温泉の濁度と色度とは?|白濁の正体と水質基準を現場スタッフが解説

温泉について学ぶ

温泉に入ったとき、お湯が白く濁っていたり、茶色っぽく色づいていたりすることがあります。「これって汚れているんじゃないの?」と不安になる方もいれば、「濁り湯こそ本物の温泉だ」と喜ぶ方もいます。

実はこの「濁り」と「色」、温泉の世界ではきちんと数値で管理されている項目です。温泉分析書には「濁度」「色度」という欄があり、さらに公衆浴場の水質基準としても定められています。

この記事では、温浴施設で働く現場スタッフの視点から、濁度と色度とは何か、白濁や色づきの正体、そして法令で定められた基準までを解説します。「濁っている=汚い」ではないことが、読み終わるころには分かるはずです。

濁度と色度とは|水の「にごり」と「いろ」を数値化したもの

まずは言葉の意味から整理しましょう。

濁度(だくど)は、水の濁り具合を表す数値です。水中に浮遊している微粒子がどれくらいあるかを示し、単位は「度」で表されます。粒子が多いほど光が散乱して濁って見えるため、数値が大きくなります。

色度(しきど)は、水についている色の程度を表す数値です。溶け込んだ物質によって水が色づいている度合いを示し、こちらも「度」で表されます。濁りは粒子によるもの、色は溶けている成分によるもの——この違いがポイントです。

どちらも、温泉分析書に記載される項目のひとつです。分析書全体の読み方は、温泉成分表示の見方|現場スタッフが教える「表示板の裏読み」で解説していますので、あわせてご覧ください。

温泉が濁る・色づく理由

では、温泉はなぜ濁ったり色づいたりするのでしょうか。原因は大きく分けて2つあります。

1. 泉質そのものに由来するもの

温泉本来の成分によって濁りや色が生まれるケースです。これは温泉の個性であり、まったく問題のない濁りです。

白濁の代表格は硫黄泉です。硫黄成分が空気に触れて微粒子となり、お湯が乳白色に見えます。「これぞ温泉」という見た目で人気があります。硫黄泉については硫黄泉とは?|特徴・効能・独特の香りの理由を解説をご覧ください。

赤褐色・茶色になるのは含鉄泉です。地下では透明だった鉄分が、空気に触れて酸化することで色づきます。湧きたては無色透明で、時間とともに茶色くなっていく——という変化を見せる温泉もあります。含鉄泉とは?|赤褐色の湯の正体と特徴を現場スタッフが解説で詳しく解説しています。

黄色に変わるのは含よう素泉です。ヨウ素が酸化することで、うがい薬のような色合いになります。こちらは含よう素泉とは?|特徴・効能・うがい薬のような色の理由を現場スタッフが解説をどうぞ。

このほか、カルシウムなどの成分が析出して白く濁ることもあります。お湯の中に浮かぶ粒として現れれば、それは湯の花です。湯の花は汚い?|汚れとの違いと見分け方を現場スタッフが解説もあわせて読むと、濁りの正体がより立体的に見えてきます。

2. 汚れ・管理状態に由来するもの

もうひとつが、本来あってはならない濁りです。

入浴者の垢や皮脂が蓄積し、ろ過が追いつかなくなると、お湯全体がぼんやり濁って見えることがあります。ろ過装置の不調や逆洗不足も原因になります。浴槽の汚れについては温泉の浴槽に垢が浮いてる…これって汚い?|原因と施設の対処を現場スタッフが解説で解説しています。

また、配管内のバイオフィルム(生物膜)が剥離して流れ出し、濁りとして現れることもあります。これは衛生上の警戒サインで、放置できません。温泉の「レジオネラ菌」って何が危険?|感染経路と予防対策とも関わる問題です。

つまり、同じ「濁り」でも、歓迎すべきものと対処が必要なものがあるわけです。

公衆浴場の水質基準としての濁度・色度

ここからが施設管理の話です。

厚生労働省の「公衆浴場における水質基準等に関する指針」では、原水・原湯・浴槽水などについて水質基準が定められています。この中に濁度と色度の項目があり、原水・原湯については濁度5度以下、色度5度以下を目安とすることが示されています。浴槽水についても、濁度について基準が設けられています。

ただし重要なのは、温泉本来の成分による濁りや色は、この基準の適用外として扱われるという考え方です。硫黄泉が白いのは当たり前で、それを「基準違反」とするのは意味がありません。基準が問題にしているのは、あくまで汚れや管理不良による濁りです。

細かな運用は自治体の条例や指導によって異なるため、自施設の基準は所轄の保健所に確認するのが確実です。保健所の立入検査については保健所の立入検査とは?|温泉施設で見られるポイントを現場スタッフが解説をご覧ください。

現場ではどう判断しているのか

数値の話をしましたが、現場で毎日濁度計を回しているかというと、実際には目視での確認が中心になります。そのとき見ているポイントをお伝えします。

浴槽の底が見えるか

もっとも分かりやすい目安がこれです。浴槽の底や、湯の中の手のひらが見えるかどうか。濁り湯の温泉では底が見えないこともありますが、その場合は「いつもと同じ濁り方か」を基準にします。

いつもと違う濁り方をしていないか

ここが現場感覚の核心です。毎日同じ浴槽を見ていると、その日の「らしくない濁り」に気づけるようになります。硫黄泉の白濁はいつもの見た目ですが、透明だったはずの浴槽が急に白っぽくなっていれば、それは異常のサインです。

とくに注意しているのが、濁りの色と質感です。泉質由来の濁りは均一で、ある種の透明感があります。一方、汚れによる濁りはくすんでいて、油膜や浮遊物を伴うことが多い。この違いは、見慣れてくると案外はっきり分かります。

他の数値と合わせて見る

濁りが気になるときは、残留塩素の値も併せて確認します。汚れが多ければ塩素が消費されて数値が下がるため、「濁っていて塩素も低い」という組み合わせは、汚れが原因である可能性が高くなります。塩素が上がらない原因については温泉施設で塩素が上がらない!|原因8つと現場の対処法を現場スタッフが解説で整理しています。

濁りが出たときの対処

原因によって対応は変わります。

ろ過が追いついていないなら、逆洗を行ってろ材をきれいにします。温泉のろ過と逆洗って何?|お湯をきれいに保つ仕組みを現場スタッフが解説で仕組みを解説しています。

それでも改善しない、あるいは原因が特定できない濁りが続く場合は、換水によってリセットするのが確実です。温泉の換水とは?|法令で決まる頻度と緊急換水の判断基準もあわせてご覧ください。配管由来が疑われる場合は、配管洗浄まで踏み込む判断が必要になります。

いずれにせよ、「よく分からない濁り」を放置しないことが大切です。原因不明の濁りは、何かが起きているサインだと考えます。

利用者として濁りをどう見るか

お客様の立場では、濁りをどう受け止めればよいのでしょうか。

まず、濁っている=汚いではないということ。硫黄泉の白濁、含鉄泉の赤褐色、含よう素泉の黄色——これらは温泉の個性であり、むしろその温泉の証です。掲示されている泉質を見れば、その色に理由があることが分かります。

一方で、気になる濁りもあります。油膜が張っている、異臭がする、浮遊物が多い、透明なはずの浴槽が濁っている——こうしたときは、遠慮なくスタッフに声をかけてください。施設としても、お客様からの指摘で気づくことがあります。伝えていただくことは、決して迷惑ではありません。

また、色や濁りは、その温泉がどんな成分を含んでいるかのヒントでもあります。浴感とあわせて味わうと、温泉の楽しみ方が広がります。温泉の浴感とは?|ツルツル・トロトロ・ピリピリの正体を解説もぜひどうぞ。

時間とともに変わる濁り・色

最後に、面白い現象をひとつ。温泉の濁りや色は、時間とともに変化することがあります

含鉄泉や含よう素泉は、湧きたてが無色透明で、空気に触れるほど色づいていきます。硫黄泉も、湧出直後より時間が経ってからのほうが白濁が強くなることがあります。つまり、朝一番の浴槽と、夕方の浴槽では見た目が違うこともあるのです。

これは、地下の高い圧力のもとで溶けていた成分が、地上に出て酸化したり気化したりすることで起こります。地質学的に見れば、地下の環境と地上の環境の違いが、目に見える形で現れているとも言えます。同じ温泉に時間を変えて入ってみると、その変化に気づけるかもしれません。

まとめ|濁度・色度は温泉の個性と管理状態を映す

濁度は水の濁り具合、色度は色づきの度合いを数値化したものです。温泉が濁る理由には、硫黄・鉄・ヨウ素といった泉質由来のものと、汚れやろ過不良といった管理由来のものがあります。

公衆浴場の水質基準では濁度・色度の目安が定められていますが、温泉本来の成分による濁りは別扱いです。現場では数値だけでなく、「いつもと違う濁り方をしていないか」という目視の感覚も重要な判断材料になっています。

次に温泉に入るとき、お湯の色や濁りを少し意識してみてください。その白さや茶色には、その土地の地下が育んだ理由があります。そして、透明であるべき浴槽が透明であることにも、日々の管理という理由があるのです。

参考文献

ひねこじた 温泉

温浴施設で働く現役スタッフ。ガイドブックに載らない温泉の裏側を施設スタッフ目線で発信しています。

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