
単純温泉は、成分が薄く刺激が少ないため、髪への影響も最小限です。
影響:
- ほとんど影響なし
- 普段のお風呂と変わらない
- 髪を気にせず楽しめる
髪のダメージが気になる人は、単純温泉を選ぶのがおすすめです。
単純温泉の詳細は、当サイトの「単純温泉は効能がない?」の記事をご参照ください。
pHと髪の関係
髪の状態は、pHに大きく左右されます。
健康な髪のpHは弱酸性(4.5〜5.5)
健康な髪と頭皮のpHは、**弱酸性(pH4.5〜5.5程度)**です。この状態では、キューティクルがきれいに閉じており、髪がツヤツヤとしています。
市販のシャンプーやコンディショナーの多くは、弱酸性に調整されているのは、このためです。
アルカリ性泉(pH8以上)の影響
アルカリ性の温泉に入ると、髪のpHがアルカリ側に傾きます。
pH8〜9(弱アルカリ性): キューティクルが軽く開き、多少のギシギシ感が出ます。適切なヘアケアをすれば、大きな問題にはなりません。
pH9以上(強アルカリ性): キューティクルが大きく開き、髪が著しくギシギシします。髪の内部のタンパク質や水分が流出し、ダメージが蓄積します。
酸性泉(pH3以下)の影響
強い酸性も、髪には良くありません。
pH3〜4(弱酸性): 健康な髪に近いpHなので、影響は少ないです。
pH3未満(強酸性): タンパク質が変性し、髪が硬くゴワゴワになります。キューティクルも傷みやすくなります。
中性泉(pH6〜7.5)は影響が少ない
中性に近い温泉は、髪のpHとの差が小さいため、影響が最も少ないです。
髪を気にせず温泉を楽しみたい場合は、pH値を確認して、pH6〜8程度の温泉を選ぶと良いでしょう。
温泉のpHについて詳しくは、当サイトの「温泉のpHとは?」の記事をご覧ください。
カラーリング・パーマへの影響
温泉は、カラーリングやパーマにも影響を与えます。
色落ちしやすい泉質
アルカリ性泉: キューティクルが開くことで、髪の内部に定着していた染料が流出しやすくなります。特に、ヘアカラーをした直後に強アルカリ性泉に入ると、色が一気に抜けることがあります。
硫黄泉: 硫黄成分が、ヘアカラーの染料を分解します。特に、明るい色(アッシュ系、ピンク系など)は、色落ちが顕著です。
酸性泉: 強い酸性も、染料を変質させ、色落ちを促進します。
パーマが取れやすい理由
パーマは、髪のタンパク質(システイン結合)を化学的に切断し、再結合させることで形を作ります。
温泉の成分、特に硫黄やアルカリ性の影響で、この結合が弱まり、パーマが取れやすくなります。
施術後の温泉は避けるべき期間
ヘアカラーやパーマをした後は、最低でも1週間、できれば2週間は、刺激の強い温泉(硫黄泉、強アルカリ性泉、酸性泉)を避けたほうが良いでしょう。
施術直後は、髪のキューティクルが開いており、染料やパーマ液が定着していない状態です。この時期に温泉に入ると、せっかくの施術が台無しになることがあります。
温泉で髪を守る方法
温泉でも、工夫次第で髪へのダメージを最小限に抑えられます。
①髪を湯船に浸けない(まとめる、タオルで包む)
最も効果的な方法は、髪を湯船に浸けないことです。
髪をまとめる: 髪を頭の上で束ねて、お団子やポニーテールにします。これだけで、髪が温泉に触れる面積を大幅に減らせます。
タオルで包む: 髪をまとめた上から、小さなタオルで包むと、さらに保護できます。

②シャワーキャップの活用
温泉施設によっては、シャワーキャップの使用が可能です(施設によっては禁止されている場合もあるため、確認が必要)。
シャワーキャップで髪を完全に覆えば、温泉の成分が髪に触れるのを防げます。

③入浴前に髪を濡らす
入浴前に、真水で髪を濡らしておくと、温泉成分の吸収を多少抑えられます。
髪が乾いた状態で温泉に入ると、温泉成分がダイレクトに髪に浸透しやすくなります。
④トリートメントで保護
入浴前に、洗い流さないタイプのヘアトリートメントやヘアオイルを髪に塗っておくと、温泉成分から髪を保護できます。
これにより、キューティクルが開くのを防ぎ、ダメージを軽減できます。

入浴後のヘアケア
温泉から上がった後のケアが、最も重要です。
①すぐにシャンプー・コンディショナー
温泉から上がったら、できるだけ早く髪を洗いましょう。
温泉成分が髪に残ったままだと、キューティクルが開いたままになり、ダメージが進行します。
シャンプー: 温泉成分やミネラルをしっかり洗い流します。泡立てて、優しく洗いましょう。
コンディショナー: 開いたキューティクルを閉じ、髪を保護します。毛先を中心に、しっかりなじませましょう。
②弱酸性シャンプーの使用
アルカリ性泉に入った後は、弱酸性のシャンプーを使うと効果的です。
アルカリ性に傾いた髪を、弱酸性に戻すことで、キューティクルが閉じやすくなります。
③ヘアオイル・トリートメント
シャンプー・コンディショナーの後、洗い流さないタイプのヘアオイルやトリートメントを使いましょう。
髪の表面をコーティングし、水分の蒸発を防ぎ、ツヤを与えます。
④早めに乾かす

髪が濡れたままだと、キューティクルが開いた状態が続き、ダメージを受けやすくなります。
温泉施設を出る前に、ドライヤーでしっかり髪を乾かしましょう。自然乾燥は避けてください。
ドライヤーの使い方:
- タオルドライで水分を取る(ゴシゴシこすらず、押さえるように)
- ドライヤーは髪から15〜20cm離す
- 根元から毛先に向かって乾かす
- 冷風で仕上げるとキューティクルが閉じる


髪に優しい泉質の選び方
髪のダメージを避けたい場合は、泉質選びが重要です。
単純温泉、中性泉を選ぶ
単純温泉や中性泉(pH6〜7.5)は、髪への影響が最も少ないです。
温泉を楽しみつつ、髪を守りたい人には最適です。
pH値を確認する
温泉成分表示で、pH値を確認しましょう。
髪に優しい範囲: pH6〜8程度
要注意: pH3未満(強酸性)、pH9以上(強アルカリ性)
硫黄泉・強アルカリ性泉は要注意
硫黄泉や強アルカリ性泉(pH9以上)は、髪への影響が大きいため、カラーリングやパーマをしている人は避けたほうが無難です。
どうしても入りたい場合は、上記の髪を守る方法をしっかり実践しましょう。
現場で見る髪トラブルの相談
温泉施設で働いていると、髪に関する相談をよく受けます。
①「髪がギシギシになった」という声
特にアルカリ性泉や硫黄泉の施設では、「髪がギシギシして困る」という声を頻繁に聞きます。
利用者からは、「事前に知っていれば、髪をまとめたのに」という意見もあります。
②カラーが落ちたという声
ヘアカラーをした直後に硫黄泉に入り、「色が抜けた」という声も時々あります。
特に、明るい色や特殊なカラー(ピンク、アッシュなど)は、目に見えて色落ちするため、注意が必要です。
③施設側の対応
多くの温泉施設では、浴室や脱衣所に「ヘアカラー・パーマ直後の入浴にご注意ください」といった掲示をしています。
また、受付で「髪へのダメージが気になる方は、髪をまとめることをおすすめします」とアナウンスすることもあります。
④シャワーキャップの提供
一部の施設では、希望者にシャワーキャップを貸し出したり、販売したりしています。一枚当たり50円~100円程度で安価となってます。
髪を守りたい利用者にとって、ありがたいサービスです。
まとめ
温泉で髪がギシギシになるのは、泉質とpHが原因です。
髪がギシギシになる理由:
- アルカリ性・酸性がキューティクルを開く
- 硫黄が髪のタンパク質に作用
- ミネラルが髪に付着
泉質別の影響:
- アルカリ性泉:キューティクルが開く
- 酸性泉:タンパク質変性
- 硫黄泉:最も影響大
- 塩化物泉:比較的影響少ない
- 単純温泉:最も影響少ない
pHと髪の関係:
- 健康な髪はpH4.5〜5.5(弱酸性)
- pH8以上、pH3未満は要注意
- pH6〜8程度が髪に優しい
カラーリング・パーマへの影響:
- 色落ちしやすい
- パーマが取れやすい
- 施術後1〜2週間は刺激の強い温泉を避ける
髪を守る方法:
- 髪を湯船に浸けない(まとめる、タオルで包む)
- シャワーキャップの活用
- 入浴前にトリートメントで保護
- 入浴後すぐにシャンプー・コンディショナー
- 弱酸性シャンプーを使う
- ヘアオイル・トリートメントで保湿
- 早めに乾かす
髪に優しい泉質:
- 単純温泉、中性泉(pH6〜7.5)を選ぶ
- 硫黄泉、強アルカリ性泉は要注意
温泉と髪の健康は、対策次第で両立できます。髪を湯船に浸けない、入浴後すぐに洗う、といった簡単な工夫で、ダメージを最小限に抑えられます。
泉質を選び、適切なケアをすれば、髪を気にせず温泉を楽しめます。温泉の効能と髪の健康、どちらも大切にしながら、温泉ライフを満喫しましょう。
【参考文献】






