夏になると増える質問があります。
「プールで遊んだ後に温泉に入っても大丈夫ですか?」
特にファミリー層のお客様から多いです。子どもたちがプールで思いっきり遊んだ後、大人は温泉でゆっくりしたい——その気持ちはよくわかります。
結論から言うと、大丈夫です。むしろプールの後に温泉に入ることには、いくつかのメリットがあります。ただし、知っておくべき注意点もあります。
プールの後に温泉に入るメリット
塩素を洗い流せる
プールの水には、衛生管理のために塩素(次亜塩素酸ナトリウム)が投入されています。プールの塩素濃度は温泉施設の浴槽水(0.2〜0.4mg/L程度)よりも高く、0.4〜1.0mg/L程度に管理されています。
この塩素がプール後の肌のつっぱり感、髪のきしみ、目の充血の原因です。プールから上がった後に温泉に入ることで、体に残った塩素をしっかり洗い流すことができます。
特にアルカリ性の温泉は、塩素で刺激を受けた肌を穏やかに整える効果が期待できます。
冷えた体を温められる
プールの水温は一般的に28〜30℃程度で、体温よりもかなり低い温度です。長時間プールに入っていると、夏場であっても体の芯が冷えていることがあります。
温泉(40℃前後)に浸かることで、冷えた体をしっかり温め直すことができます。血行が促進され、プールで冷えた手足の末端まで温かさが行き渡ります。
塩化物泉は保温効果が高い泉質なので、プール後の冷えた体を温めるのには特に向いています。
筋肉の疲労回復
プールでの水泳や水遊びは、想像以上に体力を使います。水の抵抗を受けながら動くため、普段使わない筋肉も動員されます。
温泉の温熱効果は、疲労した筋肉の血流を改善し、乳酸などの疲労物質の排出を促進します。浮力によって関節や筋肉への負荷も軽減されるため、プールで酷使した体のリカバリーに最適です。
温泉の一般的適応症には「筋肉痛」「疲労回復」が含まれており、プール後の温泉入浴は理にかなった組み合わせです。
肌のケア
プールの塩素は肌の油分を落とし、バリア機能を低下させます。プール後に肌がカサカサしたり、かゆみを感じたりするのはこのためです。敏感肌の方は特に要注意です。
温泉に入ることで、泉質によっては肌の保湿や保護に効果が期待できます。塩化物泉は塩分の膜が肌を覆って保湿効果を発揮し、単純温泉のうちアルカリ性のものは肌をなめらかに整えます。
リラックス効果
プールでの活発な運動の後に温泉でリラックスする——この切り替えが、自律神経のバランスを整えるのに効果的です。プールで交感神経が活性化した後、温泉の温熱効果とリラクゼーション効果で副交感神経に切り替わり、心身ともにリフレッシュできます。
プールの後に温泉に入る際の注意点
メリットが多い一方で、いくつかの注意点もあります。
必ず体を洗ってから温泉に入る
これが最も重要なポイントです。
プールから上がったまま温泉の浴槽に直行するのはNGです。プールの水には塩素だけでなく、日焼け止め、汗、垢、皮脂、そして塩素と有機物が反応して生成されるクロラミン(塩素臭の原因物質)なども含まれています。
これらを温泉の浴槽に持ち込むと、ろ過装置に負担がかかることがあります。プールから温泉に移動する前に、石鹸やボディソープでしっかり体を洗い、日焼け止めも落としてから入浴してください。
水分補給を忘れない
プールで遊んだ後は、すでに体の水分が失われている状態です。水中にいるため汗をかいている実感が薄いのですが、実際にはプール中も発汗しています。
その状態でさらに温泉に入ると、追加で水分が失われます。プールと温泉の間に、必ずコップ1〜2杯の水を飲んでください。のぼせや脱水の予防になります。
日焼け後の入浴は慎重に
夏のプールでは、日焼けをしていることが多いです。日焼けした肌は軽いやけどの状態であり、温泉の熱で痛みが強くなることがあります。
特に酸性泉や硫黄泉は刺激が強いため、日焼け後の入浴は避けるか、単純温泉など刺激の穏やかな泉質を選んでください。日焼けがひどい場合(水ぶくれができている、赤みが強いなど)は、温泉の入浴自体を控えた方が安全です。
子どもの体力に注意
プールで全力で遊んだ子どもは、本人が気づかないうちにかなり疲労しています。その状態で温泉に長時間入ると、のぼせやすくなります。
子どもの温泉入浴は短時間(5分程度)にとどめ、顔が赤くなったりぐずったりしたらすぐにお湯から出してください。
入浴時間は短めに
大人でも、プールで体を動かした後は普段より疲れています。いつもより入浴時間を短めにするのが安全です。10分程度を目安に、体調を見ながら入浴しましょう。
プール→サウナ→水風呂→温泉というフルコースを楽しみたい気持ちはわかりますが、体への負担が大きくなるため、プール後はサウナを控えめにするか、温泉だけにしておく方が無難です。
水着のまま温泉に入らない
プールエリアと温泉エリアが分かれている施設では、水着のまま温泉に入ることはできません。水着はプールの塩素水を吸っていますし、水着の繊維がろ過装置に詰まる原因にもなります。
必ず水着を脱ぎ、体を洗ってから温泉エリアに移動してください。
プールと温泉で泉質を使い分ける
プール後の温泉は、泉質によって得られる効果が変わります。
肌のケアを重視するなら
塩化物泉がおすすめです。塩分の膜が肌を覆い、プールの塩素で落ちた油分を補うような保湿効果があります。保温効果も高いので、プールで冷えた体を芯まで温めてくれます。
単純温泉(アルカリ性)は刺激が少なく、肌をなめらかに整えます。日焼け後でも比較的安心して入れる泉質です。
疲労回復を重視するなら
炭酸泉(二酸化炭素泉)は、炭酸ガスが皮膚から吸収されて血管を拡張し、血行を促進します。プールで疲れた筋肉の回復に効果的です。ぬるめの温度でも体がしっかり温まるため、のぼせにくいのもプール後には嬉しいポイントです。
避けた方がいい泉質
酸性泉は、プールの塩素で刺激を受けた肌にさらに強い刺激を加えることになるため、プール後には向きません。硫黄泉も刺激が強いため、日焼け後は特に避けた方が安全です。
プール併設の温浴施設ならではの事情
夏場は浴槽水の汚れが増える
正直に言うと、夏場のプール営業日は浴槽水の汚れが増えます。プールで遊んだ後に体を十分に洗わずに温泉に入る方がどうしても一定数いるためです。
日焼け止めは特に厄介です。油性の日焼け止めは水で流しただけでは落ちにくく、浴槽水の表面に油膜を作ったり、ろ過装置のフィルターに詰まったりする恐れがあります。
施設側は、夏場は塩素の投入量を増やし、逆洗の頻度を上げ、浴槽水のORPをこまめに確認して対応しています。
「体を洗ってから」の周知が大切
プールエリアから温泉エリアへの動線上に、「プールから上がったら必ず体を洗ってから温泉にお入りください」という掲示がよくあります。シャワーブースを動線上に配置して、自然と体を流してから温泉に向かえる設計にしている施設もあります。
プール後の温泉は施設の強み
プールで思いっきり遊んだ後に、温泉でゆっくりリフレッシュできる——これはプール併設の温浴施設ならではの魅力です。「プールだけ」「温泉だけ」では得られない満足感があり、特にファミリー層にとっては「子どもはプール、大人は温泉」という使い分けができるのが大きなポイントです。
よくある質問
プールの塩素で温泉の成分が変わる?
体に付着したプールの塩素が温泉の浴槽に持ち込まれたとしても、浴槽全体の成分に影響を与えるほどの量ではありません。ただし、マナーとして体を洗ってから入るのが基本です。
プールで耳に水が入ったまま温泉に入って大丈夫?
耳に水が入った状態で温泉に入っても、特に問題はありません。温泉の温かさで耳の中の水分が蒸発しやすくなるため、むしろ楽になるという声もあります。ただし、耳の痛みがある場合は中耳炎の可能性があるため、入浴は控えてください。
プール後にサウナに入ってもいい?
入れますが、注意が必要です。プールで体力を消耗した後のサウナはのぼせのリスクが高くなります。いつもより短い時間にとどめ、水分補給を十分に行ってください。体調に自信がない場合は、プール後のサウナは控えましょう。
逆に、温泉の後にプールに入っても大丈夫?
温泉で体が温まった状態でプール(28〜30℃)に入ると、温度差で体がびっくりする可能性があります。急な温度変化は血圧の変動を招くため、温泉の後はしばらく体を冷ましてからプールに入る方が安全です。
順番としては、プール→温泉の方が体への負担が少なくおすすめです。
まとめ
プールの後に温泉に入ることは、まったく問題ありません。むしろ、塩素の洗い流し、冷えた体の加温、筋肉の疲労回復、肌のケア、リラックス効果と、メリットが多い組み合わせです。
注意すべきは、必ず体を洗ってから温泉に入ること(日焼け止めも落とす)、水分補給を忘れないこと、日焼けがひどい場合は刺激の強い泉質を避けること、入浴時間はいつもより短めにすることです。
泉質で選ぶなら、肌のケアには塩化物泉、刺激の少なさなら単純温泉、疲労回復なら炭酸泉がおすすめです。酸性泉や硫黄泉は日焼け後には避けてください。
プールで遊んで、温泉で癒される。夏ならではの最高の過ごし方を、ぜひ楽しんでください。
【参考文献】
プールの塩素濃度・水質基準:
- 厚生労働省「遊泳用プールの衛生基準について」(令和5年改正) https://www.mhlw.go.jp/ ※プールの遊離残留塩素濃度の管理基準(0.4〜1.0mg/L)、水質検査項目
塩素による肌・髪への影響:
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」 https://www.dermatol.or.jp/ ※塩素による皮膚バリア機能の低下、肌のつっぱり・乾燥のメカニズム、日焼け後の皮膚が刺激に敏感になる理由
日焼けと入浴:
- 日本皮膚科学会「日焼け(日光皮膚炎)」 https://www.dermatol.or.jp/ ※日焼けは軽度の熱傷であること、日焼け後の入浴(特に高温・刺激の強い泉質)が症状を悪化させるリスク
プール後の脱水・水分補給:
- 厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html ※水中でも発汗していること、運動後の水分補給の重要性
- 日本体育協会(現・日本スポーツ協会)「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」 https://www.japan-sports.or.jp/ ※水泳中の発汗量と脱水リスク(水中にいるため自覚しにくい)
温泉の効能(筋肉痛・疲労回復):
- 環境省「鉱泉分析法指針(改訂)」 ※一般的適応症(筋肉痛、関節痛、疲労回復、健康増進など)の根拠
- 一般社団法人 日本温泉気候物理医学会「温泉療法のイ・ロ・ハ」 https://www.onki.jp/ ※温泉の温熱効果による血行促進、筋疲労回復のメカニズム
泉質別の効果:
- 環境省「鉱泉分析法指針(改訂)」 ※塩化物泉の保温・保湿効果、単純温泉の低刺激性、炭酸泉の血管拡張作用、酸性泉・硫黄泉の皮膚刺激
日焼け止めのろ過装置への影響:
- 厚生労働省「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」 https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000712875.pdf ※浴槽水への油脂類(日焼け止めを含む)の持ち込みがろ過装置に与える負荷、入浴前の洗体の重要性
のぼせ・ヒートショック:
- 消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」 https://www.caa.go.jp/ ※入浴時の血圧変動、脱水状態での入浴リスク、子どものぼせのリスク







