水風呂はどうやって冷やしている?|チラーによる冷水循環の仕組みと温度設定を現場スタッフが解説

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サウナで火照った体を、キリッと冷たい水風呂に沈める瞬間。サウナ好きにはたまらないこの快感を支えているのが、水風呂を冷たく保つ「冷却設備」です。当たり前のように冷たい水風呂ですが、あの冷たさは自然に保たれているわけではありません。多くの施設では、専用の機械が休みなく働いて水を冷やし続けています。

この記事では、温浴施設で働く現場スタッフの視点から、水風呂はどうやって冷やしているのかを解説します。冷却の主役である「チラー」の仕組み、施設によって違う水温設定の話、そして意外と知られていない「チラーが故障すると水風呂はどうなるのか」まで、裏側をのぞいていきましょう。

水風呂は放っておくと冷たくならない

まず前提として、水風呂の水は放っておいても冷たいままではいられません。水道からそのまま張った水は、季節にもよりますが、だいたい15〜25度程度。夏場なら25度を超えることも珍しくなく、「ぬるい水風呂」になってしまいます。サウナーが好む「キンキンの水風呂」は、水道水を張っただけでは実現できないのです。

さらに、水風呂には次々と人が入ります。サウナで温まった体が入るたびに、水風呂の水温はじわじわ上がっていきます。何もしなければ、時間とともにぬるくなる一方です。この「上がっていく水温」を設定温度まで冷やし続けるために、冷却装置が必要になります。ちなみに、お湯を温めるボイラーとはちょうど逆の役割で、その加温側の仕組みは温泉のお湯はどうやって温めている?で解説しています。

水風呂を冷やす主役「チラー」とは

水風呂の冷却で主役となるのが「チラー」と呼ばれる冷却装置です。チラー(chiller)とは、その名のとおり液体を冷やすための機械で、工場や業務用の冷却など幅広い分野で使われています。温浴施設では、水風呂の水を設定した温度まで冷やし、その温度を維持する役割を担っています。

チラーの基本的な仕組み

チラーが水を冷やす原理は、エアコンや冷蔵庫と基本的には同じです。冷媒(れいばい)という熱を運ぶ物質を循環させ、水から熱を奪って外へ捨てる、という流れで冷却します。ざっくり言えば、水の持っている熱を冷媒に移し、その熱を機械の外に放出することで、水の温度を下げているのです。熱を移し替えるという点では、熱交換器と共通する考え方が使われています。熱の受け渡しの仕組みに興味がある方は、温泉施設の熱交換器とは?もあわせて読むと理解が深まります。

冷水を「循環」させて冷やし続ける

チラーは、水風呂の水をただ一度冷やして終わりではありません。水風呂とチラーの間で水を循環させ、冷やした水を水風呂に戻し、ぬるくなった水を再びチラーに引き込む——この循環を繰り返すことで、常に設定温度を保っています。ポンプで水を送り、配管を通してチラーと水風呂をぐるぐると回しているわけです。

人がたくさん入って水温が上がっても、チラーが循環しながら冷やし続けることで、設定した冷たさに引き戻してくれます。この「冷水循環」の仕組みがあるからこそ、混雑した時間帯でも水風呂は冷たさを保てるのです。水がきれいに循環し、ろ過消毒される仕組みは通常の浴槽と共通で、水風呂も衛生管理の対象であることに変わりはありません。

チラーは「熱を外に捨てている」

意外と知られていないのが、チラーは水から奪った熱を、機械の外へ捨てているという点です。そのため、チラーの本体は施設の機械室や屋外など、熱を放出できる場所に設置されています。水風呂を冷やすということは、その分の熱をどこかへ移動させているということで、チラーの周辺はむしろ温かい風が出ていることも多いのです。「冷やす」という働きの裏で「熱を移す」動作が起きている——これはエアコンの室外機が温風を出すのと同じ理屈です。

また、チラーは水を冷やし続けるためにそれなりの電力を消費します。とくに夏場は元の水道水が温かく、設定温度まで下げるのに大きなエネルギーが必要になるため、稼働率も電気代も上がります。冷たい水風呂は、こうした運転コストの上に成り立っている設備でもあるのです。

施設によって違う「水風呂の温度設定」

水風呂に入って「ここは冷たい!」「ここはぬるめだな」と感じた経験はないでしょうか。実は、水風呂の温度設定は施設によってさまざまで、これが施設の個性にもなっています。

一般的な水風呂の温度帯

水風呂の温度は、おおむね15〜20度前後に設定されている施設が多いとされます。この中でも、17度前後を標準とする施設が比較的多い印象です。一方で、10度台前半の「シングル」と呼ばれる強烈に冷たい水風呂を売りにする施設もあれば、20度前後のマイルドな水風呂で、冷たさが苦手な人にも入りやすくしている施設もあります。

どの温度が正解ということはなく、施設のコンセプトや客層によって設定は変わります。ととのいを追求するサウナ専門施設ではキリッと冷ため、家族連れが多いスーパー銭湯ではやや高めのマイルドな設定、というように、狙いに応じて温度が決められています。サウナと水風呂を組み合わせた入り方の基本は、サウナの正しい入り方も参考にしてみてください。

温度は季節でも調整される

水風呂の温度は、年間を通してまったく同じというわけではなく、季節に応じて調整されることもあります。元となる水道水の温度が夏と冬で大きく違うため、同じ設定温度を保つのにチラーにかかる負荷も変わってきます。夏場は水道水が温かいぶんチラーがフル稼働し、冬場は比較的楽に冷やせる、といった違いがあるのです。

【重要】チラーが故障すると水風呂はどうなる?

ここが、現場ならではの話です。水風呂の冷たさはチラーが支えているということは、裏を返せば、チラーが故障すると水風呂を冷やせなくなるということです。

水温が水道水と同じになってしまう

チラーが止まってしまうと、水を冷やす力が働かなくなります。そうなると、水風呂の水温は補給される水道水の温度に近づいていきます。つまり、夏場であれば25度前後のぬるい水風呂に、冬場であればそれなりに冷たいものの本来の設定より高い水温になってしまうわけです。とくに夏は、「水風呂がぬるい」という状態が起こりやすくなります。

サウナで温まった体を冷やしたいのに、水風呂がぬるいと、あの「ととのう」感覚は得られにくくなります。サウナーにとっては残念な状態です。チラーの故障は、水風呂の魅力を根本から損なってしまうトラブルなのです。

故障時の現場の対応

チラーが故障したときにまずやるべきは、原因の切り分けと修理の手配です。ただ、正直に言えば、修理が終わるまで水風呂を本来の冷たさに保つ有効な手立てはほとんどありません。「氷を入れて冷やせばいい」と思われるかもしれませんが、水風呂全体を冷やせるほどの氷となると膨大な量が必要になり、現実的ではありません。氷を大量に投入すること自体、衛生面でも望ましくありません。

「冷たい水道水を足し続ける」という方法も、理屈のうえでは考えられますが、そもそも設定温度まで下げられるほど冷たい水道水が安定して確保できるなら、チラーは不要ということになってしまいます。とくに水道水が温かくなる夏場は、足し水では焼け石に水です。つまり、チラーの故障時は「ぬるくなるのを完全には防げない」というのが実情で、だからこそ日頃の点検で故障を未然に防ぐこと、そして万一のときは速やかに修理することが何より重要になります。

お客様から見て「今日は水風呂がぬるいな」と感じる日は、もしかするとチラーの不調が背景にあるのかもしれません。施設側も、水風呂の冷たさは大きな魅力と分かっているからこそ、チラーの故障には神経を使っています。日頃から点検を行い、異音や冷えの悪さといった不調のサインを見逃さないようにしているのです。

水風呂を気持ちよく楽しむために

最後に、水風呂を安全に楽しむための注意点にも触れておきます。冷たい水風呂は爽快ですが、サウナで温まった直後に急に冷たい水に入ると、体には大きな温度差の負担がかかります。とくに心臓や血圧に不安のある方は、いきなり肩まで浸からず、かけ水で体を慣らしてから入る、無理に冷たいシングルに挑戦しないといった配慮が大切です。

温冷の差による体への反応には個人差があり、めまいや動悸など気になる症状を感じたら、無理をせずすぐに水風呂から出て休んでください。体調に不安がある場合は、無理をせず、必要に応じて医療機関など専門家に相談することをおすすめします。サウナと水風呂の温度差による体調変化については、温泉でのぼせるとは?もあわせて読んでおくと安心です。ロウリュでしっかり温まったあとの水風呂は格別ですが、その分だけ体への負担も大きいことを忘れずに。ロウリュについてはサウナのロウリュとは?で解説しています。

まとめ|水風呂の冷たさはチラーが支えている

水風呂の冷たさは、自然に保たれているのではなく、チラーという冷却装置が冷水を循環させながら、休みなく冷やし続けることで実現しています。水温設定は施設によって15〜20度前後とさまざまで、シングルの強冷からマイルドな設定まで、施設のコンセプトが表れる部分でもあります。

そして、その冷たさを支えるチラーが故障すると、水風呂の水温は水道水と同じくらいまで上がってしまい、とくに夏場は「ぬるい水風呂」になってしまいます。普段は目立たない設備ですが、水風呂の快感は、この冷却の仕組みがあってこそ。次にキリッと冷たい水風呂に入るときは、その裏で静かに働くチラーの存在を思い出してみてください。

参考文献

ひねこじた 温泉

温浴施設で働く現役スタッフ。ガイドブックに載らない温泉の裏側を施設スタッフ目線で発信しています。

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